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トランプ関税に耐えられる企業と耐えられない企業。輸出企業はどのような対抗策に出ているのか

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今回は、トランプ関税の影響についてご紹介します。

 

いわゆるトランプ関税をめぐって、中国と米国の間で冷戦が始まっています。すでに米国は中国からの輸入品に平均145%の関税をかけています。現在はまだ以前に輸入した在庫がありますが、今後、米国内での販売価格が上昇していくのは避けられません。

どのようなものが中国から米国に輸出をされているかは、後ほどご紹介していきますが、簡単に言えば「ホームセンターで売っているものほとんどすべて」と考えておけば間違いありません。

その中でも注目されているのがiPhoneです。iPhone 16は米国で799ドル(約11.2万円)で販売されていますが、145%の関税がそのままかかるとすると、単純計算で1957ドル(約28.0万円)になってしまいます。とても現実的な価格ではありません。電子機器については、トランプ政権は145%とは別の枠組みを設定するとしていますが、その関税率がどうなるかは誰にもわかりません。いずれにしても大幅値上げになる可能性があります。

 

常識で考えると、アップルは米国だけの価格をあげるのではなく、世界中の販売価格に分散しようとするでしょう。アップルの2023年の米国の売上は全体の42.4%ですので、ここから単純計算すると、世界中のアップル製品が60%ほど値上がりする計算です。

もちろん、そんな単純な転嫁をしたら、多くの人が買わなくなり、同時に大きな不満を持つことになるでしょう。そこで、アップルはインドやブラジルでの生産量を増やし、これを米国向けに出荷し、関税がかからないようにする必要があります。

しかし、生産拠点を移すというのは簡単なことではありません。「vol.245:アップルの生産拠点は中国からインドへ。そして再び中国へ。アップルが描くアジアサプライチェーンの布陣」(https://tamakino.hatenablog.com/entry/2024/09/08/080000)では、アップルが2011年という早い時期から脱中国化を初め、2017年にはインドに生産拠点を置いたことをご紹介しています。そして、2023年にはインドから中国や欧州に輸出できるほどまでになりましたが、返品問題などがありうまくいかず、2024年には再び中国に生産拠点を戻すという事態になりました。

生産拠点を移すというのは簡単なことではないのです。

 

2017年に広州市で開催されたフォーチュン・グローバル・フォーラムに登壇したアップルのティム・クックCEOは、中国で生産を行う理由を説明しました。


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▲雑誌フォーチュンが主催したフォーラムで、ティム・クックCEOは、なぜ中国でデバイスを製造するのか、その理由を説明した。

 

この中で、多くの人は中国の人件費が安いと誤解しているが、2017年当時で中国は人件費の安い国ではなくなっていると、クックCEOは発言しました。では、なぜアップルが中国で生産をするのかというと、クックCEOは「スキルの質と量」「教育制度」の2つをあげています。「スキルの質と量」のことは、クックCEOは後に「スキル密度」(Skill Density)という言葉を使うようになっています。

アップルは最先端の工作機械を使ってデバイスを製造しています。まず、このような工作機械を扱える熟練工が中国ではそろいます。非常に勤勉で、自分の報酬を増やすためによく学ぶからです。また、このような工作機械を管理できるエンジニアが豊富です。クックCEOは「アメリカで工作機械エンジニアのイベントを開いても人が集まらないけど、中国ではサッカー場が満員になるほど集まる」と語っています。

クックCEOは、これは教育制度によるものだと発言しています。米国では、製造業関連の職業教育を軽視してきたため、現在では先端工作機械を管理できるエンジニアが不足をしています。これは失敗だったと気がついて、再びメイカーに注目をし、職業訓練を充実させる方向に進んでいますが、一方で、中国は一貫して職業教育を充実させ続けてきました。

また、サプライチェーンの密度も大きな理由です。深圳では、半径100km以内にすべてのサプライヤーが固まって存在しています。部品の納入にとって大きなアドバンテージになるだけでなく、製造プロセスでトラブルが発生した時は電話やビデオ会議で話し合うのではなく、顔を突き合わせて、問題の部品を見ながら解決策を話し合い、試していくことができます。サプライヤーが狭い範囲に集中しているというのは製造業にとって非常に重要なのです。

 

つまり、熟練工が育成しやすい、工作機械エンジニアが豊富にいる、サプライヤーが集積されているというのが中国の有利な点で、これはなかなか他国では再現できません。インドでiPhone生産の量がなかなか増えてこないのも、この3つの条件がそろわないからです。もちろん、米国に生産拠点を移しても同じことになります。

アップルは2011年から中国依存を減らすために、海外に生産拠点をつくる挑戦をしてきました。しかし、そのほとんどはうまくいかず、ようやくインドで、インド国内販売分の生産ができるようになった状況です。インドでも7年かかっています。つまり、米国や他の国に生産拠点を移すにしても、最低でも5年はかかりそうです。

 

アップルが価格帯系をどうするのかはわかりません。これまでは関税分はその国の販売価格に転嫁をしてきました。

iPhone 14が発売された時に、各国の現地通貨価格を発売日の為替相場でドル換算して、米国価格と比較した表。インドとブラジルが割高な価格設定になっている。

 

この表は、iPhone 14の米国価格を1として、各国の現地通貨の販売価格を発売日の為替相場でドルに換算、比較したものです。数字が大きいほど、米国価格より割高で販売されているということになります。

注目していただきたいのはブラジルとインドです。非常に割高の価格設定になっています。これはブラジルとインドが、輸入の電子機器に20%以上の関税をかけ、さらに国内の付加価値税などもあるためです。ブラジルでは、関税により1.8倍もの割高になっていました。

面白いのはインドで、iPhone 14は1.26倍にすぎませんが、Proシリーズは1.6倍にもなっています。これはiPhone 14はインド国内での生産が始まっていて、インド国内から供給できるため関税がかからないのに対して、Proシリーズは国内生産ができていなく、輸入することにより関税がかかるためです。

インドとブラジルは、電子機器の関税を高く設定することで、アップルなどのメーカーがインドやブラジルに生産拠点をつくることを促しているのです。

アップルは2011年にブラジルに、2017年にはインドに生産拠点をつくりました。

▲2021年と2023年のアップルのサプライヤー構成。中国依存は減らしているものの大きくは進んでいない。アップル有価証券報告書より作成。

 

このようにアップルは、関税に関してはその国の販売価格に転嫁をするということをしてきましたが、145%の関税を米国価格にそのまま転嫁することはあまりにも非現実的です。

もし、そんなことをしたら、多くの米国人はカナダやメキシコに出国をしてiPhoneを買うようになるでしょうし、個人輸入を装って発送する越境ECも出てくるでしょう。さらには、こっそり米国に持ち込もうとする密輸入事件も頻発することになりそうです。個人が海外で購入した製品に関税をかけるかどうかは、その国の方針次第ですが、自分で使用するための持ち込みには免税にするのが一般的です。

iPhone以外の製品も、ホームセンターで売っているような商品の多くが中国製であるため、価格が大幅にあがることになりそうです。同様に海外での購入、越境EC、密輸が横行することになり、米国の小売業の空洞化が起こりかねません。流通や治安にまでも影響しそうです。

余談ですが、ニューヨークのトランプタワーにあるスーベニアショップでは、さまざまなトランプグッズを販売していますが、そのほとんどが中国製です。トランプショップは大幅値上げをするか、急いで米国内で製造してくれる業者を見つけなければなりません。

 

ご存知のとおり、関税戦争は中国の方が強いと言われています。

中国の貿易相手国の金額シェアは次のようになっています。

▲中国の2023年の貿易相手国の金額シェア。米国は11.2%でしかない。国家統計局のデータより作成

 

アジアが49.5%と圧倒的で、米国は11.2%にすぎません。これが一瞬でなくなったとすると、中国経済にとっては打撃であることは間違いありませんが、中国経済が崩壊してしまうほどのインパクトにはなりません。

特に注目していただきたいのが欧州で、2010年代後半から伸び続け、20.4%にも達しています。さらに南米との関係を強化し、アフリカとの貿易も今後伸び続けるでしょうから、中国経済はじゅうぶん耐えられそうです。

むしろ、「アメリカ外し」をした自由貿易ネットワークを構築する、いいチャンスだと考えられるほどです。

 

ただし、中国経済全体は耐えられとしても、細かく見ると、非常に厳しくなる企業もあります。それは主に3つのタイプの企業です。

1)EMS企業

アップルデバイスを製造しているフォクスコンや、ブランド品を製造している委託製造企業。関税分の値上げにより、販売数が大きく落ち込み、注文量が大きく減ることになります。委託元のブランドから納入価格の値下げも迫られることになります。また、生産拠点を中国以外の国に移す傾向が進むため、中国内の仕事がなくなっていきます。

2)Temu、SHEINなどの低価格越境EC

3)日用品を製造し、輸出をしている企業。義烏などの卸売市場の企業。

このような企業は米国向け輸出をしているところが多く、関税分の値上げにより、販売量が大きく下がることになります。

 

このような輸出に頼っている企業は、何も手を打たなければ壊滅的な打撃を受けることになります。もちろん、手をこまねいているわけではありません。各社ともさまざまな動きをしています。特に委託製造企業の中には、製造委託を受けているブランドと対決をするような過激な手段に出ているところもあります。

今回は、中国の輸出入の状況がどうなっているのかを整理して、トランプ関税が中国に与える影響がどの程度のものであるのかを測る材料を示します。そして、中国の輸出企業がどのような対抗手段に出ているのかをご紹介します。

今回は、トランプ関税で中国で起きていることをご紹介します。

 

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  • MimiConz

 




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