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9.9元戦争が終わるのか。ラッキンコーヒーが値上げとクーポンの縮小

ラッキンとクーディーの2つのカフェチェーンは、9.9元(約200円)での競争をしながら成長をしてきた。しかし、ラッキンがじわじわと低価格の縮小から値上げに踏み切るようになっている。カフェ戦争の様相が大きく変わるかもしれないと中国新聞週刊が報じた。

 

9.9元の値下げ競争が続くカフェチェーン戦争

スターバックス、瑞幸珈琲(Luckin Coffee)、庫迪珈琲(クーディー、COTTI COFFEE)の三つ巴の競争に変化が起き始めている。火をつけたのはスターバックスだった。それまで中国のカフェ業界をリードしてきたスターバックスは、追い上げが激しいラッキンを突き放すため、2022年9月に2025ビジョンを発表。2025年までに300都市9000店舗にするという内容だ。つまり、大都市だけでなく、地方都市にも進出をしていくというもの。

対抗するラッキンはフランチャイズ戦略で急速に店舗数を増やし対抗。そこに新参のクーディーが登場し、8.8元という大幅割引でラッキンの顧客を奪おうとする。スターバックスも割引クーポンによる実質的な値下げをするが、これが仇となり、客数を減らしてしまった。長居をする人が増え、席が使えず公園などで飲むのであれば、クーポン適用後でもまだ価格が高いスターバックスよりも、そもそも安いラッキンやクーディーを利用する人が増えたからだ。

ラッキンが2万店舗を達成し、スターバックスに対して店舗数でも売上でも上回り、中国No.1カフェチェーンとなると、クーディーは「3年で5万店舗」計画を打ち出し、9.9元コーヒーの割引を2026年いっぱい続けると宣言。

カフェチェーンの競争は、ラッキンとクーディーがいつまで9.9元のコーヒーを出し続けることができるかというチキンレースになっていた。

▲モバイルオーダーが原則のラッキンコーヒーは店舗数、売上ともに中国No.1のカフェチェーンとなった。9.9元戦争からの脱却を始めている。

 

ラッキンが低価格競争から脱出

そのラッキンがこっそりと値上げをし、この低価格競争から脱しようとしている。

まず、割引前の定価がいつの間にか改定になっている。人気のココナッツラテは、定価は29元だが、その価格で飲む人はほとんどいない。なぜなら、注文用のミニプログラムで9.9元のクーポンを購入すれば、ほとんどのドリンクがそのクーポンで引き換えられるからだ。

ところが、この29元の定価がいつの間にかこっそりと32元に値上がりをしていた。定価を気にする人はほぼいないために、気がついた人は多くなかった。

▲最新のラッキンのメニュー。よく見ると「+3元」という価格が見える。9.9元クーポンに3元を追加することで飲めるメニュー。以前は9.9元で飲めていた。

 

クーポンの適用範囲が狭まる

さらに、クーポンの適用範囲が変更になったことに多くの人が気がついた。これまで9.9元のクーポンで引き換えられるドリンクは、8種類ほどあったが、それがいつの間にかアメリカン、ラテ、オーツラテの3種類に限定されていた。

人気のココナッツラテの欄には「9.9元+3元」と書かれている。つまり、合計12.9元に値上がりをしていたのだ。

ライブコマースでも「N選1」クーポンが9.9元で販売をされていた。回数券のようなもので、10回分をまとめて購入するとN種類のドリンクのうち好きなものを1杯あたり9.9元で飲めるというものだ。ところが、このクーポンも10回分が109元から125元で販売されるようになっている。

▲ラッキンコーヒーとスターバックスの店舗数の推移。2021年から店舗数、売上ともにラッキンの独創状態となった。極海品牌監測より引用。

 

コーヒー豆の高騰が値上げの原因なのか?

この背景にあるのはコーヒー豆の国際価格の上昇だ。2024年にブラジルの旱魃ベトナムの天候不順により供給不足が起こり、コーヒー豆の価格は過去最高レベルに急上昇をしている。多くの消費者が、他でもコーヒーの価格が上昇をしているため、ラッキンが多少の値上げをするのは仕方のないことだとあきらめている。

しかし、ラッキンのような大手カフェチェーンが値上げをするのは、原材料費の高騰とは本質的に無縁だ。なぜなら、この規模になると、産地の農園と直接契約を結び、その時の価格で合意をして購入している。つまり、原材料調達コストは契約時点で確定をしているのだ。それどころか、コーヒー豆価格が急騰をすれば、余剰分のコーヒー豆を市場で売却することで、平均調達コストを下げることすら可能だ。

もちろん、農場と契約を更新する時に価格改定を迫られることはあり得るが、その影響が出るのは次の収穫期の春以降だ。大手チェーンでは、コーヒー豆の高騰が値上げの原因になることはまずない。

▲コーヒー豆がかつてないほど高騰している。これにより多くのカフェが値上げを始めている。世界経済のネタ帳(https://ecodb.net/commodity/group_coffee.html)より引用。

 

ドミナント戦略が限界に達したラッキン

値上げの理由は、原材料の問題ではなく、ラッキンの内部にあると見られている。なぜなら、チェーン全体の総収入は増加をし続けているものの、直営店の単店売上が2024年になって減少をし始めているのだ。

その理由はドミナント戦略が限界に達しているからではないかと見られている。少し大きめのショッピングセンターにはラッキンが2店舗を出店していることも少なくない。大都市では、500m以内に別の店舗がある、接近をしている店舗の割合が79.87%に達している。ラッキンは「どこにいても500m以内にラッキンの店舗がある状態」を目標とし、消費者にアクセスしやすい環境づくりを目指してきたが、それがほぼ完成をした。それにより、店舗同士のカニバリズムが起こり、単店売上が減少をするようになっている。

▲ラッキンの都市規模別の、店舗距離のデータ。大都市では店舗距離が500m以内という店舗が全体の79.87%になる。店舗が密集しすぎて、単店売上が下がり始めている。極海品牌監測より引用。

 

ラッキンの低価格からの脱出で変わる競争の行方

このことはラッキンもわかっており、地方都市の開拓を進めている。しかし、地方都市ではカフェが増え続けているというものの、まだまだコーヒーを飲む習慣を持っている人は一部にすぎず、多くの人は価格に敏感だ。スターバックスも地方都市に進出をし、中心部の店舗は人気となり満席状態が続いている。しかし、その都市に2店舗目、3店舗目を出すことができない。ここで苦労をしている。

地方都市で人気になっているのは、やはり9.9元を打ち出しているラッキン、クーディーとKFCのK Coffeeだ。しかし、そこで9.9元の価格帯から脱するというラッキンの施策はある種の挑戦となる。

ラッキンの理想的な状態は、9.9元の低価格競争から抜け出し、10元台半ばに引き上げ、そこでの価格決定権を支配することだ。「他の9.9元コーヒーもいいけど、あと数元プラスするだけでラッキンのコーヒーが飲める」と消費者に感じさせることが必要になる。それができるかどうかが、ラッキンが次の成長ができるかどうかの分岐点になる。

 




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