スマホ各社がネットワークレス通信の機能を続々搭載している。圏外であっても、見通し距離3km程度であれば、メッセージ交換や通話ができるというものだ。スマホの新しいトレンドになるのではないかと期待されているとIT時報が報じた。
圏外でも通信できるネットワークレス通信
スマートフォンの新しい時代が始まった。華為(ファーウェイ)、小米(シャオミ)、OPPO、vivoなどの各社はネットワークレス通信機能の搭載を始めた。これは携帯電話ネットワーク、Wi-Fi、Bluetoothなどの既存のネットワークがない場所でも、文字、音声を送ることができ、さらには通話までできるというものだ。
見通し距離は1.5kmから3.0km程度と限られるが、いわゆる「電波がない場所」でも連絡を取り合うことができる。

IoT向けのLoRa技術を改良して通話にまで対応
このネットワークレス通信は、IoT向けに開発されたLoRa(Long Range)=低電力長距離通信技術を利用したもの。IoT機器との通信向けに米セムテック社が開発した無線周波数変調技術だ。送信できるデータ量が小さいために、IoT機器との通信にしか使えなかったが、これを各社独自のプロトコル、アルゴリズムを開発することにより、音声通話にまで対応できるようにした。
さらに、OPPOは、他のデバイスと一時的なLANを構成する機能まで搭載をしている。

電波がない場所は意外に多くある
「ネットワークレス通信などいらないのでは? 電波のないところなんて、今どきあまりないでしょ?」と感じる方もいるかもしれない。しかし、これは、私たちが長年の経験から電波のない場所を認識していて、そこではスマートフォンを使わない習慣がついてしまったためにそう感じるのだ。実は、電波のない場所というのはけっこうある。
ひとつは災害時だ。「スマートフォンは災害時に強い」と考えている人が多く、それは一面の真実だ。従来の有線電話は電話線の切断が起これば復旧には時間がかかるし、停電をすれば電話機そのものが利用できなくなる。しかし、スマホも災害時にはやはりトラブルが生じる。停電になれば基地局は運用できなくなり、予備バッテリーなどの用意はあるものの、それもなくなれば通信ができなくなる。基地局そのものが被害を受ければ復旧には時間がかかる。そのため、携帯電話キャリアは、災害が起きると、車両や飛行船、気球、ドローンを使った緊急用基地局を投入する。
しかし、そのような体制が整うのにも時間はかかる。ネットワークレス通信があれば、行方不明者と直接連絡をとることができるチャンスは広がり、災害救助スタッフが連絡を取り合いながら行動することができるようになる。
地下駐車場では圏外になるところがまだ多い
また、日常生活の中でも活用できるシーンがある。最も望まれているのは地下駐車場だ。地下商店街ではスマホが利用できるところが多いが、これは運営者が基地局や中継アンテナを設置しているからだ。地下駐車場ではコストの関係から基地局や中継アンテナが設置されていないことも多く、スマホが使えない。しかし、ネットワークレス通信があり、自動車側が対応をしていれば、スマホから車を呼び出し、自動運転で目の前まできてもらう召喚ができるようになる。
イベントなどの混雑時にも活躍
イベント時には多くの人が集まり、携帯電話ネットワークを利用するために混雑をして通信が滞ることがある。このような場合でも、ネットワークレス通信のLANを確立してしまえば、必要な人同士で連絡を取ることができる。運営スタッフの連絡や親子、友人同士でネットワークを確立し、位置情報を送り合えば、どこにいるのかも一目瞭然になる。
海外グループ旅行でも活躍
海外旅行でも役に立ってくれる。海外に行く時は現地のSIMカードを購入して使うが、特定のキャリアのネットワークを使うことになり、事情もよくわからないため安いからという理由でマイナーなキャリアのSIMカードを買ってしまい、圏外になってしまうということがよくある。また、プリペイドの通話時間、通信量を使い切ってしまい、通信ができなくなるということもよくある。このような場合でも、ネットワークレス通信ではあれば、キャリアに関係なく連絡ができることになる。
インフラ未整備の地域でも通話可能
さらに、ネットワークインフラが貧弱な地域での活用も期待されている。例えば、アフリカなどの農村では、携帯電話が使えるものの、村の中の高台など特別な場所にいかないと電波がつかめないという場所がまだまだたくさんある。このような場所であっても、近くにいる村人同士であれば連絡が取れるようになる。
また、このような場所で活動する支援、調査などをするスタッフも、チーム内での連絡が取れるようになっていく。
新しいスマホのトレンドになることも期待されている
このネットワークレス通信は、スマホの新しいトレンドになるかもしれないと期待されている。それは見通し3km以内にいない人にも、近隣にいるデバイスを中継点としてバケツリレー方式で転送していくことで、通信をすることが原理的には可能だからだ。極論すれば、携帯電話ネットワークがなくても通信ができる社会が実現できる。
現状では、いざという時に便利な機能にすぎないが、スマホの使い方を大きく変えていく技術になる可能性もある。