中国で、持ち家を売却して賃貸に住み替える動きが出ている。バブル崩壊により、住宅価格は今後も下落をしていくことが予想される。そのため多くの人が売却意向を持っているが、売れないため、賃貸に回す人も増え、住宅価格よりも賃貸価格の下落が先に進んでいるためだと呉暁波チャンネルが報じた。
家を買えない人は脱落者?2017年の論争
2017年に発表された文章「35歳で北京の賃貸に住んでいる人は、人生に失敗していますか?」(https://m.163.com/house/article/CPL20KRD000782A4.html)は大きな話題となった。当時は、不動産価格が上昇をするだけ上昇をしていて、普通の人が買える価格ではなくなってしまった。それでも価格があがると信じ、無理な住宅ローンを組み多くの人がマンションを買った。その中では、マンションを買えずに賃貸に住んでいる人は脱落者だと見なされる風潮があった。
この文章は、不動産企業「網易賃貸」が発表したもので、賃貸生活を勧めるものだったが、所有派と賃貸派が意見を言い合い、大きな話題となった。中国の伝統的概念では「家は所有するもの」「家を持って一人前」だったが、この頃から、あまりの価格の高さに人々の意識が変わり始めていたのだ。
35歳以上で賃貸に住む人は35%を超えた
貝殻研究院が2023年の全国40の重点都市を調査した結果によると、35歳以上で賃貸に住んでいる人は35%を超えた。また、北京では45%、上海では40%を超えた。2021年の同調査から各都市4%から6%増加をしている。
さらに賃貸居住者の55%が30歳以上になった。賃貸は一般に、学生や新社会人が利用するものと考えられ、20代が主力のはずだが、もはや20代は賃貸居住者全体の45%で非主流派だ。
また、寝室が3つある物件が27.2%になり、ワンルームの物件を上回った。つまり「ワンルーム賃貸」というイメージは主流ではなく、家族、複数世代同居世帯が賃貸に住んでいるのが主流の光景になっている。

住宅価格の下落が進み、早く売って賃貸に住みたい
この傾向が進んでいる背景には「持ち家を売って賃貸に住む」選択をしている人が増えていることがある。このような動きが生まれる理由は2つある。
ひとつはバブル崩壊で住宅価格が下がり始めたことだ。住宅価格は下がっても、住宅ローンは購入時の価格で組んでいるため、10年後の価格よりも大きな額を住宅ローンで返さなければならないことになる。住宅価格の下落は地方都市で激しく、大都市ではまだ小さい。しかし、大都市もいずれ大きく下がることが予想される。そこで、大きく下がらないうちに売却をしたいと考える人が増えてきている。
もうひとつの理由は、賃貸料が下がり始めていることだ。2023年の重点50都市の住宅賃貸料は0.3%下落し、2024年上半期には0.9%に下落幅が拡大をした。5%以上下落している地域もある。
つまり、持ち家に住んで住宅ローンを支払っていくより、賃貸に住んだ方がお得になってきているのだ。
所有者が不安になり賃貸に回る物件が増加している
簡単に言えば、住宅価格の下落よりも賃貸価格の下落の方が大きい。このため、住宅を保有している人は将来の大下落を今のうちに避けて、賃貸に逃げ始めている。
住宅を投資、投機のために購入した人は、賃貸に出すのが一般的だが、それを嫌う人も多い。賃貸に回せば家賃収入が得られるものの、部屋は汚れ、さまざまなトラブルも起きる。そのため、賃貸に回さず、ただ置いておき、価格があがるのを待っているだけの人も多かった。これが、誰も住んでいない無人マンション=鬼城を生み出していた。
しかし、住宅価格が下がり始め、このような所有者は物件を売りに出すが簡単には売れない。少しでも損失を抑えるために賃貸にも回し始めた。現在、一年定期の利回りは1.1%、5年定期は1.55%だ。しかし、全国平均の賃貸収益率は2.03%になっている。
投資のために塩漬けになっている物件がどのくらいあるかは不明だが、専門家の見積もりによると6000万戸から8000万戸程度ではないかと言われる。このうちのかなりの部分が一気に賃貸物件として放出されたため、賃貸価格の方が早く下がっているのではないかと見られる。
「居を定める」から「ライフステージに合わせて変えていく」考え方へ
それでも持ち家信仰は、資産や経済の問題というよりも「居を定める」ということから生まれている。家を買って一生そこに住むと決めたことで、社会人として認知されるという感覚だ。しかし、現在では、大都市では持ち家であっても住む場所は買い替えて変わっていく。むしろ、ライフステージに合わせて住む家、住む場所を変えていくのが合理的だと考えられるようになっている。「居を定める」という感覚は急速に失われている。賃貸が主流の社会に移ろうとしている。