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今回は、ECの返品問題についてご紹介します。
運転手の時間外労働時間に上限が定められる2024年問題により、物流が大きな問題に直面しています。その中で、日本のアマゾンがおかしくなり始めています。アマゾンは配送を各宅配便会社に委託をしていますが、「アマゾン配送サービスパートナー」の扱う荷物が増えています。このパートナーとは実質ギグワークであり、その配送の質が問題になり始めています。
特に問題になっているのが「勝手に置き配」です。対面配達を希望しても、さらには宅配ボックス配達を指定しても、玄関前に勝手に置いていってしまうという問題です。チャイムも鳴らさないために配達されたことに気がつかず、長時間置きっぱなしになってしまうこともあるようです。戸建て住宅などでは雨に濡れてしまうこともあります。
私の周辺でも困惑している方が多く、私自身も宅配ボックスがあるにも関わらず何度か勝手に置き配される経験をしました。SNSを検索すると、多くの人が同じ問題を訴えています。まだ、この件を報じているメディアはないようですが、そのうち問題化するのではないかと思います。
置き配で心配になるのは盗難です。問題なのは、盗難なのか、受取人が受け取っておきながら盗難されたと主張しているのか、証明のしようがないことです。配送人は置いたことを写真で記録をしますが、それでわかるのは置いたという事実だけで、配送人自身がそのまま持ち去ることもできますし、別の誰かが盗んでしまうこともありますし、受取人が受け取っておきながら受け取っていないと主張することもあり、そのいずれかであるかが、誰にも証明ができません。
このような曖昧な状況というのは、システムの脆弱性となり、モラルハザードを生むホットスポットになります。
アマゾンに苦情を言っても、サービスパートナーがギグワークであり管理体制が取れていないため改善がされません。おそらく、今のアマゾンであれば、トラブル化しそうであれば返金をすることで対応してしまっているのではないかと思います。
「サービスパートナーでなく、ヤマト運輸などの配送業者を指定できるようにしてくれ」という声は以前からあります。私もそう思いますが、こんな記事を見つけました。
「スマホをパクってるのは絶対にスキマバイトの連中だろ」…150億円の赤字に転落した「ヤマト運輸」で「iPhone窃盗」が頻発している「謎」
https://news.yahoo.co.jp/articles/fe19b8ba02fd068f8e7fefc0f5be3187bc2681cb
ヤマトの配送中に、スキマバイトで集められたスタッフが、荷物の中のiPhoneを盗んでいるという話です。にわかに信じがたい話で、実際にはごく一部であるとは思いますが、この記事には説得力があります。
どことなく、日本のインフラサービスが崩壊に向かっている嫌な感じがします。
そもそも日本の個人消費はまだコロナ禍が終わっていません。「令和5年度電子商取引に関する市場調査報告書」(経済産業省)を見ると、個人消費がかなり深刻な状況であることがわかります。
次のグラフは、2023年の世帯支出額を項目別にコロナ前の2019年と比較をしたものです。

非常にわかりやすく、コロナ前よりも増えているのはインドア商品ばかりで、アウトドア商品はまだまだ回復をしていません。旅行も海外は物価が高い、国内はインバウンド客で混雑をしているということから、行く頻度が減少したままになっているという方は多いのではないかと思います。
では、インドア商品が受けるのであれば、ECの利用は伸びているのではないか。実際、コロナ禍以降ECの利用頻度があがったという方は多いかと思います。ところが、同じ報告書の中のEC化率を見ると、日本は多少伸びていますが、低いままに止まっています。

私のイメージでは20%は突破しているのではないかと思っていましたが、13.7%に止まっています。日本は、国土が狭く密集をして暮らしている傾向があり、なおかつオフライン小売のレベルが高いですから、中国のように高いEC率になることは考えられません。しかし、状況も国民性も似ている韓国並みになってもおかしくないと思いっていました。しかし、実際は半分程度のEC化率なのです。
商品別のEC化率を見てみます。

おそらく、想像どおりではないかと思います。ソフト、家電、デジタルなどが高く、食品、化粧品などが低くなっています。
これは、あらかじめ購入したい商品が決まっているものはECで買われているということです。一方、いろいろ比較して見て選びたい化粧品や食品に関しては、圧倒的に店舗が好まれます。生活雑貨や衣類なども、ひょっとしたらMUJIやユニクロの商品が多くて、見なくても品質はわかっているという理由から使われているのかもしれません。つまり、日本人はオフライン小売ではShopping(ショッピング=品定めをして購入する)をしますが、ECではBuying(バイイング=購入のみ)しかしないのです。
もちろん、社会としてEC化率が高くなければならないということにはありません。それはそれぞれの社会のあり方ですから、EC化率が高い国もあれば、低い国があってもいいわけです。
しかし、ぜひ、みなさんに「では、なぜ中国のEC化率は高いのか」という問題を考えていただきたいのです。「中国は国土が広大で、近所にお店がないところがたくさんあるから」。確かにそうです。しかし、多くの人は日本よりも稠密な大都市に暮らしています。地下鉄の駅ごとにショッピングモールがあり、オフライン小売の質はともかく量だけでは日本に負けません。辺鄙な場所で暮らしている人の割合はそう大きいわけではありません。しかも、ECを頻繁に利用するのは大都市の人が中心です。
中国のEC化率が高い理由を生成AI「Perplexity」に尋ねてみました。
中国のEC利用率が高い主な理由は以下の通りです:
1)インターネット普及率の急速な上昇:2023年12月時点で、中国のインターネット利用者数は10億9200万人に達し、普及率は77.5%となっています。
2)スマートフォンとキャッシュレス決済の普及:スマートフォンの普及率が高く、ALIPAYなどの電子決済システムが広く浸透しています。
3)経済発展と消費需要の増加:中国の実質GDP成長率は高水準を維持しており、消費者の購買需要が高まっています。
4)ECプラットフォームの集中:アリババやタオバオなど、大手ECプラットフォームに小売業者やメーカーが集中しており、消費者が簡単に多様な商品を購入できます。
5)物流インフラの発達:人口密度の高さを活かした効率的な物流ネットワークが構築されています。
6)政府の支援:中国政府はEC市場の拡大を支援しており、海外ブランド商品の購入も容易になっています。
7)実店舗と比較した低コスト:ECでは実店舗運営にかかる様々なコストを抑えられるため、商品を安価で提供できます。
これらの要因が相互に作用し、中国のEC利用率を押し上げています。
他の生成AIでも似たような回答です。しかし、いずれも日本にもそれなりにあてはまる理由であり、中国のEC化率が高く、日本のEC化率が低いことの理由にはなっていないように思います。
なぜ中国のEC化率は高く、日本のEC化率は低いのか。その理由は先ほど触れたShoppingとBuyingの違いによるものです。日本のECはBuyingですが、日本以外のEC化率が高い国はECでもShoppingが行われます。例えば、服や靴などのサイズがある商品では、3サイズぐらいを注文するのは珍しいことではありません。試着してみて、合うものを手元に置き、残りを返品します。
日本でもアマゾンがtry before you buyというサービスを行っていますが、対象となる製品がどんどん減っています。そのため、日本では購入してみてサイズが合わないと交換を申し出ることになります。それから別サイズを送ってもらって、それでもサイズが合わないと、もうECで買うのが面倒になってしまうのではないでしょうか。「やっぱり店頭で買った方が面倒がなくて早い」ということになってしまいます。
返品率の統計というのは、販売業者やプラットフォームは公開したくない統計であるため、正確なことはわかりません。しかし、調査会社などがだいたいの数値を出しています。正確な統計とは言えませんが、まとめてみました。

返品率が高い国ほどEC化率は高い傾向があります。返品が気軽にできるとなると、BuyingではなくShoppingができるようになります。イメージと違ったものは返品すればいいからです。
中国では消費者権益保護法により「7日間無理由返品」が認められています。これはBuyingをShoppingに転換する大きな力となり、ECが広く使われるきっかけになりました。一方、日本でもECで購入した商品については特定商取引法により「法定返品権」が認められています。購入して8日間以内であれば、理由を問わず返品できる権利です。
ところが、特定商取引法の定めでは、販売店が特約を定めている場合は、それが法定返品権に優先することになっています。つまり、「当店では返品を受け付けておりません」と書いておくだけで、返品を受け付けなくていいのです。逆に、うっかり何も特約を書いておかないと、法定返品権が認められてしまうために、ECショップを開くときは特約を必ず記載するように注意しなければなりません。
現実には、まるまる法定返品権を認めているショップというのはほぼなく、この法定返品権は有名無実化してしまっています。ここが、Buyingのままに止まり、EC化率があがらない原因になっています。
特定商取引法の仕組みは、販売業者と消費者の取引条件を、販売業者側が一方的に定めることができるようになっているため、公平なものだとは言い難いところがあります。消費者保護というよりも、販売業者保護の色合いが濃いものになってしまっています。
しかし、返品条件を販売業者側が定めることができるという点は、逆に利用すれば、大きな武器になる可能性があります。例えば「ウチは30日間無条件で返品OKです!」とうたって、そのとおり対応するのであれば、まったく問題がないからです。つまり、返品条件を制御することで、消費者のShopping行動を引き出すことができ、EC売上を大きく増やせる可能性が出てきます。
といっても、無制限に返品を受けていたら、商品ロスが大量に発生してしまいます。そこで、中国のEC販売業者たちが、この返品制度をどのように練り上げてきたかをご紹介しようというのが今回のメルマガの趣旨です。
中国ですから、素直に利用する消費者ばかりでなく、制度の穴をついて得をしよう、小遣い稼ぎをしようという人がたくさん現れてきます。それを抑えながら、販売数が増えるように、さまざまなプラットフォームが頭を悩ませながら、制度を洗練させてきました。ECの売上を伸ばしたいという場合、中国の販売業者のやり方をそのまま模倣することは難しくても、ヒントにはなるのではないかと思います。
今回は、ECの返品制度についてご紹介します。
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