福建省泉州市サイバーセキュリティ部は、今年2024年8月21日、ライブコマースで不正行為を行う「ネット水軍」の拠点を家宅捜索し、容疑者10名を逮捕し、PC5台、スマートフォン1200台を押収したと公安部網安局が報じた。
大量の「いいね」を押してくれるクリックファーム
福建省泉州市サイバーセキュリティ部は翌日の8月22日には、泉州市豊沢区の別のネット水軍の拠点を家宅捜索し、2人を逮捕し、300台のスマホを押収した。
このようなネット水軍たちは、海外ではクリックファームと呼ばれ、ネット上での不正行為をビジネスにしている。
SNSのアカウントを大量につくり、つくっただけでは運営から削除されてしまうこともあるため、スクリプトで適当な内容を定期的に投稿し、アカウント維持しておく。この工程は「養号」(ヤンハオ)と呼ばれる。そして、依頼人から依頼があるとそれに応じてフォローをしたり、「いいね」を押したりする。現在の相場は「いいね」10個で2元、1000個で150元(約3100円)と下がってきており、人気があるかのように装いたいインフルエンサーが利用をする。
従来は、ラックにスマートフォンを並べ、スタッフが手作業で「いいね」を押したり、フォローをしたりしていたが、現在ではスクリプトによる自動化が進んでいる。この自動化により相場が下がり、安くなったことで、幅広いインフルエンサーが利用をするようになり、不正行為が広がっている。



ライブコマースの売上水増しをするクリックファーム
現在では、このようなクリックファームがライブコマースの売上の水増しに加担するようになっている。
8月に、消費者保護活動をしているブロガー王海氏が、SNS「微博」(ウェイボー)で、ある告発をした。それは太原老葛というインフルエンサーが4回ライブコマースを行い、合計900万元(約1800万円)の販売手数料を得たが、2811万個売れた商品のうち1911万個は偽の注文であり、実際には900万個程度しか売れていなかったという内容だった。つまり、太原老葛は自分のライブコマースに偽注文を大量に入れて、手数料を騙しとったのだという指摘をした。
インフルエンサーは、ライブコマースで契約をした商品を販売する。収入源は契約料と販売手数料だ。契約料は交渉次第だが、販売実績のあるインフルエンサーほど交渉次第で高くできる。また、商品が売れるごとに販売代金の一定割合の手数料もとる。つまり、インフルエンサーにとっては商品がたくさん売れれば売れるほど、手数料収入が多くなり、次回の契約料が高くできる。
この事件は、山東省龍口市公安がすでに立件をして捜査に入っている。その詳しい内容は発表されていないものの、太原老葛は知人が経営する会社に自分のライブコマースに大量の注文を入れさせ、その後、キャンセルや返品をさせていたとみられている。全体の2/3にあたる偽注文を入れさせて、その手数料を騙し取っていたと見られる。

一気に信用を失ったインフルエンサー
このような事件が明るみに出るにつれ、インフルエンサーにライブコマース販売を依頼する企業は激減をしている。他のインフルエンサーも、知人の会社などに大量に注文を入れさせキャンセルをするという不正行為をしていないとは断言できなくなってしまったからだ。
そのため、現在は、直営ライブコマースへの移行が進んでいる。ブランドが人気インフルエンサーに販売を委託するのではなく、ライブコマースチームをつくり、ブランド直営でライブコマースを行うというものだ。人気インフルエンサーのように「わずか1時間で何十万個を販売」というわけにはいかないが、消費者とのコミュニケーションを取ることもできることから、直営方式のライブコマースを始めるブランドが増加をしている。ライブコマースの世界は、大きな変革期を迎えることになった。