1997年に中国に進出したドミノピザは、ピザハットの陰に隠れて長年赤字経営が続いてきた。ところが、2023年後半から突如として業績が好転をし、2024年H1で黒字化を達成した。ドミノピザは新市場を発見したと紅餐網が報じた。
長年赤字だったドミノピザが突如として黒字転換
「達美楽」(ドミノピザ)は、中国には1997年に進出をしているが、長い間、地位を確立することはできなかった。世界では最も有名なピザチェーンのリーダーであるのに、中国人にとってはピザハットの方が有名で、ドミノピザの名前すら知らない人の方が多かった。
さらに、2020年から2022年は、2.74億元、4.71億元、2.23億元の赤字を出し、投資家の中には、2023年以降も3年は赤字が続くと予測した人も多かった(それ以前の業績は非公開であるため不明だが、赤字であったと思われる)。しかし、2023年後半から業績は好転し、赤字幅が縮小をし始めた。それどころか、2024年H1の業績が明らかになってみると、20.41億元の売上をあげ、前年比48.3%増という記録となり、営業利益は2.96億元、前年比59.0%増と黒字に転じることに成功した。
一体、ドミノピザはどうやってこの奇跡を起こしたのか。

大都市中心だったドミノが見つけた新市場
海外の飲食チェーンの多くがそうするように、ドミノピザも中国の大都市を中心に出店をしていた。1997年に進出をしてから10年ほどの間は、北京市にしかドミノピザはなかった。それから他の大都市に拡大を始めたが、国内10都市のみであり、2022年の段階になっても、北京と上海の店舗で半分以上を占めている状況だった。
ピザのような中国人になじみがなく、価格も相対的に高い飲食品は、購買力の高い大都市住人しか食べないだろうという思い込みがあったのだ。
ところが、2022年以降、ドミノピザは、北京と上海以外の都市を「新市場」と名づけ、新市場の拡大をする戦略を進めた。今年2024年6月末の段階では、新市場の店舗数は60.28%となり、業績も大きく上向いた。この新しい市場の発見がドミノピザ飛躍の鍵になった。


オープン初日から長い行列
昨年2023年末にオープンした江蘇省南通市の南通万象城店では、オープンする朝8時の段階ですでにショッピングモール前に2列に折り返す長い行列ができていた。陝西省西安市では、今年2024年1月2日に37万元の売上記録をつくった。これは単店売上としては中国だけでなく、グローバルでの新記録になった。
しかし、このような華々しいオープンはことさら驚くことではない。なぜなら、開店記念として大幅割引をするクーポンを配布し、南通万象城店では先着500名にピザを無料でサービスするキャンペーンも行った。行列ができても当然と言えば当然なのだ。


リピートをしてもらうための地道な工夫
問題はリピートがどれだけ取れるかだ。ドミノはここに注力をした。ドミノが取った戦略は差別化を行い、特色を出すことだった。
ドミノのライバルは、同じ米国の「ピザハット」と国内系の「楽凱撒」(La Cesar)「尊宝」(ズンバオ)だった。ピザハットはイタリアンレストランとして定着をし、セザールはドリアンピザが有名、尊宝は低価格を売りにしていた。そこでドミノはアメリカ風の厚みのある生地を使い、チキンやサツマイモといったお腹に溜まる具材を中心にし、お腹いっぱいになる満足感を目指した。わかりやすいスターメニューがないために注目は浴びづらいが、その代わり、リピートを取りやすい。
もうひとつが配達時間の強化だ。多くの国内系のピザチェーンは、外売=フードデリバリーに配達を委託してしまうため30分以上かかってしまうことがある。その場合、冷たいピザが届くことになる。ドミノでは自前のデリバリーチームを用意し、30分を超えたらクーポンなどを配布し、実質半額程度になるペナルティを自ら課している。
これは「30分以内に必ず持ってきてくれる」という注文のしやすさを提供するともに、温かいピザを届けられるという品質管理にもなっている。特に地方都市では配達範囲が広くなり、遅れることがよくあるため、このドミノの試みは消費者から歓迎をされた。

地方都市では店舗利用者が中心になる
ドミノは新市場=地方都市に進出をすることで、収益構造も自然に改善された。ドミノが長い間赤字が続いたのは、30分配達にこだわり、自前のデリバリーチームを持ち続けたことにより、人件費の支出が負担になっていたからだ。地方都市では人件費の相場が下がるため、この問題だった収益構造も改善された。
大都市では、ドミノは宅配中心だったが、新市場では店内で食べる人が多い。大都市ではデリバリー収入は63.6%だったが、新市場では16.85%にすぎない。8割以上の人が店内で食べていることになる。
マクドナルドとKFCがある場所に出店をしていく
出店場所の選定も、ドミノはコツをつかんだようだ。それは、ドミノよりも先に地方都市市場に定着をしているマクドナルドとKFCが出店している場所の近くに出店をするということだ。
毎週火曜と水曜には30%割引になるクーポンを配布した。マクドナルドは月曜日に会員が割引になるキャンペーンを続けており、KFCは木曜日に割引になるキャンペーンを続けている。そのため、火曜と水曜はマクドナルやKFCを避け、ドミノにきてくれるのだ。
マクドナルドとKFCは、暗黙の了解で、他店の飲食品を持ち込んでもうるさく言わない。店舗で何か買ってくれるのであれば、席を使って、他の飲食品を食べてもOKなのだ。タピオカミルクティーは自分の好きな店で買って持ち込み、ハンバーガーをマクドナルドやKFCで買って食べている人というのは珍しくない。何も買わずトイレだけ使っても注意されることもなく、むしろ歓迎される。マクドナルドとKFCは、居心地のよさを提供し、それで気軽にお店にきてもらいたいという考え方なのだ。
しかし、ドミノピザが出店した地方都市のマクドナルドとKFCでは、「ドミノピザの持ち込み禁止」の掲示をするようになった。それだけ驚異に感じ始めているということだ。


元気な地方に見つけた「新市場」
中国の不況感は、大都市ほどひどく、地方都市は意外に元気だ。可処分所得も伸びており、社会消費品小売総額(個人消費)も地方都市では伸びている。不況感の原因は、不動産バブル崩壊で資産を大きく減らしている人の消費マインドが冷え込んだことによる。このような不動産資産を持っている人は大都市に集中をしているため、大都市の高価格帯の小売は軒並み業績を大きく悪化させている。一方で、不動産所有者が少ない地方都市ではバブル崩壊はあまり関係がなく、相変わらず元気に消費をしている。
ドミノピザは、消費の活力源が大都市から地方都市に移るタイミングで、うまく「新市場」として地方進出の手を打った。これが意図した戦略なのか、偶然なのかはわからないが、ドミノピザは最も的確な手を打ち、黒字化を果たしたことになる。
