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今回は、中国スターバックスがカフェ競争から脱落をしたことについてご紹介します。
中国のスターバックスの業績が思わしくありません。2024年Q2(自然年。スターバックスは10月決算であるため、他との比較のため自然年で紹介します)の中国売上高は7.338億ドルとなり、前年同期比で10.7%減となりました。さらに既存店売り上げは14%減というかなり深刻な状況です。21年Q3に9.640億ドルという売上を記録して以来、低迷が続いています。
その間に、国内系の瑞幸珈琲(ルイシン、ラッキン)が順調に売上を伸ばし、24年Q2では11.562億ドルと大きく差をつけました。ラッキンは上り調子であり、今後も差は開いていくものと見られています。
現在は、スターバックス、ラッキンそして新規参入の庫迪(クーディー、コッティ)の三つ巴の競争が行われていますが、スターバックスが脱落をしたと言っていい状況になっています。あるいは自ら離脱をして、距離を置き始めたと言う方が正しいかもしれません。
しかし、このコーヒー戦争は、元々はスターバックスが仕掛けたものだったのです。2020年末に店舗数でラッキンがスターバックスを抜きます。これは中国にカフェ文化を持ち込んだスターバックスとしては大きくプライドを傷つけられたに違いありません。ラッキンは、モバイルオーダーを最初に大々的に導入したカフェチェーンです。さらに、アプリを通じて私域流量を獲得するというモバイル時代のマーケティングで成長してきました。この辺りの手法については、「vol.201:トラフィックプールとは何か。ラッキンコーヒーのマーケティングの核心的な考え方」(https://tamakino.hatenablog.com/entry/2023/11/05/080000)でご紹介しました。
スターバックスはこの時、事業部を2つに分割しました。ひとつは小売で、もうひとつはデジタル革新です。スターバックスはそれまで、中国で進むモバイル革命からは距離を置いていました。アリペイやWeChatペイなどのスマホ決済には対応せず、現金かクレジットカードしか使えませんでした。中国ではクレジットカードを使う人は限られているので、外国人のために対応したのであって、決済は現金が基本でした。当時、あちこちの飲食店が進めていた外売(ワイマイ、フードデリバリー)にも対応をしていませんでした。もちろん、モバイルオーダーにも対応していません。
それはテクノロジーの進化に鈍かったのではありません。スターバックスの戦略の基本にある「サードプレイス」と矛盾が生じるため、安易に導入することができなかったのです。家でも職場/学校でもない第三空間としてスターバックスを利用してほしい。ゆったりできる空間で美味しいコーヒーを飲む体験こそが商品だというものです。デリバリーをして他所で飲まれてしまうのはコンセプトに反するわけです。バリスタと顧客が深いコミュニケーションをしたいと考えるスターバックスには、効率的な決済方法であるスマホ決済やモバイルオーダーもフィットしません。新しいテクノロジーを否定したのではなく、自社の戦略に合う形で導入することにこだわったのです。
しかし、ラッキンがモバイルオーダーを武器に台頭してきている以上、対応をせざるを得なくなりました。そして、2019年にはアリババと提携して、スマホ決済の導入とデリバリーを始めます。
2021年末からスターバックスは業績を落とし始めます。中国では新型コロナの大規模な感染拡大が2020年と2022年の2回ありました。特に2022年の感染拡大は、スターバックスの密度が最も高い上海市が中心であったため、業績を大きく落とします。スターバックスのサードプレイス戦略=「店内でコーヒー体験を楽しむ」がそぐわなくなっていきました。多くの人が、感染を避けるために人が多い場所には行かなくなり、それが習慣化をしていきました。
この苦境を脱するために、スターバックスは「2025ビジョン」を発表しました。当時、スターバックスは約6000店舗を展開していましたが、2025年までに9000店舗に拡大するというものです。しかも、客単価が高いスターバックスは大都市でなければ受け入れられないと思われていましたが、地方都市まで含めた300都市に展開するというものです。当時は、「スターバックスが本気を出した」とも言われましたが「無謀すぎる」と言う人もいました。この2025ビジョンについては、「vol.154:中国に本気を出すスターバックス。3000店の新規出店。地方都市の下沈市場で、スタバは受け入れられるのか」(https://tamakino.hatenablog.com/entry/2022/12/11/080000)でご紹介しています。
おそらく、スターバックスはこの2025ビジョンで、台頭してきたラッキンの頭を抑えようと考えたのだと思います。当時のスターバックスのブランド価値の高さは圧倒的であったため、ラッキンは調子に乗りすぎて、虎の尾を踏んでしまい虎を怒らせてしまったのではないかとも言われました。
しかし、すぐにスターバックスの歯車は狂い始めました。それはこの2025ビジョンを発表した翌月に、新参のコッティが店舗展開を始めたのです。コッティは、元々ラッキンを創業した陸正耀と銭治亜の二人が創業したカフェチェーンです。ラッキンは、創業わずか2年半で米ナスダック市場に上場をするという奇跡のような成長をしましたが、不正会計問題が発覚をして、創業者の二人は責任をとって辞職をしていました。その二人が、ラッキンの創業チームを再集結して創業したのがコッティなのです。
コッティがうまかったのは、ラッキンからスピンアウトしたチェーンであるということを活かして、徹底的にラッキンとの対決姿勢を打ち出したことです。店舗もラッキンの店舗の隣などすぐ近くに出店しました。これは非常にうまい戦略です。なぜなら、コッティは新参チェーンであり、立地を調査する人材も時間も予算も限られています。ターゲットとしている客層はラッキンとほぼ重なるため、ラッキンがある場所に出店するのは、調査の手間を軽減するうまい方法だったのです。さらに、スターバックスは一線都市中心、ラッキンは新一線都市中心であったため、コッティは二線都市(地方中核都市)にねらいを定めました。出店場所の立地調査はこちらに集中をさせたのです。
さらに、8.8元という低価格戦略を打ち出していきました。話題と安さで、一気にラッキンの客を奪おうという作戦です。店頭には「ラッキンの創業者が8.8元でコーヒーをご馳走します」という横断幕を掲げて、ラッキンと対決していることをアピールしました。
コッティはスターバックスをライバル視せず、ラッキンをライバル視したことも賢い選択でした。ラッキンはスターバックスから客を奪いつつありました。ですので、コッティは自分でスターバックスから客を奪わなくても、ラッキンが奪ってくれた客を奪ってしまえばいいのです。ラッキンは、同時にコッティとスターバックスの両方に対応をするという両面作戦を取らざるを得なくなりました。
そこから、三つ巴の価格競争、店舗拡大競争が始まります。ラッキンは2024年7月に2万店舗目を北京市中関村にオープンし、スターバックスの「2025年までに9000店舗」に圧倒的な差をつけてしまいました。さらに2024年9月には、コッティが7647店舗となり、スターバックスの7511店舗を抜きます。スターバックスは店舗数では第3位のチェーン、売上高では第2位のチェーンになってしまいました。
そして、今、スターバックスは売上を減らしつつあります。コッティは非上場であるため売上高などは不明ですが、コッティに抜かれることも想定しなければならない事態になっています。
スターバックスは何が足りなかったのでしょうか。もちろん、スターバックスにはコアなファンがいるので、その人たちに質の高いサービスを提供することに集中をして、競争からは距離を置いてもいいのです。しかし、ラッキンやコッティにあって、スターバックスに足りないことが明らかに存在します。これは、他の飲食店にも共通することです。味千ラーメン、吉野家、上島珈琲なども業績が悪化をしていますが、スターバックスと同じ足りない部分があります。
中国で飲食チェーンを成長させようとしたら、どうしても避けて通れない施策があるのです。今回は、その必須の施策とは何なのかを、カフェ競争を例にご紹介します。
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