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Temuはなぜ常識を超えて安いのか。創業者の「資本主義の逆回転」と安さの本質

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今回は、拼多多やTemuの安さの理由についてご紹介します。

 

みなさんはTemu(ティームー)というECをお使いになっているでしょうか。あらゆるものが驚きの低価格で「あまりに安すぎてなんか怖い」と思っている方も多いかと思います。Temuの業績は公表されていませんが、母体となっている拼多多(ピンドードー)の財務報告書を見ると、Temuが大きな利益を生んでいることがわかります。

▲拼多多の有価証券報告書によると、Temuのサービスが始まって以降、手数料収入が激増していることがわかる。

 

Temuが米国でサービスインしたのは2022年9月で、日本では2023年7月からサービスを提供しています。現在は、世界50カ国に広がっています。母体の拼多多の収入の推移を見ると、2023年に入ってからTransaction収入が急増をしています。これは販売手数料収入ですから、Temuで販売される商品量が膨らんでいることが想像できます。

この母体となった拼多多は、専門家でも予測のつかない成長をしてきました。2015年に創業をした時、注目する人はほとんどいなかったのです。なぜなら、低価格を売りにして、農村や地方の低所得者層をターゲットにしたため、都市住人からは「貧乏人のEC」とまで呼ばれ、当時の北京や上海の人たちも「安すぎて、なんか怖い」と言っていました。話題にはなるけど、すぐに消えてしまうだろう、そんな風に見られていたのです。

しかし、2020年9月、初めての黒字化を達成した時、年間アクティブユーザー数(YAU)が7.57億人となり、No.1のECであるアリババの淘宝網タオバオ)とほぼ同じになりました。そして、2021年12月にはYAUが8.69億人となり、タオバオを抜き、中国で最も多くの人が利用するECになりました。このことを予測していた専門家はいません。

2022年9月にTemuを米国で始めると、多くの人が失敗をすると見ていました。話題にはなるけど定着はせずに、いずれ撤退することになるだろうと見ていたのです。しかし、そうはならず米国人の間に定着をしました。これにより、2023年9月には、拼多多の時価総額がアリババを抜き、中国ECのリーダー企業になりました。このことを予測していた専門家もいません。

 

つまり、多くの人が、中国のECの主役はアリババで、それに対抗する京東(ジンドン)とが2強で、拼多多は脇役にすぎないと見ていたのです。

その理由は、多くの人が「拼多多は安いだけのEC」としてしか理解できなかったことにあります。中国人にとっても想像より安い価格であったため「質がものすごく悪いのだろう」と考えないと、うまく理解できないのです。

もちろん、無数の商品が出品されていますから、中にはひどい商品もあります。中国人もそれを見つけると、自分の見方を補強してくれ安心できますから、その情報はSNSで広く拡散をします。しかし、実際は、安くても品質が悪くない商品の方が圧倒的に多いのです。

たとえば、先日、日本のSNS「X」で、こんな投稿を見かけました。ある学習机ですが、ものを乗せて数ヶ月、デスク板が湾曲をして歪んでいる状態の写真です。そして「Temuではこんなひどい商品が売られている。それを知らずに喜んで買っている日本人が哀れでならない」という内容のコメントがつけられていました。

この方は、2つ誤解をしています。

まず、この問題のデスクが販売されているのは拼多多であり、Temuではありません。Temuの仕組みについては「vol.211:劣悪品を排除し、低価格を実現する仕組み。Temuの革新的なビジネスモデルとは」で詳しくご紹介しました。商品の出所は拼多多の出品業者ですが、Temuはこの出品業者に対して入札を行い商品の買い付けを行ないます。この時、品質問題などを起こした問題のある出品業者は入札に参加ができません。そのため、Temuにはこのような問題のある商品は、絶対にとは言いませんが、まず入ってきません。

▲問題の学習机。78元という常識が壊れるほどの安さ。しかし、重たいものを載せるようには設計されていない。

 

もうひとつは、劣悪品質に対する考え方です。この商品は、拼多多で販売されていて、グループ購入をすると78元(約1700円)で買えます。単独購入しても88元という安さなのです。そして、レビューを見ると、やはりものを置いたままにして、デスク板が歪んでしまった報告がいくつか見られます。そこについているコメントを読んでいくと「学習机であって、ものを載せる棚ではない」「長期間、重いものを載せて負荷をかけると合板が歪んでいくのは当たり前」「収納棚として使用したいなら合板でなく、天然木の板を使った商品を買った方がいい」というコメントがついています。天然木を使ったデスクや棚は、さすがにこの価格では買えません。最低でも400元ぐらいはしています。

つまり、このデスクは、棚として使われて長期間負荷をかけることは想定してなく、勉強をするためにノートやパソコン程度のものを置くことを想定して、そこからギリギリの品質に照準を合わせて、コストを削りに削った商品なのです。

「安いから品質が悪い」ではなく「要求される品質を満たしながら、ぎりぎりの低価格を実現した」商品なのです。だから78元という価格が実現できています。

中国のSNSでも、同じ写真が拡散をしていましたが、反応は「ひどい」というものではなく「笑える」というものです。拼多多で販売されている劣悪商品の情報は、中国のSNSで常に拡散をしていますが、それを見て怒っている人はいません。みな、笑えるネタとして楽しんでいるのです。価格を考えたら「そりゃそうでしょう」としか言いようがないものばかりなのです。

 

中国人も当初は「安いものには裏の理由がある」と考えたために、拼多多に対しては強い拒否反応がありました。劣悪品質のものが売られていると考えたからです。しかし、拼多多創業者の黄(ホワン・ジャン)の考え方は違っていました。

は、浙江大学を卒業後、ウィスコンシン大学に留学し、そのまま、まだ上場前のグーグルに入社をします。その後、グーグルの中国オフィスの立ち上げのために中国に帰国をしました。

後ほどご紹介しますが、米国の投資家ウォーレン・バフェットと食事をする機会に恵まれ、ここでそれまで自分が考えてきた社会の問題点を「資本主義を逆回転させる」という考え方にまとめて話をし、バフェット氏から絶賛されます。この資本主義の逆転とは何かについては後ほど詳しくご紹介します。この考え方が拼多多の原点となっており、低価格ビジネスを理解する上できわめて重要なポイントになっています。これが、今回みなさんにお伝えしたい重要テーマです。

は、この考え方をエッセイにも書いて公開していますし、さまざまなメディアのインタビューでも語っています。この資本主義の逆回転は、格差問題や資本主義経済の継続にとっても重要な考え方です。

おそらく黄は、学生の間に、資本主義化される中国社会の課題について深く考え、それをひとつのアイディアにまとめたのだと思います。しかし、それを論文の形で著すのではなく、拼多多の創業という行動で表しました。ここがユニークな点です。

つまり、少し大袈裟にいうのであれば、拼多多やTemuというのは、資本主義社会の課題を解決する運動であり、ただの安売りECではないということです。ここを考えずに、拼多多やTemuを単なる「安かろう悪かろう」ECと見てしまうと、本質を見ることができなくなります。

 

この「資本主義の逆回転」とは何かということをご紹介する前に、Temuに関してもうひとつ説明をしておきたいことがあります。それは「Temuを利用したら、クレジットカード情報を抜かれて不正利用された」というSNSの投稿が複数あり、今ではちゃんとしたメディアでも「不正利用されたと訴えている人もSNSに散見される」というような表現を使うようになっていることです。

これも投稿された方の勘違いであると思います。なぜなら、クレジットカードのセキュリティはこの数年で目覚ましい進歩を遂げて、このようなことは今では起こらないようになっているからです。これは、クレジットカードや決済システムを安全に使うことにつながりますので、少し、カードセキュリティの現状について、みなさんと共有しておきたいと思います。

ポイントは、カードをネットで扱う時、システム側にはPCI DSSという国際セキュリティ基準に準拠することが求められているということです。策定は、アメックス、ディスカバー、JCBマスターカード、VISAの国際カード企業5社によるものです。

このセキュリティ基準に従うと、加盟店(ECサイトなど)側は、カード情報を直接知ることはできません。つまり、カード情報がわからないのですから、流出しようがないのです。企業がカード情報を転売してしまうことも、悪い従業員がダークウェブで売ってしまうこともできようになっています。

その手法については、非保持化(保存しない)、暗号化、トークン化などさまざまありますが、いずれにしても加盟店からカード情報が流出するということは起こらないようになっています。

「でも、カード情報の流出事故の報道はいくらでもあるけど?」。そうなのです。このセキュリティ基準がカバーしないところで流出はまだ起きているのです。これが問題として残っているのです。と言うより、犯行集団がこのセキュリティ基準がカバーしていないところを見つけて、カード情報を盗み出そうとしているわけです。その手口がわかれば、予防法もわかります。

 

カード情報の流出が起きるルートは、主に3つあります。

1)店頭での物理カードの使用

店頭でカード決済をする時に、店舗スタッフが番号などを暗記してしまいます。これを防ぐため、最近ではカード番号を表記しないナンバーレスカードが増えています。また、日本では高級感を出すための演出なのか、飲食店でレジ決済ではなく、テーブルでカードを預かって決済してくれるところがあります。あれはものすごく危ない習慣です。なぜなら、裏のオフィスでスタッフがカードの写真を撮っているかもしれないからです。

海外ではこの習慣はだいぶ前から見かけなくなっています。テーブル会計の場合は、モバイル式のリーダーを持ってきて客の目の前で決済するのが一般的になっています(カード会社がそれを強く推奨しています)。特に欧州の人は、この「カードを預ける」習慣をリスキーに感じる人が多いので、インバウンド事業をされている方は配慮をした方がいいかと思います。

物理カードを使う時は、スタッフに指を触れさせない。これが原則です。

 

2)クロスサイトスクリプティングXSS)によるサイバー攻撃

ECサイトなどの加盟店からカード情報が流出する場合、現在はほとんどがこのサイバー攻撃によるものになっています。まず、犯行集団は、さまざまな方法でターゲットのECサイトマルウェアを侵入させます。

ECサイトを初めて利用する場合、カード情報を登録する画面が表示され、そこにカード情報や住所、氏名を入力することがあります。マルウェアは、このカード登録画面が表示される時に、ECサイトの本物のページではなく、外部に犯行集団が用意した本物そっくりの登録画面に飛ばします。利用者は偽物だとは気づかずカード情報を入力してしまい、犯行集団はカード情報を盗むというものです。

しかも、ご丁寧に、この偽物ページに入力したカード情報は、逐一、本物のページに転送されるようになっています。そのため、カードが登録できて買い物ができますし、決済も正常に行なわれるため、利用者も加盟店も、カード情報が流出していることになかなか気がつきません。

現実には、盗まれたカードによる不正利用が多発をして、カード会社が調査をし、同じ加盟店を利用している記録があることから、その加盟店を疑い、詳細調査をして発覚するということが多くなっています。また、加盟店側の点検によりマルウェアが発見され、XSSの手口が使われているのではないかという調査から発覚をするケースもあります。いずれにしても、発覚までに時間がかかるため、かなりの期間(半年から1年ほど)流出が続くため、大量のカード情報が流出する大型事件になりがちです。

 

3)フィッシングサイトによる流出

ショートメッセージなどで、有名な機関や企業を装って「カード情報の更新が必要です」などと言われて、偽のページに誘導され、そこに自分でカード情報を入力してしまうというおなじみのパターンです。これもものすごく増えていて、減少する気配がありません。

 

このようなリスクを回避する手段がApple Pay/Google Payです。この決済手段では、カード情報は加盟店に送られず、トークン情報だけで決済をします。トークン情報は万が一流出をしても、それだけでは何の利用もできない仕組みになっています。また、ECにカード情報などを登録する必要もありません。決済のたびにトークンが送られます。このApple Pay/Google Payであれば、流出リスクを限りなくゼロにすることができます。

つまり、物理カードは他人には触れさせない、ネットにカード番号は入力しないという2つのことを守るだけでリスクはほぼゼロになります。さらに欲を言えば、対面でもオンラインでもApple Pay/Google Pay、電子マネー、コード決済を使うことを心がけることです。このような決済手段トークン決済となるため、カード情報や銀行口座情報などが加盟店側に送られることはありません。

私の場合、新規のECやD2Cを利用する時には、Apple Pay/Google Payが利用できないなら、利用するのをあきらめるようにしています。クレジットカード情報を入力するということは数年前からやめています。物理カードも持ち歩いていますが、ほぼ使っていません。Apple Pay/Google Payでほとんどの決済を済ますようにしています。クレジットカードによりますが、Apple Pay/Google Payでは電子マネー経由だけでなく、直接、NFCによるタッチ決済もできるようになっています。あとはPayPayを利用することで、ほとんど間に合います。みなさんにも、オフラインでもオンラインでも、Apple Pay/Google Payを積極的に利用されることを強くお勧めします。

 

Temuもセキュリティ基準PCI DSSに対応をし、決済手段ではApple Pay/Google Payにも対応をしています。この状態で、カード情報が流出したというのであれば、どのようなルートで流出したのか詳しく聞きたいほどです。

万が一、XSSなどのサイバー攻撃による流出が起きて、それをカード会社が把握をして、利用者に連絡をしたのだとしたら、大ごとになります。通常は、即時カード決済が停止され、フォレンジック調査が行なわれます。これは専門家が探偵のように流出ルートを突き止める調査のことです。そして、システムに問題があると判明したら、そのECシステムの決済部分はすべて廃棄されます。新たに決済システムをゼロから再構築してまでEC事業を継続するかどうかは、そのEC事業者の判断になります。

「Temuを使ったらカードを不正利用された」と投稿された方は、おそらくフィッシングサイトに引っかかったなにかして、たまたまTemuを使った経験があるため、誤解をされているのだと思います。もし、カード会社から不正利用の連絡があり、カード会社のスタッフから「Temuから流出をしていました」と説明を受けたのであれば、上記のように、Temuはすぐにカード決済停止の措置を受けているはずです。

確かに、クレジットカードをネットで使うのには不安があるというイメージがあり、XSSなどの巧妙な方法でカード情報流出も起きています。しかし、基本的なセキュリティ技術はどんどん進歩をしていて、特殊なケースを除いて、カード情報が流出するようなことはなくなっています。先ほどあげた3つのケースは、いずれも本人が自分でカード情報を入力することにより流出していることに注意してください。

おそらく、Temuのあまりの安さの理由づけが欲しく、裏で何か悪質なことをしているに違いないという思い込みがあるのだと思います。しかし、個人のカード情報など、今時、ダークウェブでも転売しても、1件数十円にもなりません。100万人分のカード情報を裏で売却しても数千万円にしかならないのです。Temuはそんな面倒で危ない橋を渡るよりは、まともな商売をした方が何百倍も稼げるのです。

では、拼多多やTemuはなぜ、裏で悪いこともせず、消費者に不誠実なこともせず、あれだけの安さを実現できているのでしょうか。その秘密が、創業者の「資本主義を逆回転させる」にあります。

今回は、この資本主義の逆回転についてご紹介します。

 

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