
3月8日午後9時から放送された、
NHKスペシャル「それからの、風の電話」を観た。

風の電話とは、
岩手県上閉伊郡大槌町の海(三陸海岸)を見下ろす丘にある、
「ベルガーディア鯨山」内に置かれた私設電話ボックスのこと。
佐々木格(いたる)さんが、病気で亡くなった従兄に話しかけたいと、
震災の数か月前、高台にある私有地の庭に、
電話ボックスとダイヤル式の黒電話を設置したもので、

震災後、近親者を失った多くの人たちから「使ってみたい」との声が寄せられ、
庭を開放したことで、広く知られるようになった。
そこで利用者たちの声を集めて制作されたのが、前作の、
NHKスペシャル「風の電話〜残された人々の声〜」(2016年3月10日放送)だった。

その後、諏訪敦彦監督によって、モトーラ世理奈主演の、
映画『風の電話』(2020年1月24日公開)も作られ、私も、
とのサブタイトルを付してレビューを書いた。
前作のNHKスペシャル「風の電話〜残された人々の声〜」を放送した際、
国際放送のNHKワールドでも同番組を放送したところ、
「(番組内で紹介された)電話の声だけ貸してくれないか」
という、米国のラジオ局から問い合わせがあったとか。
遺族たちの肉声だけでも伝える力があるというのだ。
そこでNHKは該当部分の音声を提供し、
それに翻訳をつけるシンプルなスタイルで現地で放送したところ、
大きな反響があり、再放送まで行われたそうだ。
それらがきっかけとなって、米国内でも同様の電話を設置する動きが起き、
娘を病気で亡くした女性は、
娘が生前、日本の「風の電話」をユーチューブで調べていたことを思い出し、
自ら電話を設置した。
当初は自身がそこに語りかけることが癒やしになったというが、
ホームページで「風の電話」について紹介するようになると、
多くの人に輪が広がっていったという。
こうした電話は現在、
米国を中心にポーランドや南アフリカなど550か所以上に設置され、
ここ最近、加速度的に増えているという。

アメリカでは、
海外の「風の電話」をまとめた「My Wind Phone」というサイトもあり、
その制作者の彼女もまた、娘を亡くし「風の電話」に助けられた一人だそうで、「風の電話」に関わることが彼女の生きる理由になっているとか。

こちらのInstagramで世界中の風の電話を見ることができる。
今回の番組では、原点となった大槌町の「風の電話」を中心に、
各地の遺族らの言葉で綴っていく。
大槌町では、2016年の放送時にも話を訊いた男性と再会。
当時は15歳の中学生だったが、父親が震災の日から戻らず、
今回もまた父と話をするため受話器を握る。

大槌町を訪れていたアメリカ人の男性は、
兄が自死した時に「風の電話」の存在を知り、
以前にも大槌町に来たことがあったとのこと。
当時はまだ復旧作業のさなかで、
歩みだそうとする東北の方々と自身を重ね合わせて元気をもらったそうだ。

亡くなった相手でも思いがあればつながることができる……
気持ちは生き続けることができる……
「風の電話」は、亡くなったらそこでおしまいではないことを教えてくれる。

人生の上で誰もが必ず遭遇する近親者の死。
避けては通れないこの苦しみ悲しみとどう向き合うか。
震災をきっかけに世界に広がる「風の電話」は、
その答えなき深遠な問いかけに対する、
ひとつのヒントを与えてくれるような気がした。
