
『ミステリーの女王 夏樹静子と福岡』という本が、
西日本新聞社から2022年3月に刊行されていたということを、
つい最近まで知らなかった。

夏樹静子ファン失格である。
私自身、(書店が減ったこともあって)書店に行くことも稀になり、
新刊書を目にする機会が極端に減っていたし、
地方の新聞社から出版されたということもあってか、
本の宣伝もあまりなされていなかったように思う。(言い訳に過ぎないが)
慌ててネット検索すると、まだ絶版にはなっていなかったものの、
佐賀の書店にはどこにも在庫がなく、Amazonで購入した。

【目次】
随筆 夏樹静子 「福岡を、愛する。」
刊行に寄せて 真摯の人―夏樹静子、その多彩な作品の原点に迫る 山前 譲
第1章 夏樹静子が歩いた街
夏樹作品の中の福岡 二沓ようこ
中洲
糸島
天神
城内~六本松
千代~馬出~箱崎
MAP 夏樹作品と福岡
若久~野間大池
西新~藤崎
室見~姪浜
第2章 写真で振り返る 夏樹静子クロニクル
岡本より子さん聞き書き 「先生との出会いは、百貨店のYシャツ売り場」
ゆかりの地
深野治さんインタビュー 「夏樹静子」がデビューした福岡時代
エラリー・クイーンの俳句 二沓ようこ
短編 夏樹静子 「見知らぬ敵」
随筆 夏樹静子 「私の推理小説作法(抄)」
第3章 夏樹静子と女たち
夏樹ミステリー×現代女性史 二沓ようこ 挿画 大嶋さち子
夏樹静子〈母と子〉の物語を読む―『蒸発』 二沓ようこ
第4章 夏樹静子を語る
「日本のクリスティ」の文業と功績 郷原 宏
心優しきミステリー作家の素顔 岡崎正隆
「椅子がこわい」の献辞は、宝マイ・トレジャー物 平木英人
戦後推理小説史における夏樹静子の作家的位置と国際性 権田萬治
夏樹静子著作目録
随筆 夏樹静子 「エラリー・クイーンの思い出(抄)

冒頭に置かれた随筆「福岡を、愛する。」で、
海も山もきれいなままで快適な都会になった福岡市を、私は愛している。
と語るように、夏樹静子作品には、
何げない風景描写の中に、福岡への愛が端的に表現されている。

研究家や編集者、親交のあった人物たちが語る作家の功績や人物像、
作品解説や作家の年譜、
福岡を舞台に執筆された短編「見知らぬ敵」も収録されており、
夏樹静子ファン、必携の一冊と言える。

特に充実しているのは、写真。
結婚式の写真、
子育て中の写真、
サイン会の写真、
執筆中の写真、
海外旅行の写真、
インタビューを受けている写真など、
若き日の夏樹静子も美しく、
これまであまり見たことのない貴重なプライベート写真が満載だ。



中でも、
箱に詰められた大量の新聞の切り抜きや、
裁判官や弁護士ら専門家に取材したたくさんの録音テープ、
本棚、原稿用紙、愛用していた万年筆や腕時計など、
生前のままの状態で残されているという書斎の写真が貴重だ。


夏樹静子は私の好きな作家で、
亡くなったとき(2016年3月19日死去、享年77歳)、このブログに、
夏樹静子さんのこと ……小さな、そして極私的な、二つの思い出……
と題して、追悼記事を書いた。
亡くなって9年以上経つのに、いまだに信じられずにいる私にとって、
届いた『ミステリーの女王 夏樹静子と福岡』は、
夏樹静子という作家が生き返ったような感動を私に与えてくれた。
感謝。
