
以前、雑誌「婦人公論」(2023年4月号)で、

(当時75歳の)ねじめ正一が次のように語っていた。
振り返ってつくづく思うのは、ある程度の年齢になったら、何かを手放す決断をしないと後が続かない。欲張っちゃダメだね。あれもこれもと思っていると、それができない自分に絶望したり、苛立ったりする。
ねじめ正一は、民芸店を営むかたわら、
小説、現代詩、俳句、エッセー、児童文学と、
幅広いジャンルの作品を精力的に発表し続けてきた。
ところが、70歳を過ぎて、体力と創作力に衰えを覚え、
店と小説と詩を「手放し」たそうだ。
すると、絵本の仕事に集中しようという覚悟が生まれ、
「新しい地平が広がった」というのだ。

私は、若い頃から、「いろんなことができる」人が好きで、
「この道ひとすじ」の人よりも「いろんなことができる」人を尊敬してきた。
なので、多方面で活躍していたねじめ正一も当然尊敬していた。
そんなねじめ正一も、70歳を過ぎると、
体力と創作力に衰えを覚えるようになり、
いくつかのものを「手放し」たというのだ。
選択肢が豊富にあることは、一見いいことのように思えるが、
「あれもこれもと思っていると、それができない自分に絶望したり、苛立ったりする」というのだ。

かくいう私も70代になり、(2025年9月現在71歳)
先月、このブログで、
60歳になったとき、体力はガクッと落ちた。
65歳になったとき、体力はガクガクッと落ちた。
70歳になったとき、体力はガクガクガクガクガクッと落ちた。
60歳になったときや65歳になったときとは比較にならないほど、
70代になると(信じられないほど)体力は低下する。
と書いた。
本当にそうなのだ。
そして、登山だけでなく、あらゆることに、
体力が必要なのだとひしひしと実感させられているのである。
これまでいろんなことに手を出し、
ブログにもいろんなカテゴリーを追加してきた私であるが、
何かを「手放す」必要性を感じるようになった。
結果、登山と読書と音楽鑑賞以外のものは、手放そうと思った。
登山は、「いつまでも歩ける人間でありたい」ということで、
読書は、「世界的名作を読まずに死ねるか」ということで、
音楽鑑賞は、「心を豊かにし、安らぎを得られる」ということで、
70代は、この三つを中心に生活していこうと思った。
映画に対しては、もう以前のようには見ないし、
レビューも書かないことを決めた。
理由はいくつかあるが、大きなものを二つだけ上げると、
次のようなことに因る。
➀多様性の時代を反映した映画が増えたこと。
私と異なる特徴、特性を持つ人々の存在は認めつつも、
興味のない題材の映画は敬遠する自分がいる。
映画レビューを書くには、あらゆる分野の映画を見ていなくてはならない。
そういう意味で、私には資格がなくなりつつあるのを感じていた。
➁ネット配信など、映画館で上映する以外の映画が増えたこと。
基本的にネット配信の映画は見ないし、
スクリーンで見た映画のみのレビューを書き、
「一日の王」映画賞も、映画館で上映された作品のみを対象にしてきた。
だが、映画のレビューを書く場合に、監督、俳優たちの、
他の監督作、出演作などとの比較論を書いてきた私としては、
ネット配信などの映画が多く制作されるようになった現状、
もうレビューを書くことは不可能になりつつあった。
すべての映画とは言わないまでも、
話題作のみに絞っても、その作品数は尋常ではなく、
鑑賞するにしても、そのレビューを書くにしても、
膨大な時間を取られることになる。
動画配信サービスの会社は、それぞれ、
何万本、何十万本という配信本数を誇り、
利用者は、それら無限に近い作品の中から鑑賞する作品を選ぶことができるのだ。
これだけ選択肢が豊富にあると、もう何が何だか……(笑)
動画配信サービスだけでなく、TV、YouTube、ゲームなども含め、
余程、自制心を持っていないと、
痴呆になったように一日中映像を見続けるのではないだろうか?(コラコラ)
それは決して幸せな環境ではないような気がする。
特に、人生の残り時間が少なくなった高齢者にとっては……
私の場合、
動画配信サービスはもちろんのこと、
ときおり観ているのは、地上波放送のみで、
それも、観る番組、観る時間は徐々に減少しつつある。
パソコンを開いたときに最初に目に飛び込んでくるポータルサイトのニュースも、
意識して読まないようにしている。
数年前に出版され、話題になったロルフ・ドベリ著『News Diet』という本でも、
「ニュース」を生活から完全に排除する必要性を説いていた。

ネットに流れているニュースは、ほとんどがクズ情報であるし、
自分にとって重要なものはほとんどない。
油断して読み始めると、30分、1時間はあっという間に消えていく。
実に危険なのだ。(笑)
私にとって、もはや、それら映像、情報は必要でなくなったと言っていい。
70代は世界的名作の読書を中心とした生活をしようと決めている私は、
選択肢が豊富な映像、情報世界を自ら排除、放棄することで、
読書と登山に意識を集中していこうと思っているのである。
