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一人読書会『アンナ・カレーニナ』(トルストイ)⑪ ……第4部、9章~16章……

 

一人読書会『アンナ・カレーニナ』の11回目は、

第2巻の、

第4部の9章~16章を読んでみたいと思う。

 

9章

 

もう5時を過ぎて、すでに何人かの客が集まっていたところへ、ようやくホスト本人が戻ってきた。オブロンスキーはすぐに、自分がいなかったせいで客間に気まずい雰囲気が漂っているのを察した。キティはじっとドアに目をやって、リョーヴィンが入ってきたときに赤くなりませんようにと、必死に念じていた。客間に入ったオブロンスキーは、遅刻の詫びを述べ、1分間で全員を改めて紹介し、各人を引き合わせたり、話題のテーマを差し出したり、キティに向かって今日は実にきれいだと声をかけたりして、瞬く間に場の全体をパン生地のように練り上げたので、客間の雰囲気はぐっと盛り上がって、活気のある声が行きかいはじめた。リョーヴィンが遅れてやってきた。キティと会うのは、初めてヴロンスキーを見たあの忘れられぬ晩以来のことであった。今日ここで彼女と会うだろうとわかっていた。キティは怯え、臆し、恥じらっていたが、そのためになおさら魅力的だった。リョーヴィンはキティの前まで来ると、ひとつお辞儀をして片手を差し出した。「ずいぶん長いことお目にかかりませんでしたね!」そう言って彼女は思い切ったようにきっぱりした態度で、彼の手を自分の冷たい手で握り締めた。キティの言葉には、許しを請う気持ちが、彼への信頼が、そして慈しみが、それも優しくおずおずとした慈しみの気持ちが、そして約束が、希望が、彼への愛がこめられていた。それは彼が信じずにはいられぬ愛であり、その愛のために幸せのあまり息が詰まりそうだったのである。リョーヴィンが他の人と話していても、キティが自分の言葉に耳を傾け、聞くのを楽しんでいることがわかっていた。そしてそのことだけに心を奪われていた。この部屋の中ばかりでなく、世界中を見渡しても、彼にとって存在するのは、今や自分にとって大きな意味と重要性を獲得した彼自身と、そして彼女だけだった。オブロンスキーはまったく目立たぬように、二人に目もくれにまま、まるでもうほかに席がないからといった風に、さりげなくリョーヴィンとキティを並んで座らせた。「しょうがない、ここにでも坐ってくれ」そんな風に彼はリョーヴィンに言ったのだった。

 

10章

 

レーニンは、ポーランドのロシア化が実現するとしたら、それは至高の原理原則があってはじめて実現するのであり、ロシアの行政府はそうした原理原則を導入すべきであると論証しようとしていた。ペスツォフは、一つの国民が別の国民を同化することができるのは、人口密度において勝っている場合に限ると主張した。コズヌィシェフはいずれの立場も認めたが、ただし条件付きであった。「異族人をロシア化する方法はただ一つ̶̶できるだけたくさんの子供を産むことですね」。ペスツォフはとことん議論するのが好きだったので、先ほどのコズヌィシェフのしゃれたまとめには満足していなかった。「ぼくはけっして人口密度だけを問題にしているのではないんです。そんな単純な数の論理じゃなくて、そういうものがよって立つ基盤が大事だと思うのですよ」「わたしが思うに、それは結局同じことですね。わたしの意見では、他の国民に影響を与えることができるのは、より高度な発達を遂げた国民であって、そういう国民は……」カレーニンが言い終わらないうちにペスツォフがさえぎった。「いや、それこそが問題じゃありませんか。いったい何をもってより高度な発達というのでしょう?」「わたしが思うに、影響力を持っているのは常に本当の教養を備えている側ですね」軽く眉を上げてカレーニンは言った。議論はその後も続いたが、いつしか議論は「女子教育」という新たなテーマに移っていった。

 

11章

 

皆が全体の会話に加わっていたが、ただしキティとリョーヴィンは別だった。キティとリョーヴィンの間には自分たちだけの会話が進行していた。いやそれは会話というよりは何か神秘的な交流であり、それが一分ごとにますますぴったりと二人を結びつけ、これから入っていこうとしている未知の世界に対する喜ばしい怖れの気持ちを、二人の胸に呼び起こすのだった。「それにしてもトゥロフツィン氏はよく笑いますね!」リョーヴィンが言った。「ご様子では、あなたはあの方が悪い人だと思っていらっしゃるようですね」「悪いというのではなくて、つまらない人間ですよ」「それは間違いですわ! どうか、そんなお考えはお捨てになってください!」キティはこう言って、姉ドリーの子供たちがそろって猩紅熱にかかったとき、姉に同情するあまり、トゥロフツィンが3週間も子供たちの世話を手伝ってくれたことを語った。リョーヴィンはもう一度トゥロフツィンをちらりと見て、自分がこれまでどうしてこの男の魅力に気がつかなかったのかと、不思議に思った。「いや、本当にすみませんでした、これからはけっして人のことを悪く思わないように心がけますから!」かれは朗らかにそう言ったが、それは今本気で実感したことを、素直に口にしているのだった。

 

12章

 

「プリャチニコフのお話はお聞きになりましたか?」トゥロフツィンが言った。「今日聞いたんですが、彼はトヴェーリでクヴィツキーと決闘して、撃ち殺してしまったそうです」カレーニンは問い返した。「そのプリャチニコフ氏は何のために決闘をしたのですか?」「妻のことでもめたのですよ。立派な振舞いでしょう! 相手を呼び出して殺してしまったのですから!」「へえ!」カレーニンは平然と答えると、眉を吊り上げて客間に移っていった。客間への通路になっている部屋でカレーニンを待っていた(アンナの無実を固く信じている)ドリーは、「あの人が一体どんな悪いことをしたというのです?」と問うた。「自分のつとめをないがしろにして、夫を裏切ったのです。それは彼女のしたことです」カレーニンは答えた。「いいえ、そんなはずがありません! きっとあなたの誤解です!」「誤解などおよそありえません、なにせ妻が自分から夫に向かってそのように表明しているのですから。8年間の結婚生活も息子も、ぜんぶ間違いだった。自分は新しく人生をやり直したいと、そう宣言しているのです」離婚だけは避けてほしいと懇願するドリーに向かって、カレーニンは更にこう続けた。「破滅したくないと思っている人間を救ってやることはできますが、しかしすでに性根まで腐りきって、破滅こそ救いだと思い込んでいるような人間が相手では、どうしようがあります?」「汝を憎む者を愛せ……」ドリーが恥ずかし気につぶやいた。「自分を憎む者を愛するのは結構ですが、自分が憎む相手を愛することは不可能ですよ。いや、いろいろお騒がせをしてすみませんでした。誰だって自分の悩みで手一杯だというのに」カレーニンはそう言うと、気を取り直して静かに挨拶し、去っていった。

 

13章

 

キティはそこにあったカード・テーブルに近寄ると、腰を下ろして計算用のチョークを手に取り、新しい緑のラシャの上にくるくると渦巻き模様を描きはじめた。「あら! テーブルじゅう落書きだらけにしてしまったわ!」そう言うとキティはチョークを置き、立ち上がろうとするような身振りを見せた。リョーヴィンはチョークを手に取り言った。「ちょっと待ってください。ぼくは前からあなたにうかがいたいことがあったのです」「あら、どうぞお聞きください」「では」そう言うと彼はチョークで単語の頭文字だけを書いていった。『あ、あ、ぼ、し、こ、そ、で、い、あ、ぜ、い、そ、あ、だ?』これは次のことを意味していた。「あの時、あなたは、ぼくの、質問に、答えて、それは、できませんと、言われましたが、あれは、絶対にという、意味ですか、それとも、あの時、だけですか?」キティはこれを解読し、リョーヴィンの書いた文字をすばやく消すと、『あ、わ、あ、い、こ、で』と書いた。リョーヴィンはこれを「あの時の、わたしは、あれ、以外の、答えが、できなかったのです」と解読し、「あの時だけだったんですね」と言った。「はい」キティの微笑が答えた。「もしも、あなたが、あのときの、ことを、忘れて、許して、くださったら」とキティが書いた。「ぼくには、何ひとつ、忘れることも、許すことも、ありません。ぼくは、ずっと、あなたが、好きでした」とリョーヴィンが答えた。この後も二人は頭文字を書いて会話を続け、すべてを語り尽くした。彼女が彼を愛していることも、両親に打ち明けることも、明日の朝、彼がキティの家を訪れることも。

 

14章

 

キティが去って一人になると、リョーヴィンは彼女がいないことが不安でたまらなくなった。明日の朝もう一度キティと会い、そして永遠に結ばれるまでの時間をなんとか少しでも早く過ごしてしまいたいと、はやる気持ちに駆られた彼は、この先まだ14時間も彼女なしで過ごさなければならないと思うと、死にそうなほどうろたえてしまうのであった。一人ぼっちにならずになんとか時間をごまかすためには、誰か相手を見つけて何か話でもする必要があった。オブロンスキーとドリーにお別れをして外に出たリョーヴィンは、一人になりたくなかったので、会議に行くと言う兄のコズヌィシェフにくっついて一緒に行った。会議が終わると、スヴィヤシュスキーが近寄ってきて、家に寄ってお茶を飲んでいかないかと勧めたので、「喜んで」と答えて同家に出かけたのだった。彼は1時間、2時間、3時間と腰をすえて様々な話題について語ったが、みんなはもうとうに寝る時間だということにも、気づきもしなかった。あくびをしながら見送ってくれたスヴィヤシュスキーの家を出た時は、すでに1時を回っていた。ホテルに戻ったリョーヴィンは、自分がまだこれから10時間も、じりじりしながら一人で過ごさなければならないと思って愕然とした。夜勤番のボーイ、エゴールを引き止めて話すも、呼び鈴が聞こえエゴールは去った。リョーヴィンは眠れぬまま一夜を過ごし、6時過ぎに通気窓を閉め、洗顔をすませ、服を着て通りへ出て行った。

 

15章

 

6時過ぎ、リョーヴィンはシチェルバツキーの家に向かって歩きだした。着いてみると、正面の扉は閉ざされ、家中が寝静まっていた。9時過ぎ、再びシチェルバツキー家を訪ねたが、家ではやっと人々が起きだしたばかりで、まだ2時間は辛抱しなければならなかった。再びホテルに戻ったリョーヴィンは、12時に馬車でシチェルバツキー家に向かった。彼が最初に会ったのは、マドモアゼル・リノンだった。だが彼が彼女と話しはじめたとたん、ドアの向こうで衣擦れの音がした。マドモアゼル・リノンは大慌てで彼を残して別のドアに向かった。彼女が姿を消すやいなや、軽やかな足音が響き、彼の幸せが、彼の命が、彼自身が、いや彼自身より大事なものが、彼の願いそのものが、ぐんぐんと足早に近づいてきたのだった。彼女は彼のすぐそばに立ち止まり、彼に触れた。彼女の手が上がり、彼の肩の上に降りた。彼は彼女を抱き、くちづけを待っているその唇に唇を押し付けた。彼女もまた一晩中一睡もせず、朝からずっと彼を待っていたのだった。「ああ、これは本当のことなんだろうか? 信じられない、きみがぼくを愛してくれるなんて!」と彼が言った。「本当ですわ! わたしはとっても幸せです!」と彼女が言った。彼の手を放さぬまま、彼女は客間に入っていった。公爵夫人は泣き笑いしながら、「これで万々歳ね! わたしは嬉しいわ。この子を愛してあげて。わたし嬉しくて……キティ!」と言った。老公爵は、「ずいぶん早業だったなあ!」と、平静を装い、目を潤ませて言った。

 

16章

 

最初にすべてをはっきりと口にしたのは公爵夫人で、彼女がいろいろな考えや気持ちを現実的な問題へと翻訳したのだった。「一体いつにします? 祝禱式とお披露目をしなくてはね。そして、結婚式はいつになるかしら? あなた、どう思います?」「ご本人に聞いてみなさい」公爵がリョーヴィンを指差して言った。リョーヴィンは顔を赤らめて言った。「明日はどうです。今日のうちに祝禱式をして、明日結婚式をすればと」「あらまあ、あなた、ご冗談はよしてくださいな。それじゃ、嫁入り支度はどうするの?」「ぼくには何もわからないのです。ただ自分の希望を言ったまでで」彼は詫びを言った。「ではいろいろ話し合って決めましょうよ」夫妻が出て行ってしまうと、リョーヴィンは自分の花嫁のもとに近寄って、手をとった。「なぜかぼくには、こうなることがわかっていました! けっして期待はしなかったけれど、心の中ではいつも信じていたんです」彼は言った。「ぼくはこうなることが前から決まっていたんだと信じています」「わたしだってそうですわ」彼女は言った。「あのときでさえ……自分で自分の幸せを突き放してしまった、あの時でさえ。わたしはいつもあなたを愛していました。ただ魔がさしたんです。これだけはうかがっておきたいのですが……あのことを忘れていただけますか?」「おれはかえってよかったかもしれません。ぼくもあなたに許していただきたいことがたくさんあります」彼は彼女に二つのことを打ち明けようと決心していた。一つは自分が彼女ほど純潔ではないということ。もう一つは自分が神を信じない人間だということであった。

 

第4部、9章で、リョーヴィンとキティが久しぶりの再会を果たす。

そして、オブロンスキーがさりげなくリョーヴィンとキティを並んで座らせる。

二人の気分は高まり、会話が始まる……と思いきや、

10章では、なぜか、カレーニンの議論のシーンが差し込まれ、

読者はじらされる。(笑)

11章で、再び、リョーヴィンとキティにスポットが当たり、

皆が全体の会話に加わっている中、

キティとリョーヴィン間には自分たちだけの会話が進行する。

それは会話というよりは何か神秘的な交流であり、

それが一分ごとにますますぴったりと二人を結びつけ、

これから入っていこうとしている未知の世界に対する、

喜ばしい怖れの気持ちを二人の胸に呼び起こす。

それなのに12章ではまたカレーニンとドリーの会話などが差し込まれ、

リョーヴィンとキティの会話はなく、またしても読者はじらされる。

それは、13章をより際立たせるための布石であったかもしれない。

それほど13章は、リョーヴィンとキティのファンにとっては、

記念すべき章になっている。

二人はついに(互いに)愛の告白をし、

相思相愛の仲となるのだ。

 

14章は、眠られぬ一夜を過ごすリョーヴィンの様子が描かれる。

そして、15章では、リョーヴィンはシチェルバツキーの家を訪れ、

キティの両親から祝福を受け、

16章で、二人の結婚も決まる。

今回読んだ第4部の9章~16章は、

(カレーニンは登場するがアンナは登場しないので、)

リョーヴィンとキティのためのパートと言ってもよく、

二人が一時の感情の行き違いを乗り越え、

相思相愛となっていく姿は微笑ましく、楽しい。

それだけに、今後のアンナのことが気にかかるが、

それは17章以降で描かれることであろう。

 




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