以下の内容はhttps://taku6100.hatenablog.com/entry/2025/08/14/171047より取得しました。


一人読書会『アンナ・カレーニナ』(トルストイ)⑩ ……第4部、1章~8章……

 

一人読書会『アンナ・カレーニナ』の10回目は、

第2巻の、

第4部の1章~8章を読んでみたいと思う。

 

1章

 

レーニン夫妻は相変わらず一つ屋根の下に暮らし、毎日顔を合わせながら、まったくよそよそしくしていた。ヴロンスキーがこの家に出入りすることはなかったが、アンナは家の外で彼と会っており、夫もそれに気づいていた。カレーニンは何事にも終わりがあるように妻の浮気もやがて終わり、みんながこのことを忘れて、自分の名も辱められずにすむと期待していた。アンナはじきにすべてが決着がついてすっきりするはずだと固く信じていた。しぶしぶアンナに従ってしたヴロンスキーもまた、この厄介な問題にきっぱりとけりをつけてくれるべき、何かしら自分の力を超えたものを待ち望んでいた。ヴロンスキーはペテルブルグを訪れたある外国の皇太子の世話係を命じられ、ペテルブルグの名所を案内するはめになり、きわめて退屈な一週間を過ごした。昼の間は二人して名所旧跡のたぐいを回り、晩にはロシア風の歓楽の席に連なった。この客がとりわけヴロンスキーにとってつらい相手だった一番の原因は、彼が否応なく相手のうちに自分自身の姿を見てしまうからであった。目上の者に対しては対等に付き合ってへつらわず、同等の相手には自由で気さくに振舞い、目下にはいかにも見下したような情けをかけた。これはまさにヴロンスキー自身と同じであり、かれはそれをたいそう立派な態度だと思ってきた。しかし皇太子に対して目下に当たる彼は、この見下したような情けをかけられたとき、怒り心頭に発したのだった。

 

2章

 

ヴロンスキーが家に戻ってみると、アンナの手紙が着いていた。「晩においでください。7時には夫が委員会に出かけ、10時まで帰りません」そうアンナは書いていた。朝食をすますと、ヴロンスキーはソファに横になり、眠りに落ちた。恐ろしい夢をみて、身を震わせながら目を覚ました彼は、時計を見た。8時半だった。大急ぎで服を着て、カレーニン家の玄関に乗り付けた時、9時10分前であった。橇を降り、玄関に向かった。するとちょうど玄関のドアが開き、カレーニンが出てきた。じっと動かぬカレーニンの目は、ヴロンスキーの顔にひたとすえられていた。ヴロンスキーが一礼すると、カレーニンはちょっと口をもぐもぐさせながら片手を帽子にかけ、脇を通り抜けていった。「もういや!」彼を見るとアンナはそう叫んだが、最初のひとことでその目に涙があふれ出た。「いやよ、もしこんなことが続けば、ずっと、ずっと早くあのことが起こってしまうわ」「いったいどうしたの?」「どうしたかですって? わたしは待っていたのよ。つらい思いをしながら、1時間も2時間も……いいえ、よしましょう!……あなたと言い争うわけにはいかないわ。きっと来れない理由があったのでしょうから」両手を彼の肩に置くと、彼女はいかにも嬉しそうな、しかも同時に試すような深いまなざしで、じっと彼を見つめた。

 

3章

 

ヴロンスキーは、アンナの嫉妬の発作にひどく怯えていて、嫉妬の原因が自分への愛情であるということを理解してはいても、そのせいで彼女への愛がさめていくのを隠そうとしても隠しきれないのだった。今の彼は、すでにいちばんの幸せは過ぎ去ったと感じているのだった。自分が彼女に愛を感じていないと思えるようになったいま、かえって彼女との関係はとても断ち切れないと自覚するのだった。ヴロンスキーが、「お腹の赤ちゃんの予定日はいつ?」と聞くと、「じきよ、もうじき。じきに何もかも決着がつくわ。そうしたらわたしたちはみんな、みんなほっとして、これ以上苦しむこともなくなるの」「ぼくにはわからないな」「あなたはいつって聞いたでしょう? じきよ。そしてわたしはそのことに耐えられない。いいえ、口を挟まないで。わたしにはわかっている、確実にわかっているわ。わたしは死ぬ、そして死ぬことで自分もあなたも解放してあげられるのがとても嬉しいの」涙が彼女の目から流れ出た。「なんてばかげたことを! なんて無意味なたわごとを言うんだ!」「いいえ、これは本当のことよ」「何が、何が本当だって?」「わたしが死ぬということよ」不意に彼女は動きを止めた。その表情はたちまちにして一変した。恐怖と動揺の表情が消え、幸せそうな表情が浮かんだのだった。彼にはその変化の意味がわからなかった。彼女の体の中の小さな生命の動きに注意を傾けていたのだ。

 

4章

 

オペラを見に出かけ、帰宅したカレーニンは、すぐに横になることはせず、夜中の3時まで部屋の中を行きつ戻りつしていた。どうしても体面を守ろうとせず、家に愛人を連れ込むなというたった一つの言いつけも守れない妻に対する怒りで、どうにも胸のうちがおさまらなかったのである。一晩中一睡もしなかった結果、膨らみに膨らんだ彼の怒りは、翌朝にはもはや最後の限界にまで達していた。妻の起床を知ると同時に彼女の部屋に入って行った。「わたしは何ひとつ変えることはできません」アンナはつぶやいた。「わたしがきみに言いに来たのはこういうことだ。わたしは明日モスクワへ発って、その後はもうこの家には戻らない。きみはわたしの決定についての通知を、弁護士から受け取ることになる。わたしが離婚訴訟を託す弁護士だ。わたしの息子は、妹の家に引き取られる」「あなたがセリョージャをほしがるのは、わたしを苦しめるためね」「そうだ、わたしは息子への愛情さへ失ってしまったが、それというのもきみに対する嫌悪が息子にまで染み付いてしまったからだ。しかしやはり息子はこちらで引き取る。ではこれで!」そう言って彼は出て行こうとしたが、アンナが引きとめた。「あなた、セリョージャは置いていって! 他に何もお願いはありません。セリョージャを置いていって、せめてわたしの……わたしじきに子供を産みます。あの子を置いていって!」カレーニンはカッとなって、妻のつかんでいた腕をもぎ離すと、黙って部屋を出ていった。

 

5章

 

レーニンがある有名なペテルブルグの弁護士の事務所を訪れると、その応接室は客で一杯だった。この際身分を明かすのもやむをえないと悟り、名刺を助手に差し出し、取次ぎを頼んだ。2分もすると弁護士が現れ、部屋に通された。「これからご相談する事柄は他聞をはばかる」ということをことわった上で、「不幸にもわたしは妻に裏切られました。それで、法にのっとって妻との縁を切ることを、つまり離婚を望んでおります。ただしその際、息子を母親のもとに残したくはないのです」と言った。そして、この種の問題が実際にどのようなかたちで処理されるのかという点について問うと、弁護士は、「わが国の法律によると、離婚が可能なのは、夫婦いずれかに身体的な欠陥がある場合、疾走して5年たった場合、それから不貞の場合です」と言い、「不貞の場合は、その不貞の罪が夫婦双方の合意の上で立証された場合、および双方の合意が得られぬまま、強制的に立証された場合です」と付け加えた。カレーニンは、「わたしの場合、可能な手段はただ一つ、強制的に立証する方法ですな。証拠となる手紙はわたしの手元にありますから」。弁護士は唇をすぼめて、同情と軽蔑の相半ばしたような声で言った。「手紙はもちろん立証の一助になるでしょう。しかし証拠というものは本来直接的な手段で、つまり証人から集めるべきものです。もしもこのわたしをご信頼くださるならば、どんな方法を用いるべきかという選択も、お任せいただきたいと思います。虎穴に入らずんば虎児を得ずといいますからな」「つまり離婚は可能であると、こう結論してよいのですね」「わたしに完全なフリーハンドをいただけるなら、何事も可能ですよ」。

 

6章

 

8月17日委員会においてカレーニンは輝かしい勝利を収めたのだったが、その勝利の結果に、かえって足元を掬われることになった。論敵のストレーモフが予想もしなかった作戦に出たのだ。突然カレーニンの陣営に鞍替えし、カレーニンの提案による施策の実行を熱烈に支持したばかりか、同様な趣旨の別の極端な施策群まで提案し、この過激な施策が採択されたのだ。あまりにも極端に走った一連の施策がにわかに愚劣なものと判明し、政治家も世論も皆がいっせいにこの施策を攻撃し、施策そのものとその生みの親であるカレーニンに向かって、憤りを表明したのであった。ストレーモフはさっと身を引き、それでカレーニンはひどい痛手をこうむったのである。そんな状況下、カレーニンは一つの重要な決断を行った。すなわち委員会の驚きをよそに、自ら事情調査のために現地へ赴く許可を願い出ると宣言したのだ。そうして許可をもぎ取ると、カレーニンは遠くの諸県へと出立したのである。諸県への旅の途中、カレーニンは3日間モスクワに滞在した。着いた翌日、彼は新聞横丁の四つ角でオブロンスキーから声を掛けられる。近くの馬車には妻のドリーと二人の子供が乗っていた。カレーニンはモスクワでは誰にも会いたくないと思っていたが、とりわけ妻の兄はいちばん避けたい相手だった。「わたしの好きなアンナさんはお元気にしていらして?」ドリーが言うと、カレーニンはムニャムニャ言って、そのまま立ち去ろうとした。だがオブロンスキーが彼を引き止め、「ドリー、食事に来ていただこうよ!」と言うと、ドリーも「それはぜひ、お越しください。5時にお待ちしますわ、なんなら6時でも」と言った。カレーニンは何やら答えたが、行きかう馬車の騒音にまぎれてドリーには聞き取れなかった。

 

7章

 

翌日は日曜日だった。オブロンスキーはボリショイ劇場のバレエのリハーサルに立ち寄って、自分の口利きで入団したかわいいダンサーのマーシャ・チービソワに、前日約束した珊瑚のネックレスをプレゼントした。そして舞台裏の真昼の暗がりで、プレゼントを喜ぶ相手のきれいな顔に、首尾よくキスすることができたのである。そして一緒に食事に行こうと約束した。劇場を出たオブロンスキーは、12時にはもうホテル・デュッソーに着いていた。彼には会わなければならない相手が3人いたが、幸いにも全員がこの同じホテルに宿泊していた。まずリョーヴィンを訪ねた。「外国できみは何をしていたんだい? どこへ行ったのさ?」「行ったのはドイツ、プロイセン、フランス、イギリスだが、首都じゃなくて工場のある町を訪ねたんだ」「シチェルバツキー青年から聞いたところでは、きみは死ぬ話ばかりしていたそうじゃないか」「ぼくは今だって死のことを考えているよ。そろそろ死んでもいい時期だというのは、本音のところだ。死を考えていると人生の喜びは減るが、そのかわり心は落ち着くんだよ」とリョーヴィンが答えた。オブロンスキーは、「今日の晩、必ずうちに食事に来たまえ。きみの兄さんも来るし、妹の夫のカレーニンも来る」と言い、リョーヴィンは「ああ、もちろん」と答えた。

 

8章

 

レーニンは日曜日の祈禱式から戻って以来、午前中ずっと部屋で過ごした。この朝彼には二つの仕事が予定されていた。ひとつは、ペテルブルグへ向かう途中でモスクワに立ち寄った異族人たちの代表団を、迎えて送り出す仕事であり、もう一つは弁護士に約束の手紙を書いてやることだった。彼が手紙に封をしていると、オブロンスキーがやってきた。「わたしはうかがえません」立ったまま、客に椅子をすすめもせずに、カレーニンは冷たく言い放った。続けて、「わたしがお宅に伺えないのは、わたしたちの間にあった親族関係は断ち切られるべきだからです」と言った。「なんですって? それはまたどういう? なぜそんな?」オブロンスキーは笑顔を浮かべたまま言った。「なぜなら、わたしはきみの妹を、つまりわたしの妻を相手に離婚訴訟を起こすつもりだからです。しかるべき理由があって……」とカレーニンは答えた。オブロンスキーは、「カレーニンさん、お願いですから、訴訟を始める前に、ぼくの妻と会って、彼女に相談してくださいよ。妻はアンナを実の妹のように愛しているし、あなたのことも愛しています。お願いですから、妻と放しあってくださいよ! 友達のためだと思って、お願いします!」と懇願した。「もしもきみがそれほどお望みならば、うかがいましょう」とカレーニンは答えた。オブロンスキーは、「では、必ず晩餐に来てくださいよ。5時ですよ、フロックコートで、お願いしますよ!」と言って出て行った。

 

第4部の1章~8章を読んだのだが、

1章から3章は、ヴロンスキーとアンナの、

それぞれの心情が描かれる。

そして、早くも、ヴロンスキーのアンナへの思いに変化がおとずれる。

 

ヴロンスキーは、自分が言いたかったことをにわかには思い出せなかった。最近ますます頻繁に起こるようになった彼女の嫉妬の発作に、彼はひどく怯えていて、嫉妬の原因が自分への愛情であるということを理解してはいても、そのせいで彼女への愛がさめていくのを隠そうとしても隠しきれないのだった。(312頁)

 

今の彼は、すでにいちばんの幸せは過ぎ去ったと感じているのだった。彼女は初めのころ彼が見た彼女とはすっかり変わっていた。しかも精神的にも肉体的にも、悪いほうへ変わっていたのだった。体全体が横に広がって、顔つきにしても、さっきの女優の話をしたときなどは、顔面が歪むほどの意地悪な表情を浮かべていた。(312頁)

 

自分が彼女に愛を感じていないと思えるようになったいま、かえって彼女との関係はとても断ち切れないと自覚するのだった。(313頁)

 

アンナの心情も、悪い方へと変化していく。

ヴロンスキーが、「お腹の赤ちゃんの予定日はいつ?」と聞くと、

 

「じきに、じきに何もかも決着がつくわ。そうしたらわたしたちはみんな、みんなほっとして、これ以上苦しむこともなくなるの」(318頁)

 

「ぼくにはわからないな」実際はわかっていながらヴロンスキーが言うと、

 

「あなたはいつって聞いたでしょう? じきよ。そしてわたしはそのことに耐えられない。いいえ、口を挟まないで。(中略)わたしにはわかっている、確実にわかっているわ。わたしは死ぬ、そして死ぬことで自分もあなたも解放してあげられるのがとても嬉しいの」(318頁)

 

と、死をほのめかす。

直後、アンナのお腹の中の小さな生命が動く。

すると、アンナから恐怖と動揺の表情が消え、幸せそうな表情が浮かぶ。

死と生を同時に孕んでしまったアンナの行く末が心配でならない。

 

「わたしは何ひとつ変えることはできません」と言うアンナに対し、

夫のカレーニンはついに離婚を決意し、弁護士に会う。

離婚訴訟の準備をしているときに、モスクワでオブロンスキーに偶然会う。

妻のアンナはオブロンスキーの妹なので、できれば会いたくない相手だった。

ホテルまで訪ねてきたオブロンスキーは、晩餐に招待したいと告げる。

もうどうしようもない展開なのだが、

この晩餐にはリョーヴィンとキティも招待されている。

希望は、この二人だ。

9章以降で、この二人が再会し、新たな展開が生まれる筈だ。

私はそこに期待したい。

 




以上の内容はhttps://taku6100.hatenablog.com/entry/2025/08/14/171047より取得しました。
このページはhttp://font.textar.tv/のウェブフォントを使用してます

不具合報告/要望等はこちらへお願いします。
モバイルやる夫Viewer Ver0.14