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一人読書会『アンナ・カレーニナ』(トルストイ)⑧ ……第3部、13章~23章……

 

一人読書会『アンナ・カレーニナ』の8回目は、

第2巻の、

第3部の13章~23章を読んでみたいと思う。

 

13章

 

一見きわめて冷静で思慮深いカレーニンという人物には、一つの弱点があった。女子供が泣くのを見たり聞いたりすると、冷静でいられなくなってしまう性質なのだ。アンナがヴロンスキーとの関係を打ち明けた直後に、両手で顔を覆って泣きだしたときも、カレーニンはこみあげる妻への憎しみを味わいながら、同時に涙を見るといつも生じる例の心の乱れが潮のように押し寄せてくるのを覚えたのであった。最悪の疑惑を裏付けた妻の言葉は、カレーニンの胸に強烈な痛みをもたらしたが、一人になってみると、カレーニンは自分がそうした哀れみの感情からも、またこのところずっと悩みの種だった疑惑や嫉妬の苦しみからもすっかり解放されているのを感じて、驚きかつ喜んだのであった。久しく痛んでいた歯を引き抜かれた患者が覚えるような感覚であった。そして彼は、自分がもう一度生きていける、そして妻のことばかり考えずにいられるのだと感じたのだった。ヴロンスキーとの決闘や、アンナとの離婚や別居も考えたが、カレーニンは出口は一つしかないと確信した。それは妻を手元に置いたまま、事件を世間から隠し、あらゆる手を使ってこの関係を絶つことだった。「時がたてば何もかも丸くおさまって、関係も元通り修復されるだろう」カレーニンは思った。「つまり、こちらが生活の流れに乱れを感じない程度には修復されるだろう。妻は不幸になって当然だが、こちらは悪くないのだから、不幸になるいわれはないのだ」。

 

14章

 

ペテルブルグに近づく頃には、カレーニンはすっかり決意を固めていたばかりか、頭の中で妻に書いてやる手紙まで作文していた。「きみの振舞いがたとえいかなるものであったにせよ、神の権威によって結ばれたわれわれの絆を断ち切る権利は自分にはないと、わたしは判断する。家族は、夫婦いずれかの気まぐれによって、勝手な意志によって、ひいては犯罪によってさえ、破壊されるべきものではなく、したがってわれわれの生活は従来どおりに進行すべきだ。できるだけ速やかに、遅くとも火曜日までにはペテルブルグに戻られたい。追伸 必要と思われる経費を本状に添える」。彼はベルを鳴らし、「明朝に別荘の家内に届くよう、速達便で送ってくれ」と命じた。本を開いたが、いくら読もうとしても読めず、別のことを考えていた。妻のことではなく、最近起こった自分の政治活動上の難問のことで、ザライスク県の農地灌漑事業に関する案件であった。着任したての頃は、自分の地位の不安定さから、今はこれに手を出すのは得策ではないと判断したが、彼の省と敵対するある省がこの問題を取り上げたことから、挑戦のしるしの手袋をたたきつけられたからには、彼は大胆にそれを拾い上げ、ザライスク県の農地灌漑委員会の活動を調査検討するたの特別委員会の設置を要求したのである。自分の考えをメモし、一枚の紙にびっしりと書き込むと、ベルを鳴らし、事務局長に届けさせた。ベッドに横になって妻との一件を思い起こしたときには、もはやそれはたいして憂慮すべき出来事とは感じられなかったのである。

 

15章

 

ヴロンスキーから、あなたの置かれた状況は放置できないから、すべてを夫に打ち明けるようにと説得されたとき、アンナは頑なになって反駁したが、内心では心から今の状況を変えたいと思っていた。夫とともに競馬場から帰る途中、興奮したはずみにすべてを打ち明けてしまったが、そのとき彼女は心の痛みを感じたものの、嬉しく思う気持ちもあった。これでよかったんだ、いまこそ何もかもはっきりしたし、少なくともこれからは嘘偽りがなくてすむのだと思った。もはや自分の立場が永遠に定まったことは疑いない。その晩彼女はヴロンスキーと会ったが、夫との間にあった出来事を相手には話さなかった。自分が恥ずかしかったからだ。そう自覚したとき、これまで思いもしなかった恥辱への恐れが沸き上がってきた。家から追い出されるのではないか、自分の恥が世間中に知れ渡るんじゃないだろうか……と。ヴロンスキーについて考えてみても、もうあの人はわたしを愛していないし、わたしのことが煙たくなりはじめているから、あの人にわが身をささげるわけにはいかない。たとえ自分がどんな状況に陥ろうと、彼女は息子を捨てることはできなかった。自分には生きる目的がある。なんとしても息子と一緒にいられる状態を守り、息子を奪われないようにするために、しっかり行動しなくてはならない。今すぐにでも、できるだけ早く、息子を奪われないうちに手を打つのだ。息子を連れてここを去るのだ。まさにそれこそが、今の彼女が唯一なすべきことだった。

 

16章

 

レーニンの使いの者が玄関のベルを鳴らした。やがて召使が、カレーニンからの分厚い封筒を持ってきた。「使いの者に返事を託すようにとのことです」召使はそう伝えた。アンナは震える手で封を切った。帯封をされた札束が封筒から落ちた。読み終わったとき、彼女は寒気を覚え、予想もしなかったほどの恐るべき不幸が自分の身に降りかかってきたのを感じた。世間ではあの人のことを、信心深くて、人徳があって、高潔で、賢明な人だって言うけれど、あの人がこの八年間、わたしの生活を押さえつけ、私を窒息させようとしてきたことを、あの人が事あるごとにわたしを侮辱して、そういう自分に満足していたことを、誰も知らないんだ。「われわれの生活は従来どおりに進行すべきだ」彼女は手紙の一節を思い出した。あの人には、わたしを苦しめ続けることが必要なんだ。「断ち切ってやる、断ち切ってやるわ!」。アンナは、夫に宛てて手紙を書こうと机に向かったが、胸全体を震わせながら、まるで子供のように泣きだした。「アレクセイ(ヴロンスキー)に会わなければ。わたしがすべきことを教えてくれることができるのは、彼しかいないわ。ベッツィのところへ行こう。あそこで彼に会えるかもしれない」。「使いの者がお返事を待っています」召使が告げた。アンナは、「お手紙拝受しました。A」とだけ書いて、召使に手紙を託した。そして、ベッツィのところへ出かけて行った。

 

17章

 

ベッツィがアンナを招待したクロケーの試合のメンバーは、二人の貴婦人とその崇拝者たちとなる予定だった。この女性たちは最上流のサークルに属していたが、そのサークルはアンナとは敵対関係にあった。だから来るのを渋ったのであるが、今はヴロンスキーに会えるだろうという期待から訪問することにしたのだった。アンナがベッツィの家に着いたのは、他の客たちよりも早かった。彼女が家に入ろうとすると、ヴロンスキーの従僕が来合わせた。コートを脱いでいる彼女の耳に、「伯爵から公爵夫人へのお手紙をお届けにあがりました」と言って手紙を渡すのが聞こえた。ベッツィは手紙を受け取ると、それを読み、「ヴロンスキーさんがわたしたちを裏切りましたわ。来られないという手紙をよこしましたの」と言った。ベッツィはヴロンスキーに返事を書き、「ディナーにいらっしゃるように書いておきました。お客のうち一人のご婦人が、ディナーの席でお相手の男性なしで取り残されるって。いかが、これなら確かでしょう? あ、すみませんけれど、それに封をして、送っていただけないかしら」と言って、出て行った。アンナは手紙の中身は読まずに、ただこう書き添えた。「あなたにお目にかからなくてはなりません。ヴレーデさんのお庭にいらしてください。六時にそこにまいります」。

 

18章

 

足音がして、客たちが入ってきた。サフォー・シュトルツと、ワーシカ青年だった。サフォー・シュトルツは黒い目をしたブロンド女性で、この新しい有名人女性と初めて会ったアンナは、その美貌と、化粧や服の極端なセンスと、立ち居振舞いの大胆さに驚いてしまった。やがてカルーシュスキー公爵とリーザ・メルカーロヴァがストレーモフに伴われて到着した。リーザ・メルカーロヴァは痩せたブリュネットで、東洋風の物憂げな顔立ちに、皆の言葉どおり、えもいえぬ魅了的な目をしていた。サフォーがドライですっきりしているのに対し、リーザはソフトでなよなよした感じである。アンナの趣味からすれば、リーザのほうがはるかに魅力的だった。アンナを見たとたん、彼女は満面に嬉しそうな笑みを浮かべ、「ああ、お目にかかれてなんて嬉しいんでしょう!」と言った。毎日退屈しているというリーザは、アンナに、「あなたは退屈しないために、どんな工夫をしていらっしゃるの?」と訊いてきた。「べつに何もしておりませんわ」とアンナが答えると、ストレーモフが、「そう、それこそ何よりの秘訣ですね」と話に口を挟んだ。「退屈しないためには、退屈するなんてことを考えないことです。不眠症にならないためには、眠れない心配なんかしないに限るというのと同じでね。カレーニン夫人がおっしゃったのも、まさにそのことですよ」。アンナが帰ろうとしているのを知ったリーザが引きとめにかかり、アンナ自身も「いっそここに残ってつらい打ち明け話の瞬間をまだ先延ばしにしてしまおうか」と、しばし心が揺れたが、もしこのまま何の決断もしなければ、わが家で一人になったとき何が待ちうけているかを思い浮かべ、彼女は暇乞いをして立ち去ったのだった。

 

19章

 

一見浮ついた社交生活に浸っているように見えながら、ヴロンスキーはだらしないことが大嫌いな人間だった。彼は常に身辺を整理しておく目的で、年に5度ほど自分の財政状況を点検することにしていた。競馬のあった翌朝、ヴロンスキーは机の上に金と請求書と手紙の類を広げて、作業にとりかかった。自分の借金を集計すると、総額は1万7000と数百ルーブリとわかった。現金と預金通帳の残高を合わせると、手持ちの金は1800ルーブリで、しかも年が明けるまで金の入ってくる当てはなかった。今すぐにでも返さなくてはならない4000ルーブリを含め、最低でも当面6000ルーブリの金が必要なのに、手元には1800ルーブリしかないのだった。父の残した巨大な領地は、それだけで年額10万から20万の収益を生むが、兄が大きな借金を抱えた身で結婚した際に、彼は自分の取り分を年2万5000だけと限ったうえで、父の所有地からの収入を全部兄に譲ってしまっていた。母からも毎年2万ほど与えてもらっていたが、女性問題とモスクワから勝手に帰ってしまった件とで息子に腹を立て、金を送るのをやめてしまった。なので、これまで年収4万5000の暮らしに慣れ切っていたヴロンスキーは、今年はわずか2万5000で暮らさなければならず、窮地に陥っているというわけである。ヴロンスキーは金貸しから1万ルーブリ借り、競走馬を売ることを決意し、アンナに手紙を3通取り出し、もう一度読んでから火をつけて燃やし、昨日の彼女との会話を思い出して、深く考え込んだ。

 

20章

 

ヴロンスキーが幸せな人生を楽しんできた一番の理由は、して良いことと悪いことをすべて疑う余地なく決めてくれる、一種の規則集があったことだった。それを守っている限り、ヴロンスキーは心安らかに、昂然と頭を高く揚げていることができたのだった。ただしごく最近では、アンナとの関係のせいで、ヴロンスキーは自分の規則集が必ずしもすべての場合に当てはまらないのを感じだしていたし、先々に予想される難問や迷いに目を向けると、もはや行動の指針が見出せない始末だったのである。昨日になってはじめてアンナは妊娠していることを彼に打ち明けた。そしてその知らせも、彼女が彼にかける期待も、彼がこれまで従ってきた規則集には書かれていないような問題の決断をせまっていると感じられたのである。「夫と別れろということは、つまりおれと一緒になってくれという意味になる。おれにはその用意があるのだろうか? 金もないのに、どうして彼女と駆け落ちしようというのか? おれには勤めがあるのに、彼女を連れてどこへ行けるというのだ?」。彼は幼少の頃からずと、功名心という欲を心の中にはぐくんできたが、2年前にとんでもない誤りを犯してしまっていた。独立不羈の心前を見せつけてやれば昇進も早まるだろうと期待して、自分に提供された地位を断ってしまったのだ。しかしどうやらこれは大胆すぎたようで、彼の昇進は沙汰止みのままとなってしまった。それにひきかえ、子供の頃からの友人で、ずっとライバル関係だったセルプホフスコイという男は、二階級特進し、立派な勲章を拝受していた。ヴロンスキーと同い年でありながら、相手はもはや将官であり、国家の運営に影響を与えうるような任務を与えられようとしている。一方のヴロンスキーは、魅力的な女性を愛人にしているとはいえ、一介の騎兵大尉に過ぎない。「あいつの昇進ぶりを見ていると、ただ時を待ちさえすれば、自分のような男はかなり早く出世する可能性がある。でももし退役してしまえば、もはや元には戻れない。このまま軍務についていたって、何も損をすることはないじゃないか。彼女自身だって、今の境遇を変えたくはないと言っていたんだ。そうさ、おれには彼女の愛があるのだから、セルプホフスコイを羨むいわれはないんだ」

 

21章

 

「やあ、きみを迎えに来たんだよ」部屋の外で出くわしたペトリツキーが言った。「みんなきみを待ってるぞ」。さっきから聞こえていた低音管楽器の馴染み深いポルカやワルツの調べに耳を澄ませながら、ヴロンスキーは言った。「何のお祝いだい?」「セルプホフスコイがやってきたんだよ」。ヴロンスキーがセルプホフスコイを見るのは3年ぶりだった。「きみの出世はうれしかったが、でもちっとも驚きはしなかったよ。きみならもっと上にいくと思っていたからね」セルプホフスコイはにっこり笑って言った。「ぼくのほうは反対に、正直な話、これほどのことは期待していなかったんだ。だが嬉しいことは大いに嬉しいよ。ぼくは功名心の強い男で、それが弱点さ。だから、権力に近づけば近づくほど、ぼくは満足なんだよ」「きみはそうかもしれないが、みんながそういう気持ちでいるとは限らないぞ。現にこのぼくも同じようなことを考えたことがあるけれど、今ではそれだけのために生きる甲斐はないと思うね」「そこだ、そこだよ! きみが昇進を辞退したっていう……もちろん、さすがにきみだと感心したよ。しかし、なんにでも作法というものがあるじゃないか。つまり、きみの振舞い自体は正しかったんだが、そのやり方は間違っていたと思うんだ。そこで一つだけ提案するが、ぼくに白紙委任状をくれないか。ぼくに白紙委任状を渡して、隊を出たまえ。そしたら目立たないように、きみを引っ張ってみせるから」そこへ従僕がヴロンスキーに手紙を届けにきた。「トヴェルスカヤ公爵夫人の使いが持ってまいりました」ヴロンスキーは封を開け、さっと顔を赤らめた。「ぼくは頭痛がするから家に帰る」彼はセルプホフスコイに言った。「そう、じゃあこれで。白紙委任状の件はいいな?」「その件は後にしよう。ペテルブルグで会えるだろうから」

 

22章

 

すでに5時を過ぎていたので、指定された時間に間に合わせ、しかも皆にしられている自分の馬を遣わずにすませるという算段から、ヴロンスキーはヤーシュヴィンの使っている辻馬車に乗り込んで、全速力で行くように命じた。街道から折れる並木の手前でストップを命じ、馬車から飛び下りると、彼は別荘へと続く並木道を歩きだした。ふと右手に目をやったとき、アンナの姿が目に入った。そばに寄ると、アンナはしっかりと彼の片手を握った。「相談があるの。昨日はあなたには黙っていたけれど、夫と帰宅する途中で、わたしあの人にすべて打ち明けてしまったの……わたしはあなたの妻でいることはできないと言って、そうして……すべてを言ってしまった」「そう、そうだ、それでよかったんだよ、千倍もね! さぞかしつらかったろう、ぼくにはわかる」彼は言った。だが彼女は彼の言葉には耳を傾けず、ただ表情からその考えを読み取ろうとしていた。アンナは夫の手紙を受け取ってから、を彼女の胸の奥で、すべてはこれまでと変わりなく続くだろうということを自覚していた。あ彼に会うことで二人の状況が一変し、自分が救われるかもしれないと、そんな願いをかけていたのだ。もしも話を聞いた彼が、一瞬のためらいもなく彼女に向かって「何もかも捨ててぼくと駆け落ちしよう!」と言ってくれていたら、彼女は息子を捨てて駆け落ちしただろう。しかし自分の言葉が彼にもたらした作用は、期待はずれのものだった。彼はただ、まるで何かに腹を立てたような表情をみせただけだったのだ。アンナは手紙を取り出し、「夫がこんなことを書いてよこしたの。読んで」と言って彼に渡した。手紙を読み終わった彼はアンナに視線を戻したが、そのまなざしには決意の色はなかった。彼女は自分の最後の望みが裏切られたのを理解した。「いったい離婚は無理なの?」ヴロンスキーは弱々しい声で言った。「息子さんを連れてご主人と別れることはできないの?」「そうね。でもそれは全部あの人しだい。わたしはもうあの人のところへ行かなければならないわ」アンナはそっけなく言った。何もかも元のままだという彼女の予感が的中したのだ。アンナはヴロンスキーに別れを告げ、待たせていた馬車に乗って家路についた。

 

23章

 

月曜日には例の6月2日委員会の定例会議があった。定例報告が終わると、カレーニンは持ち前の穏やかながらよく通る声で、異族人の待遇問題について若干の所見を述べたいと表明した。会場の耳目が彼に集中した。演説が根本的で本質的な法規の問題に触れたとき、敵が立ち上がって反論を開始した。同じく委員会のメンバーで同じく痛いところを突かれたストレーモフも自己弁護を始める、というわけで、波乱の委員会となったのだった。しかしカレーニンが勝利を収め、彼の提案が採択された。次の火曜日の朝、昨日の勝利を思い起こして満足感に浸っていたカレーニンは、今日が火曜日で、アンナに帰宅を約束させていた日だということをすっかり忘れていた。だから召使が彼女の到着を告げたときには、思わずびっくりして不快なショックを受けたほどだった。「わたしはあなたの妻でいることはできません。だってわたしは……」アンナがそう言いかけると、夫は意地悪な冷たい笑い声を上げた。「夫に向かって直接自分の不実を表明して、いささかも悪びれない人間が、夫に対する妻の務めを果たすという行為を、どうしてそんなにも間違ったこととみなすのか」「アレクセイ・アレクサンドロヴィチ! あなたはわたしに何を要求していらっしゃるの?」「わたしが要求しているのは、ここでわたしがあの男と顔を合わせるような羽目にならないこと、そしてきみ自身が、世間からも召使たちからも後ろ指を差されるような振舞いをしないことだ……つまりあの男と会わないということだ。別に難しい要求ではないだろう。そうしさえすれば、きみは今後も貞淑な妻の権利を享受できるのだから。その義務を果たさないままにね。わたしがきみに言っておきたかったことは、これですべてだ。さてもう出かけなくては。食事は外ですませる」彼は立ち上がると。ドア口に向かった。アンナも同じく立ち上がった。彼は黙ったまま一礼して、妻を通した。

 

71歳の私は、

17歳の夏休みを思い出しながら、

アンナ・カレーニナ』を読んでいる。

これが実に楽しいし、面白い。

夏に世界文学は似合う。

71歳の夏に、これほど瑞々しい日々を過ごせるとは……

読書を趣味にしてきて本当に良かった。

 

第3部の13章から23章までは、

アンナ、ヴロンスキー、カレーニンの、

それぞれの立場から、それぞれの事情に即して語られる。

心理描写が密なので、読む方はハラハラさせられるし、

興味をかきたてられる。

アンナとカレーニンの間はもちろんのこと、

アンナとヴロンスキーの間にも、

気持ちに微妙なズレが生じてくる。

ここまでのところ、トルストイは誰かを贔屓することなく、

それぞれを平等に詳細に描いていく。

読書の歓びを最高に感じさせてくれる傑作。

北アルプスへの夏山遠征を終えた今、

読書の時間をもっと増やしていきたと思っている。

 




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