
『カラマーゾフの兄弟』読了計画の第29回(最終回)は、
エピローグの、

第1節「ミーチャの脱出計画」
第2節「一瞬、嘘が真実になった」
第3節「イリューシャの葬儀。石のそばの挨拶」
を読みたいと思う。

第1節「ミーチャの脱出計画」

【要約】
ミーチャの公判が終わって5日目の早朝、アリョーシャはカテリーナの家にやってきて、ドミートリーを見舞ってほしいと願い入れる。カテリーナは、公判後に意識を失った病気のイワンを自宅に移し、二人の医師に治療させていた。自分の病気を察知していたイワンは、公判の前日に、ドミートリーの脱出計画のデータが入った封筒と、1万ルーブルほどのお金をカテリーナに託していた。イワンの決心を知ったとき、カテリーナは本当に愛しているのはイワンでドミートリーではないということを伝えたいあまりに、脱出計画に喜ぶことができずに腹を立ててしまったという。今はイワンにも見捨てられそうな不安を抱いている。さらにドミートリーへの憎悪は、グルーシェニカに対する憎しみからくるものであると主張する。そして、アリョーシャに、ドミートリーを(脱出計画に同意するよう)説得してほしいと言った。一方、アリョーシャは、ドミートリーがカテリーナを傷つけてきたことにショックを感じているため、会って目を合わせるだけでもいいから訪ねてほしいと懇願する。「兄はずっとあなたに会いたがっているんです。でも仲直りするためじゃない。あの日から、兄にはいろいろなことが起きてましてね。あなたに対して、数えきれないぐらい罪を犯していることを自覚しているんです。あなたに許しを求めようってわけじゃない。『おれなんて許されるわけがない』と自分で言ってるくらいですから。ただ、敷居のところで姿を見せてくれるだけでいいんです」。アリョーシャはこう付け加えた。「あなたが訪ねるのは、無実の罪で身を滅ぼした男なんですから」と。
第2節「一瞬、嘘が真実になった」

【要約】
判決から2日後、ミーチャは神経性の熱病にかかり、町の病院の囚人病棟に送り込まれた。この数日、ミーチャを見舞いに訪ねてきたのは、アリョーシャとグルーシェニカの二人だけだった。アリョーシャは何も言わずに、兄のベッドに並んで腰を掛けた。「兄さん」とアリョーシャは声をかけた。「あの人、来ますよ。でもいつかはわかりません。もしかすると今日かもしれないし、2、3日中かもしれません。でも来ます、かならず来ます、これは確実なことです」。アリョーシャは、脱走計画を検討しても罪ではなく、自分は非難しないと話した。ミーチャは、「おれは脱走する。これは、おまえに言われずとも決まったことだ。ミーチャ・カラマーゾフが、はたして脱走せずにいられるか? そのかわり自分で自分を裁き、逃げた先で死ぬまで罪の許しをもとめて祈るんだ」と言い、逃亡後、「グルーシェニカとアメリカに行き、アメリカ人になってロシアに戻ってくる」という自分の考えを語った。アリョーシャはこれを承諾した。そこへカテリーナが姿を現した。ミーチャは、はじかれたように立ち上がり、カテリーナの方へ両手を差し出した。それを見て、カテリーナは勢いよく彼に駆け寄り、ミーチャの両手をつかみ、腕づくでベッドに座らせ、自分もその隣に腰を下ろした。「愛は終わったのよ! でも終わったことが、わたしには痛いくらい大事なの。あなたもいま、別の人を愛しているし、わたしも別の人を愛している、でも、やっぱり、あなたのことを永遠に愛し続けるし、あなたもそうよ。そのこと、知ってました? ねえ、あたしを愛してね、死ぬまでずっと愛してね!」。ミーチャも、「愛し続けるよ」と言い、「おれが殺したって信じているのかい?」と訊いた。カテリーナは、「一度も信じたことがなかった」と言った後、証言をおこなったときも信じてはいなかったけれど「あなたが憎らしくて、ふいにそう信じ込ませてしまったの。わたしがここに来たのは、自分を罰するためなの!」と語った。そこへグルーシェニカが現れた。カテリーナが、「わたしを許してください!」と囁くような小声で言うと、グルーシェニカは、「ふざけないで、どうして許せるっていうんだい!」と毒々しい声で言った。ミーチャは「許さない」グルーシェニカを非難し、そんなグルーシェニカをアリョーシャは擁護した。アリョーシャは去ったカテリーナを追いかけるが、カテリーナは、「あの女の前じゃ自分は罰せない!」と言った。
第3節「イリューシャの葬儀。石のそばの挨拶」

【要約】
哀れな少年イリューシャ(二等大尉スネギリョフの息子)は、ミーチャの判決が宣告された2日後にこの世を去った。アリョーシャが家の門のそばまで来ると、少年たちが歓呼して彼を出迎えた。少年たちの先頭にコーリャが立っていた。コーリャは、アリョーシャに、「あなたのお兄さんは無実なんですか、それとも、ほんとうに有罪なんですか?」と訊いた。アリョーシャは、「殺したのは下男で、兄に罪はありません」と答えた。コーリャは、「それじゃ、お兄さんは真実のために、無実の犠牲者として死ぬわけです! ぼくもいつかは、自分の命を真実のために捧げることができたら……人類全体のために死ねたら……って願ってますけどね」と言った。アリョーシャは部屋に入った。遺体にはほとんど異臭がなかった。リーザやカテリーナから花が届けられていた。棺を運び出す時間がきても父親が棺を放さないのを見て、少年たちは棺をぐるりと囲み、持ち上げ始めた。父親のスネギリョフは「教会の墓地になど息子を埋めたくない、自分たちの石のそばに埋めたい」と言って駄々をこねた。教会までは300歩ほどの道のりだった。墓は礼拝堂のすぐそばの柵の中にあって、高価なものだった。墓代を払ったのはカテリーナだった。葬儀では『使徒行伝』が読み上げられた。埋葬後、父親スネギリョフは号泣したり、墓にパンをまいてみたり(墓にスズメがいつも来てくれるようにパンをまいてくれとイリューシャが生前頼んでいた)、家にいる母親に花を持って行こうとしたり、悲しみで取り乱していた。アリョーシャと少年たちは、道すがらイリューシャの石を見つけた。イリューシャ自身が「あの石の下に葬って」と言っていた石である。アリョーシャは、父親のために闘ったイリューシャの記憶に心動かされ、これから別々の道を行くみんなに向かって別れの言葉を言う。父親思いだったイリューシャにかけて、アリョーシャは、人間は何らかの子ども時代に培われた「神聖な」思い出に支えられていることを話した。人間はときに善良で立派なものをあざ笑う浅はかさがあるが、みんなでイリューシャを弔ったことを心にとどめ、善良で、正直で、お互いを決して忘れないことをここで誓おうと話した。「この素直なすばらしい気持ちでぼくらを結びつけてくれたのは、イリューシャです。彼のことを永遠に憶えておきましょう!」とアリョーシャが言うと、「永遠に憶えておきましょう!」と少年たちも声を合わせた。「永遠に、死ぬまで、こうして手をとりあって生きていきましょう! カラマーゾフ万歳!」コーリャがもういちど感激して叫ぶと、少年たちはみな、ふたたびその叫びに声を合わせた。
とうとう、『カラマーゾフの兄弟』を読み終えた。
『カラマーゾフの兄弟』読了計画の第1回を書いたのが、
今年(2025年)の3月13日なので、
2ヶ月半ほどで読み終えたことになる。
要約しながら読み進めたので、
要約という作業をしなかったら、
1ヶ月ほどで読み終えられたかもしれない。
各節ごとに、一度読んだ後、
もう一度読みながら要約していったので、
少なくとも各節二度は読んでいる。
解りにくい箇所は何度も読んだので、
本作への理解度は(極私的に)格段に高まったように思う。

『カラマーゾフの兄弟』を読み終えた感想は、
〈こんなにも面白い小説だったのか!〉
ということ。
若い頃は、とにかく速く読み、
特に高校、大学時代は、一日一冊を目標に掲げ、
読破することのみに意味を見出だしていたので、
読了したことで満足し、
一冊一冊を理解しながら読んでいたとは言い難い。
70歳になって、(2回目の10代ということで)
1回目の10代のときよりも時間をかけて、
じっくり読むことができているということもあって、
今の方が、楽しく充実した読書ができていると思う。
世界文学の最高峰と言われている『カラマーゾフの兄弟』を、
こうして読み終えられたのは、やはり、
どんな日でも、毎日、読み続けたことが大きかったように思う。
酒を呑んだ日も、疲れている日も、嫌なことがあった日も、
一日も欠かさず読み続けた。
歩き旅と同じで、最高峰へも一歩一歩なのだ。
歩き続けていれば(途中で止めない限り)いつかは到着する。
そんな思いを強くした、今回の読書体験であった。
