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『カラマーゾフの兄弟』(ドストエフスキー)(25) ……第4部、第11編、第6~10節……

 

カラマーゾフの兄弟』読了計画の第25回は、

第4部、第11編「兄イワン」の、

 

第6節「スメルジャコフとの最初の面会」

第7節「二度目のスメルジャコフ訪問」

第8節「スメルジャコフとの、三度めの、最後の対面」

第9節「悪魔。イワンの悪夢」

第10節「やつがそう言うんだよ!」

を読みたいと思う。

 

 

第4部、第11編、第6節「スメルジャコフとの最初の面会」

 

【要約】

イワンがモスクワから戻ったのは、父親の死からすでに5日後のことだった。アリョーシャがイワンのモスクワの住所を正確に知らず、連絡が遅れたのが原因だった。イワンはまずアリョーシャに会ったのだが、アリョーシャはミーチャ(ドミートリー)を疑っておらず、真犯人としてスメルジャコフを名指ししていることにひどく驚かされた。イワンはミーチャにも面会に行くが、その面会は、彼を有罪とする確信を弱めるどころか、むしろ強めるものとなった。ミーチャは不安にさいなまれており、話は脈絡を欠き、スメルジャコフを非難するものの、話し方は支離滅裂で、何ひとつ筋の通った説明ができなかった。ミーチャとの面会を終えると、イワンは(町の病院に入っていた)スメルジャコフに会いに行った。あの事件があった日、スメルジャコフは(癲癇の)仮病を使っていたのではないか……という疑いを抱いていたイワンは、医師からその考えを否定され、実際に会ったスメルジャコフも重篤な病状にあったのだが、それでも、癲癇の発作の予言をしていて、その予言通りに発作をおこしたスメルジャコフへの疑いは晴れなかった。あの日の前日、門のそばでイワンと話した内容は医師や予審判事に詳しく話したというスメルジャコフに対し、イワンは、「どうしておまえはあのとき、このおれをチェルマシニャーに行かせようとした?」と訊いた。スメルジャコフは、「お屋敷に災難が起こりそうな予感がし、モスクワへより近いチェルマシニャーを勧めた」と答え、そのことにイワンも同意していたものと思っていたと語った。その後、数日間にわたってミーチャを苦しくさせた証拠をひとつひとつ徹底的に調べ尽くしたが、ミーチャの有罪を裏付けるものばかりで、イワン自身もミーチャの有罪を確信するに至った。その後イワンは、カテリーナに対する燃えるような狂おしい情熱にのめり込んでしまい、一時的にスメルジャコフのことをほとんど忘れていた。ところが最初の訪問から二週間ほど経ったあたりで、スメルジャコフに対する疑念が再び生じ、スメルジャコフのところへ出かけて行ったのである。

 

 

第4部、第11編、第7節「二度目のスメルジャコフ訪問」

 

【要約】

その頃、スメルジャコフはすでに病院を出て、マリア・コンドラーチエヴナと母親が住む家に移り住んでいた。スメルジャコフの顔色を見て、イワンは、彼が病いからすっかり立ち直っているのを見てとった。鼻めがねをし、憎悪をにじませた、無愛想で傲慢な目つきでイワンを見たスメルジャコフにイラつき、イワンはすさまじい剣幕で言った。「いいか、あのときおまえは、なにかひじょうにばかげたことを口走ったな。おれが病院から帰ろうとしたときだ。つまり、おまえが癲癇のものまねの達人ってことを、おれがだまっていれば、おまえも、あの門のそばでおれたちがしゃべったいろんな話を予審判事に証言しない、とか言ったろ。で、その『いろんな話』っていったい何なんだ? あのときおまえはどういう意味で言ったんだ? おれを脅す気だったのか? おれがおまえと何か裏で手を組んでいるってことか、おれがおまえを怖がってるってことか?」。するとスメルジャコフは、「ぼくがあのとき申し上げようとしましたのは、じつのお父さまが殺されることを前もって知っていながら、あなたが見殺しになさったということでして」とイワンの顔を見すえて言った。「『ほかのいろんな話』って何なんだ?」とイワンが言ったのに対し、スメルジャコフは、「あのとき、あなたはたぶん、ご自身でもたいそうお父上の死を願っていた、ということでして」と言った。イワンは急に立ち上がり、こぶしで思い切りスメルジャコフの肩を殴りつけた。「おまえはあのとき、このおれがドミートリーとぐるで、親父を殺そうとしていると考えたわけだな?」というイワンの問いに、スメルジャコフは、「お父上が早く殺されることを、あなたが望んでいらっしゃるのか、いらっしゃらないのか、試してみようとしたんでございます」と言った。そして、イワンが父親の死を望んでいたであろう理由として「遺産の件がある」とスメルジャコフは語った。父親が亡くなれば、カラマーゾフの三兄弟には、それぞれ4万ルーブル弱のお金が入ってくる。しかし、父フョードルがグルーシェニカと結婚すれば(彼女は全財産を自分名義に書き換えるだろうから)、三人の兄弟にはまったくお金は入らない。もしドミートリーが人殺しをすれば、ドミートリーは官位、財産、貴族として権利まで全部奪われて流刑地送りになるので、父の死後は、ドミートリーの分はイワンとアリョーシャの山分けとなり、それぞれに6万ルーブルのお金が入ることになる。父親が殺されるかもしれないという予感を持ちながら旅立ったということは、父親を殺してもいいと言ったも同然のことであるとスメルジャコフは決めつけた。そして、「あなたはお父上の命を守るため、お残りになるべきだったわけでございますから……そうされなかった以上、ぼくとしては、あのように結論するのが当然じゃございませんか?」と言った。イワンは怒りで全身が震え、足ばやに部屋を出た。イワンはカテリーナの家に向かい、スメルジャコフとのやりとりの一部始終を彼女に伝えた。カテリーナは手箱から一枚の紙を取り出し、イワンの目の前に置いた。その紙切れは、イワンがのちに、親父を殺したのは兄ドミートリーだという「数学的に証拠立てる」ものとしてアリョーシャに話してきかせた、例の文書だった。この文書を読み終えたイワンは、犯人はドミートリーであることを確信する。そして、イワンはドミートリーのところへ行き、脱走の計画を提案する。彼はドミートリーの脱走をセットするため、自分の取り分から3万ルーブルを供出することに決めた。イワンは、自分が脱走を助けたいと思っているのは、単にこの3万ルーブルの金を犠牲にして傷を癒すばかりでなく、他にも理由があるような気がしていた。《心のなかでは、おれもまた同じような人殺しだからじゃないのか?》彼はそう自問していた。

 

 

第4部、第11編、第8節「スメルジャコフとの、三度めの、最後の対面」

 

【要約】

スメルジャコフはいつものガウンを着たまま、そのソファにすわっていた。「ここに、カテリーナが来たんだと?」とイワンが言うと、スメルジャコフは、「ええ、お見えになりましたよ、でも、あなたにとってはどうでもいいことです。お帰りになってください」と答えた。「いつ来た、言え!」としつこく訊いてくるイワンに、スメルジャコフは、「何をそう、心配ばかりなさってらっしゃるんです? 明日から裁判が始まるからですか? いいかげん、ご安心なさい! 何もご心配にはおよびませんから」と軽蔑するように言った。そして、「何も心配なさることはありません。あなたの不利になることは、何も申しません。証拠がありませんしね。おや、手がふるえてるじゃないですか。どうして指をぴくぴくさせてるんです? 家にお帰りなさい、殺したのは、あなたじゃありません」と続けた。イワンはぎくりとし、アリョーシャが同じことを(「殺したのは、あなたじゃありません」と)言ったことを思いだした。イワンがスメルジャコフの肩をつかみ、「さあ、ぜんぶ吐け、この毒虫、ぜんぶ吐くんだよ!」と言うと、スメルジャコフは、「それなら、申しますが、殺したのは、ほら、そこにいる、あなたですよ。ぼく一人に罪をおっかぶせる気なんでしょうが、殺したのは、あなたですよ、あなたが主犯なんです。ぼくは、ただ、あなたの手足を務めただけにすぎません。あれを実行したのも、あなたの言葉にしたがったまでのことなんです」と答えた。イワンは思わずぞっとなり、「じゃあ、ほんとうにお前が殺したのか?」と訊いた。スメルジャコフは、「それじゃ、ほんとうに、何もご存じなかったんで?」と、にやりと顔をゆがめてつぶやいた。「おまえが夢なんじゃないか、おまえが幻じゃないか?」というイワンに、スメルジャコフは、「ぼくたち二人のほかに、ここには幻なんてものはおりません。それともう一人、第三の男を除いてね」と言い、「その第三の男とは、神さまのことでございますよ」と言い添えた。そして、靴下の中から3000ルーブルを取り出し、「あなたと二人で殺した。ドミートリーは無実です」と告白し、犯行時の癲癇は芝居で、自分だけが犯人ということにならないように用意周到に仕組んだ、イワンによる父親殺しの一部始終を話した。イワンが、「おれはおまえが考えているほど罪があるわけじゃないし、もしかしたら、まるきり、おまえをそそのかしてなんかいないかもしれないんだ。おれは自分で自分の罪をあかしてみせるさ、明日、法廷でな」と言うと、スメルジャコフは、「けっしてそういうことにはなりませんし、あなたは出廷なさいませんです」と断固たる調子で言った。そして、「このお金、持って行ってください」と言うと、イワンは、「もちろん持って行くさ!」と受け取った。帰ろうとするイワンに、スメルジャコフが「イワンさま!」とふいに声をかけ、「なんだい?」と振り返ったイワンに、「さようなら!」と言い、別れを告げた。

 

 

第4部、第11編、第9節「悪魔。イワンの悪夢」

 

【要約】

この夜のイワンは、まさしく「幻覚症」が出る直前の状態にあった。自分が体調を崩しているのを彼は自覚していたが、「自分に対してわが身のあかし」を立てなくてはならないいま、こうして病気になったりすることが、嫌悪をもよおすぐらいいやでたまらなかった。彼は一度、カテリーナがモスクワから呼び寄せた医師のもとを訪ねたことがあり、脳に変調をきたしているという診断を下された。だが、医師の忠告にしたがわず、横になって安静にすることも怠った。こうしてイワンは自分が熱に浮かされているのをなかば自覚しながら腰をおろし、向かいの壁ぎわにあるソファの上の、得体のしれない何かをしきりに見つめていた。そこでふと、だれかが腰をおろしているのに気づいた。どうやってここに入りこんで来たのかはわからない。すでに年も若くない(50に手が届こうという)見知らぬロシア紳士だった。それこそはイワンの分身「悪魔」(作者はそう名づけている)だった。イワンがその「悪魔」と討論しているとき、とつぜん庭先から何度もノックする音が聞こえた。アリョーシャだった。「アリョーシャ、ここには来るなと言ったろう! 用事はなんだ、ひとことで言え、ひとことでだ、いいな?」イワンは荒々しい口調で弟に叫んだ。「1時間前、スメルジャコフが首を吊りました」庭先からアリョーシャは答えた。

 

 

第4部、第11編、第10節「やつがそう言うんだよ!」

 

【要約】

部屋へ入るなり、アリョーシャは、「1時間あまり前にマリアがアパートに駆け込んできて、スメルジャコフが自殺したことを告げた」とイワンに告げた。アリョーシャが部屋に駆けつけると、スメルジャコフはまだぶら下がったままの状態でいて、テーブルには、「だれにも罪を着せないため、自分の意志と希望によってみずからを滅ぼす」という書置きがあった。アリョーシャは、まっすぐ警察署長宅におもむき、そこで事件の一部始終について報告した。「そこからまっすぐ兄さんのところに来たんです」と言葉を結んだ。イワンは、「おれは、あいつが首を吊ったことは、おれにもわかっていたんだ」と言い、「やつ(悪魔)がおれに告げたんだ」と付け加えた。その悪魔は自分自身で、自分が持っている全部の下劣な部分、軽蔑すべき部分であるとアリョーシャに話した。イワンはやがて、少しずつ意識を失いはじめていった。たえずひっきりなしにしゃべり続けていたものの、その話は脈絡を欠き、ろれつも怪しくなり、ふいにその場でよろめいた。アリョーシャがなんとか体を支えてやり、ベッドへ運び、寝かしつけた。アリョーシャは、ミーチャとイワンのことを神に祈った。イワンの病気の正体がわかってきた。《誇りたかい決心から生まれた苦しみなんだ、ああ、なんて深い良心の呵責だろう!》 彼が信じようとしなかった神と真実が、いまなお屈服を望まない彼の心を征服しようとしていたのだ。《スメルジャコフが死んでしまったからには、もうだれもイワンの供述を信じない、それでも兄は出かけて行って証言する!》アリョーシャは静かに微笑んだ。《神が勝つんだ!》ふと彼は思った。《兄は、真実の光のなかに立ちあがれるのか、それとも、自分の信じないものに仕えた恨みを、自分とすべての人々にぶつけ、憎しみのなかで滅びるのか》アリョーシャは苦しい思いでそうつぶやくと、ふたたびイワンのために祈りを唱えた。

 

すごい展開に唖然となった。

以前、ここで、

ドストエフスキーの作品の読まれ方は、日本とヨーロッパでは異なっており、基本的にヨーロッパでは、この作品(『カラマーゾフの兄弟』)は、推理小説として親しまれているとか」

と書いたのだが、この第4部はまさにミステリー小説そのものだ。

意外な展開と、謎が解かれていく面白さに、頁をめくる手が止まらない。

アリョーシャは、イワンに、「父を殺したのはあなたじゃない」と繰り返し言う。

そして、最後には、「ぼくが神さまに遣わされたのは、それをあなたに告げるためなんです」とまで言う。

第4部、第11編、第10節まで読み終えると、

アリョーシャは、このときすでに事実の全貌を見通していることになる。

イワンのなかで成長する「狂気」の正体は、

未必の故意」という、当時すでに刑法上の観念として成立していた罪への意識だった。

ドストエフスキーの研究者の多くが、イワンの法的責任を否定しているそうだが、

イワンは理性を失うほどに苦しみ抜く。

 

「神は、罰したいと思うものからまず理性を奪う」

 

という(古代ギリシャに発し、ロシアの民間にも根をおろした)諺があるそうだが、

イワンの苦しみは、神の裁きなのかもしれない……と思った。

 

いよいよ、これから、裁判が始まる。

 

 




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