
『カラマーゾフの兄弟』読了計画の第24回は、
第4部、第11編「兄イワン」の、

第1節「グルーシェニカの家で」
第2節「悪い足」
第3節「小悪魔」
第4節「賛歌と秘密」
第5節「あんたじゃない、あなたじゃない!」
を読みたいと思う。

第4部、第11編、第1節「グルーシェニカの家で」

【要約】
ミーチャ(ドミートリー)が逮捕されて2ヶ月、アリョーシャは、モローゾフの家に住むグルーシェニカの所へ何度も通っていた。ミーチャが逮捕されてすぐにグルーシェニカは重病に倒れ、5週間近くベッドに臥したままだったのだ。グルーシェニカの傍にはいつも(宿無し老人の)マクシーモフがいて、彼女の家に住み着き、彼女の傍を離れようとしなかった。彼女の心配の対象はカテリーナだった。カテリーナは拘留中のミーチャを一度も訪ねたことはなかったにもかかわらず、恐ろしいほどカテリーナに嫉妬していたのだ。グルーシェニカは(監獄の)ミーチャの所へ行く度に喧嘩になると言い、ミーチャも嫉妬深くなっており、特に(元カレの)ポーランド人のムシャロヴィチへのやきもちがひどくなっているという。そのムシャロヴィチは、すっかり落ちぶれて、グルーシェニカにお金の無心を頼んでくるようになっていた。グルーシェニカはムシャロヴィッチに愛想を尽かしてはいたが、毎日少しずつ金を届けてやっていた。そのことに対してミーチャはやきもちを焼いていたのである。アリョーシャとイワンとカテリーナの三人でお金を出し合ってミーチャに弁護士をつけるも、事態は好転せず、ミーチャにとって不利な証言が増える一方であった。グルーシェニカとの会話の中で、アリョーシャは、イワンがミーチャの所に二度も通っていたことを知る。イワンも、そしてミーチャも、その事実を隠していたのだ。「あの人たちのあいだにはなにか秘密があるのよ」とグルーシェニカは言い、自分も口止めされていたことを告白する。グルーシェニカは、この件に関して、カテリーナが一枚かんでいて、彼女が仕組んだもので、彼女が張本人だと決めつけていた。アリョーシャは、「カテリーナさんは何の関りもなく、その秘密は何か別のことのような気がする」と言い、先を急いだ。アリョーシャは、他にもたくさんの用件を抱えていたのである。
第4部、第11編、第2節「悪い足」

【要約】
ミーチャは、ホフラコーワ夫人の家にやってきた。娘のリーザが使いをよこしてアリョーシャを呼び出したからである。とても大事な用事があるというのだ。ホフラコーワ夫人はアリョーシャが来たことを聞きつけ、ほんの1分だけ私室に立ち寄るように言ってきた。アリョーシャは、まずは母親の願いを先に叶えてやる方が得策と考え、まずホフラコーワ夫人に会った。ホフラコーワ夫人は体調を崩して、すでに3週間が経とうとしていた。どういうわけか、片方の足が急に腫れあがったのである。ホフラコーワ夫人は「大事な話がある」というが、その大事な話は後回しにして、「リーズが歩けるようになったこと」、「あることないこと、この裁判をむぐる噂がペテルブルグとモスクワの全部の新聞に書かれ、すでにロシア全国に広まっていること」「自分(ホフラコーワ夫人)までドミートリーの愛人と書かれていること」「その噂の記事の投稿者がラキーチンであること」「ラキーチンがわたし(ホフラコーワ夫人)を好きになっていたこと」「ラキーチンを出禁にしたこと」「心神喪失であれば裁判でだれもが許されるということ」「モスクワから戻ったイワンが(アリョーシャが知らない間に)この家に何度も出入りしていたこと」などを、ほぼ一方的に話し続けた。イワンはリーズにも密かに会っていたという。ホフラコーワ夫人は、リーズは心神喪失の状態にあり、頭がすっかりおかしくなってしまったような状態なので、リーズから何もかも聞き出してほしいとアリョーシャに頼む。アリョーシャはリーズの部屋に向かった。
第4部、第11編、第3節「小悪魔」

【要約】
アリョーシャがリーザの部屋に入ると、彼女は、まだ歩けなかったころに使っていた車椅子に身を横たえていた。この3日間で、リーザの様子は一変し、目は赤く腫れぼったい感じになり、顔は青ざめ、黄ばみ、頬の肉までこけていた。「今日は何の用でぼくを呼びだしたんです。リーズ?」とアリョーシャが問うと、リーズは、「わたし、希望をひとつあなたにお伝えしたかったの。だれかにいじめてもらいたいのよ」と言い、「わたし、幸せになりたくないの。でたらめがほしいの。家に火をつけたくてしかたないの」と続けた。そして、「今あなたのお兄さんが、お父さまを殺した罪で裁判にかけられようとしているでしょ。でもあの人がお父さまを殺したこと、世間のひとたちはみんな、喜んでいるの。口では恐ろしいと言いながら、内心ではもう大喜びなの。その一番手が、このわたしってわけ」と言った。リーザは、「あれって、ほんとうのこと?」と言って、ある本にあった話をアリョーシャに聞かせた。復活祭のとき、ユダヤ人が4歳の子どもを盗んできて、両手の指をぜんぶ切り落として、それから壁に磔(はりつけ)にし、子どもがうんうん呻きっぱなしでいるあいだ、ユダヤ人は立ったまま、その子どもに見とれていたというのだ。「すてきなお話でしょ!」と言ったあと、リーザは、「わたし、ときどき、その子は自分が磔にしたんだって考えるの。男の子が壁につるされて、うんうん呻いている、で、わたしはその子の真向かいにすわって、パイナップルのコンポートなんかを食べてるの」。リーザは、このユダヤ人の話を読んだとき、ひと晩じゅう泣きながらふるえていたという。次の朝、リーザは、ある人に手紙を出し、その人が来ると、その子どものこととコンポートの話をして聞かせたという。動揺したアリョーシャが、「それじゃあ、あなたが自分から呼んだんですね、その人を?」と問うと、「そうよ、わたしから」とリーザは答えた。「アリョーシャ、お兄さんのところへ行く時間でしょ!」と言って、リーザはアリョーシャをドアの方へ追いやった。アリョーシャは自分の右手に手紙を握らされたを感じ、ちらりと目をやると、その手紙には、「イワン・カラマーゾフさま」と宛名が書いてあった。アリョーシャが帰ると、リーザはドアを少しだけ開いて、その隙間に指をはさみ、ドアをばたんと閉めて、思いきり指をつぶした。
第4部、第11編、第4節「賛歌と秘密」

【要約】
アリョーシャが監獄のベルを鳴らしたのは、黄昏が迫る遅い時刻だった。それでもアリョーシャは支障もなくミーチャのもとに通してもらえた。この監獄では、下々の番人に至るまでアリョーシャと顔なじみになっていたからだ。面会室に入ったところでラキーチンと鉢合わせになった。ラキーチンはアリョーシャと顔を合わせるのを嫌っているようで、口もきかず、挨拶もそこそこに出て行った。「どうして彼は、こんなにひんぱんに押しかけてくるんです?」とアリョーシャが訊くと、「あいつ、おれの事件のことを、記事に書きたがっているんだ。それでもって文壇にうって出る腹で、そのためにここに通ってる」とミーチャは教えてくれた。そして、ラキーチンが未亡人のホフラコーワ夫人に言い寄って(あわよくば結婚して)、15万ルーブルをふんだくって、ペテルブルグに石造りの家を買い取って、新聞を出す予定でいたこと、だが、ホフラコーワ夫人からいきなりお払い箱になり、怒ってホフラコーワ夫人のことを下劣な記事にして復讐したことなどを語った。そして、「おれたちの秘密、おまえに打ち明けるよ」と言って、イワンが脱走を提案していること、脱走がうまくいったらグルーシェニカとアメリカに行く予定であること、その一方で「良心」にも苦しめられていると語り、アリョーシャに自分の行く末を決めてもらいたいと言った。アリョーシャは、「判決が出たら、自分で決められます。そのときは、自分で自分のなかに新しい人間を見いだせるでしょうから、その新しい人間が決めてくれるはずです」と答えた。最後に、ミーチャが、「おまえは、おれが犯人だと信じてるのか、それとも信じていないのか?」と訊くと、アリョーシャは、「兄さんが犯人だなんて、一瞬たりとも考えたことはありません」と答えた。ミーチャは、「ありがとう!」と言った後、「イワンを好きになってくれ!」と言った。
第4部、第11編、第5節「あんたじゃない、あなたじゃない!」

【要約】
イワンの家に向かう道すがら、アリョーシャは、カテリーナが部屋を借りている家のそばを通り、ふと訪ねてみようと思い立った。階段の方へ歩いていくと、帰ろうとしているイワンと出会った。二階のドアが開き、カテリーナが、「(ミーチャと面会した)帰り道でしょ? わたしに何かことづけがあるのね? お入りなさい、アリョーシャ」と言い、イワンにも戻るように(命令口調で)言った。カテリーナがミーチャからのことづけを訊いてきたので、アリョーシャは、「ご自分を大事にされ、……あの町で、あなたと初めて知り合ったときに……あんたとのあいだにあったことについて、どうか法廷では何も証言しないでほしい、とのことです……」と言った。カテリーナは、「ああ、それって、あのお金のお礼に、深々とお辞儀をした例の話ね」と苦々し気に笑って、そう言葉を引き取った。カテリーナは、イワンに、「殺したのは、ほんとうにあの人なんですの?」と訊いた。その「あの人」とは、スメルジャコフのことであった。カテリーナはイワンに、「わたし、あんたの言うことだけ信じていたのよ!」と言った。アリョーシャは、カテリーナがイワンを「あんた」という呼び方を聞いてぎくりとなった。なぜなら、二人がそうした関係にあるとは思いもよらなかったからだ。カテリーナの言葉を断ち切り、イワンが「帰ります」と言って部屋を出て行くと、カテリーナはアリョーシャに、「追いかけてって、つかまえるのよ! あの人、様子が変なの。幻覚症にかかってるわ。神経症の熱病よ!」と言った。アリョーシャがイワンに追いつくと、イワンは、カテリーナはフョードルを殺したことを数学的に証拠立てる文書を握っていると言うが、アリョーシャは、「そんなもの、あるはずがありません!」と言い、「だって、犯人は兄さんじゃありませんから」と続けた。「じゃあ、おまえは、いったいだれが殺したっていうんだね?」とイワンが訊くと、アリョーシャは、「兄さんは、ご自分でだれか知ってるんでしょう」と低いしみじみとした声で言った。「いったい、だれなんだ、だれなんだ?」イワンは凶暴な調子で叫んだ。するとアリョーシャは、「ぼくが知っているのは、ひとつ。父を殺したのは、あなたじゃないってことだけです」とささやくような声で言った。「あなたじゃないとは、どういうことだ?」とイワンが訊くと、「父を殺したのは、あなたじゃない、あなたじゃない!」とアリョーシャはきっぱりした口調で繰り返した。
「兄さんは、ご自分でだれか知ってるんでしょう」
アリョーシャのこの微妙な言い回しに、読者の頭は「?」となる。
「ぼくが知っているのは、ひとつ。父を殺したのは、あなたじゃないってことだけです」
と言ったアリョーシャに、イワンが、
「あなたじゃないとは、どういうことだ?」と訊くと、アリョーシャは、
「父を殺したのは、あなたじゃない、あなたじゃない!」
と、繰り返す……
さすがのイワンも、
「おれじゃないことぐらい、自分でもわかってるさ、何を寝ぼけたこと言ってる?」
と、青ざめた顔にゆがんだ笑みを浮かべて言う。
すると、アリョーシャは、
「いいえ、イワン、あなたはなんどか、自分が犯人だと言い聞かせてきたはずです」
と言い、
「恐ろしかったこの二ヶ月、あなたは一人になると、自分になんどもそう言い聞かせてきました。あなたは、自分を責め、自分でも認めていました。犯人は自分以外のだれでもない、ってね。でも、殺したのはあなたじゃない。あなたはまちがっている。犯人はあなたじゃない、いいですね、あなたじゃないんです! ぼくが神さまに遣わされたのは、それをあなたに告げるためなんです」
と続けた。
アリョーシャのこの言葉は、
(裏を返せば)犯人はイワンだと告げているようにもみえる。
イワンは、この言葉に激怒し、アリョーシャに絶交を宣言する。
そして、イワンは、スメルジャコフの家へと足を向ける。
はたして、フョードルを殺したのは誰なのか?
ワクワクするほどに面白い。
