
本作を見たいと思った理由は、二つ。
➀河合優実の出演作であるから。

➁大九明子監督作品であるから。

河合優実に関しては、このブログに、
好きな理由を山ほど書いているので、
もうここには書かない。(笑)
〈彼女の出演作なら見たい……〉
と、私に思わせる(現時点で)一番の俳優である。

「映画.com」の解説には、
『勝手にふるえてろ』『私をくいとめて』の大九明子監督……とあったが、
私にとっては、
『でーれーガールズ』『甘いお酒でうがい』「家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった」の大九明子監督……として認知されている。
これら魅力ある作品を生み出した大九明子監督の新作なら見たいと思った。


主演は、萩原利久で、

ヒロイン役の河合優実の他、

伊東蒼、黒崎煌代、松本穂香、浅香航大、安齋肇、古田新太等が共演している。


2025年4月25日に公開された作品であるが、
佐賀では、109シネマズ佐賀とシアターエンヤの2館で、
(2館共、何故か)1週間遅れの5月2日から公開された。
しかも1日1回上映という、鑑賞自体がきわめて困難な状況の中で、
109シネマズ佐賀で、鑑賞したのだった。

大学生の小西徹(萩原利久)は、
思い描いていたキャンパスライフとはほど遠い、
冴えない毎日を送っていた。

そんなある日、
お団子頭の女子大生・桜田花(河合優実)の凛々しい姿に目を奪われた小西は、

思い切って彼女に声をかける。
いろいろな偶然も重なり、またたく間に意気投合する2人。

会話が尽きないなか、
「毎日楽しいって思いたい。今日の空が一番好きって思いたい」
と桜田が何気なく口にした言葉が、小西の胸を刺す。

その言葉は、小西が大好きだった、いまは亡き祖母の言葉と同じだった。
桜田と出会えたことに喜ぶ小西だったが、
そんな矢先にある出来事が2人を襲う……

最初は、風変わりな男子大学生が主人公ということで、
〈『横道世之介』みたいな映画だな~〉
と思いながら見ていた。

途中からは、会話劇ということで、
〈『セトウツミ』や『恋は光』みたいな映画だな~〉
と思いながら見ていた。

そして、終盤、
(少しは予測できたけれど)思いもかけない展開に、
〈やはり大九明子監督作品だな~〉
と思いながら見ていた。

ラストも見事で、特にラストカットがすこぶる美しく、
〈余韻が残る素晴らしい映画だったな~〉
と思った。
結論……「傑作!」であった。

では、何が良かったのか?
本当は詳しく書きたいのだが、
このような傑作は、なるべく予備知識なしで見た方がいいので、
(「ネタバレ厳禁」と聞いていたので、私も予備知識なしで見た)
箇条書きにして、(簡単に、短く)説明したいと思う。
➀基本「会話劇」で、それぞれに長台詞があり、会話劇が好きな私としては、とても面白かった。特に、さっちゃん役の伊東蒼の(約7分25秒の)長台詞は、伊東蒼の演技も、台詞の内容も、圧倒的に素晴らしかった。(このシーンを見るためだけにもう一度見たいと思った程)あまりに素晴らしかったので、帰路、書店に立ち寄り、原作本で確かめると、あの台詞のほとんどが原作本に書かれていた。脚本は大九明子監督であるが、原作を書いた福徳秀介の才能も褒めたいと思う。


➁最初は、なんだかほんわりムードで始まり、「ああ、そんな感じの癒し系、まったり系の恋愛映画かな……」と思って見ていると、途中から違った展開をみせ、哀しくも切ない青春映画の様相を呈し、(じわっとくる)感動のラストへと導いてくれる。この作品の結末部で繰り広げられる河合優実の約6分50秒、萩原利久の約6分3秒にわたる長台詞も圧巻。河合優実の顔がアップになるシーンにもシビれた。

③「今日の空が一番好きって思いたい」という言葉が出てくるが、私が登山するときの気持ちと少し似ていると思った。このブログにも何度か書いているが、「自分の登った日がベストの日」なのだ。登山予定日が必ずしも晴れるとは限らないし、曇りの日もあれば、雨の日もある。目的の花が開花していないこともあれば、思いがけない花に出逢えることもある。天気や花に限らず、何事にも一喜一憂することなく、「自分の登った日がベストの日」と考え、すべてを楽しむ。悪天候の時にしか出合えない風景もあるし、悪条件の中でしか味わえない体験もあるのだ。

④スピッツの楽曲「初恋クレイジー」が挿入曲として使わているが、登場人物たちの台詞のにもこの曲のタイトルが幾度となく登場し、曲自体も実に効果的な使われ方をしている。所々に、大音響、衝撃音、大声、どなり声などが効果的に使われており、音が(本作において)重要な役割を果たしていると思った。

⑤河合優実を見るのを目的に本作を見たのだが、河合優実はもちろんだが、萩原利久、伊東蒼、黒崎煌代、松本穂香、浅香航大、安齋肇、古田新太等、すべての出演者が好い仕事をしていた。特に、伊東蒼は褒めても褒めたりないし、黒崎煌代の飄々とした演技も良かったし、古田新太もさすがの演技であった。

⑥犬のサクラも名演技をしている。


⑦ロケ地の関西大学や周辺の店などが効果的に使われている。原作者の福徳秀介の出身校でもある関西大学の全面協力のもとロケされているので、風景によそよそしさがなく、温かい空気の中で撮られていることが判る。(ロケ地マップも作られているようだ)



⑧バックショットが意外に多く、「青春の後ろ姿」を見せられたような気がした。



⑨同じ大学にいて、これまで出逢うことのなかった二人が偶然出逢い、惹かれあう。いま流行りの言葉で言えば、「セレンディピティ(serendipity)」ということになるだろうか。「思いがけない発見や偶然の幸運」「価値あるものを偶然見つける能力」というような意味だが、映画『今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は』は、セレンディピティによって生まれた恋愛映画、青春映画の傑作と言えるだろう。

⑩本作『今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は』は、「家族」や「命」を大きなテーマとしているという意味においては、同じ大九明子監督が脚本・演出を手がけ、河合優実が主演したNHKドラマ「家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった」から地続きの作品のように思えた。

青春時代から随分と遠ざかってしまった私であるが、
『今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は』のような映画を見ると、
半世紀近く前の記憶が蘇ってきて、ドキドキしてしまう。(不整脈じゃないよ)
私は泣かなかったが、
いくつかのシーンで、若い女性の嗚咽する声が聞こえたような……
若い人にとっては、特に胸に刺さる映画であったかもしれない。
おまけ「