
『カラマーゾフの兄弟』読了計画の第20回は、
第3部、第8編「ミーチャ」の、

第5節「突然の決意」
第6節「おれさまのお通りだ!」
第7節「まぎれもない昔の男」
第8節「うわ言」
を読みたいと思う。

第3部、第8編、第5節「突然の決意」

【要約】
フェーニャが祖母とキッチンにいるとき、ミーチャが駆け込んできてフェーニャに襲いかかり、喉元に手をかけ、「彼女はどこだ、すぐに白状しろ」と言った。死ぬほどびっくりさせられたフェーニャは、「あの方はモークロエの将校さんの所へ行かれました」と早口でまくし立てた。フェーニャはドミートリーが血まみれなのにも驚かされ、今日一日起こった出来事を、あらいざらい話した。グルーシェニカがアリョーシャに託した「あの人を1時間だけ愛したことがあるってこと、一生忘れないで」というドミートリーへの伝言のことまで。すべてを聞くと、ミーチャの青ざめた頬にさっと赤みがさし、身を翻してキッチンを出て行った。向かった先は、ピストルを抵当に金を借りたペルホーチンの家だった。ペルホーチンは、ミーチャが血だらけで、札束を鷲づかみにして入ってきたことに驚いた。ミーチャは(何故か)大金を手にしており、ピストルの受けだしに来たことを告げる。ピストルに弾をこめたミーチャは、紙に「全人生に対し自分を処刑する、ぼくの全人生を処罰する」と書く。そして、プロトニコフの店に大量の酒や食べ物を用意させ、三頭馬車でグルーシェニカのいるモークロエへ向かうのだった。ミーチャが去った後、ミーチャの言動に不安を感じたペルホーチンは、フェーニャの家に行き、扉をノックした。
『カラマーゾフの兄弟』では、所々に空白の部分が置かれており、
何が起きたのか描かれていないことが多々ある。
ミーチャがグリゴーリーを杵で殴るシーンも詳しくは描かれていないし、
死んだのかどうかも判らない。
一文無しの筈のミーチャが、(いつのまにか)大金を手にしているのだが、
その理由も描かれておらず、謎が残る。
ドストエフスキーの作品の読まれ方は、日本とヨーロッパでは異なっており、
基本的にヨーロッパでは、
この作品(『カラマーゾフの兄弟』)は、推理小説として親しまれているとか。
この第3部、第8編はミステリー要素が高く、
疾走感もあり、グイグイ読ませる。
第3部、第8編、第6節「おれさまのお通りだ!」

【要約】
ドミートリーを乗せた馬車は、街道を突っ走っていた。モークロエまでは20km少しあった。ミーチャの心は重く、深くよどんでいたが、彼の全存在は、最後にグルーシェニカにひと目会いたいとの思いで一杯だった。将校に対してはいささかの嫉妬も感じていなかった。あの男が現れなくたって、どのみち、すべてがおしまいだったのだ。「自分を処刑し、処罰する」という宣言文はポケットに納まっているし、ピストルにも弾が込められている。明日の朝、最初の光をどう迎えるかも、しっかり心に決めている。モークロエの旅籠屋に着くと、ミーチャは、「鈴を鳴らせ、がらがらやって乗り込め! みんなにわからせるんだ! だれのお出ましかをな! おれさまのお通りだ! おれさまの到着だ!」と、有頂天になって叫び続けた。宿屋の主人トリフォーン・ボリースィチが現れたので、ミーチャが、「グルーシェニカは嬉しそうか? 笑ってるか?」と訊くと、トリフォーンは、「いいえ、あまり笑いにはなっていないようです……むしろ、すっかりご退屈の様子で……」と答えた。トリフォーンの手引きで、グルーシェニカたちを観察してから、ミーチャは彼らの前に姿を現した。「ああ!」まっさきに彼の姿をみとめたグルーシェニカは、驚きのあまり声をあげた。
一路、モークロエへ向かう第6節は、
タイトルの「おれさまのお通りだ!」が表しているように、
この小説のなかでもとりわけ躍動感があり、読ませる。
夜の闇の中を、「空間をむさぼり食いながら」ひた走るミーチャの馬車は、
ミーチャの性格とも相俟って、疾走感が半端ない。
第3部、第8編、第7節「まぎれもない昔の男」

【要約】
部屋に入るなり、「恐がらないでください。ほんとうに大丈夫ですから」とミーチャは大声で叫んだ。「最後の一日、最後の一時間をこの部屋で、この同じ部屋で過ごしたかったんです……ここでぼくは憧れたことがあるんです……ぼくの女王さまにです!」。すると、(退屈していたらしい)グルーシェニカは、「驚かさないんだったら、喜んであんたを受け入れてあげる……」と言った。部屋には二人のポーランド人と、地主のマクシーモフや二十歳くらいの美青年カルガーノフもいた。二人のポーランド人のうちの一人は(この男がグルーシェニカの“昔の男”らしい)、小さな鼻をした40歳くらいのポーランドなまりのロシア語を話す男で、安物のかつらを付けていた。もう一人は、かつらの男よりも一回りくらい若い、ばかでかい背丈の男だった。やがて、お金を賭けたゲームが始まり、ミーチャとカルガーノフはポーランド人に負け続ける。200ルーブル負けたところで、ミーチャはポーランド人を隣の部屋に呼び出し、札束を見せて、「3000ルーブル欲しければ、これを持ってどこぞへ消えてくれ」と頼む。ポーランド人は少し乗り気になるが、ミーチャから「今渡せるのは700ルーブルで、残りは明日、町で渡す」と言われ、唾を吐いて断る。すると、ミーチャは、「そうか、グルーシェニカからなら、もっと巻き上げられるって考えているからだな」とポーランド人の企みを見破る。それを聞いたグルーシェニカも、「それでわかったわ、わたしがお金を持っていると聞きつけて、それで結婚しようともどってきたわけね!」と悟り、「わたしはばかだった、5年も苦しんできたなんて!」と嘆いた。そこへ旅籠屋の主人がやってきて、ポーランド人たちがカードでいかさまをしていたと告発したことから、グルーシェニカにも「ああ、なんて男になり下がってしまったのだろう!」とすっかり呆れられる。ポーランド人がグルーシェニカに「売春婦のくせして!」と罵ったことから、ミーチャはポーランド人を隣室へ連れ出し、床に叩きつけた。
昔の恋人が自分のもとに戻ってきたのは「金目当て」だったことを知ったグルーシェニカは、ポーランド人に幻滅する。
なぜポーランド人が出てくるのか……ある文献を読むと、
ポーランドとロシアは非常に関係が悪いことに由来し、
ポーランド人はカトリックで、ペテン師で、意固地だということを、
ここで表現しているとか。
第3部、第8編、第8節「うわ言」

【要約】
どんちゃん騒ぎに似た、飲めや歌えの宴が始まった。当のミーチャは、ばかげた様相を呈すれば呈するほど、ますます元気が出た。グルーシェニカから「どうして、わたしをあの男に譲ろうなんて気を起こしたの?」と訊かれ、ミーチャは、「君のしあわせをだめにしたくなかったんだ!」と答えた。自殺を考えていたミーチャであったが、彼女が今誰を愛しているかは、彼女の目を見ただけで一目瞭然だった。〈たとえ恥辱の苦しみにまみれていようと、彼女の愛の一時間、いや一分は、残りすべての人生に値しないだろうか?〉この荒々しい問いかけが、彼の心をむんずとつかみとった。〈彼女のところへ行け、彼女ひとりのもとへ行くんだ。彼女の姿を見、声を聞け、何も考えず、すべてを忘れるんだ。たとえ、今日このひと晩だけでもいい、たとえ一時間でも、たとえ一瞬でも!〉。グルーシェニカは、ミーチャに、「あなた以外に人を愛するなんて、どうして考えられたのかしら? 許してくれる? ミーチャ? わたしを許してくれる? それとも許せない? 愛してる? 愛してない?」と訊いてきたので、ミーチャは嬉しさのあまり、ふいに彼女をきつく抱きしめ、はげしくキスを浴びせた。「わたしをどこか遠くに連れてって」と言うグルーシェニカに、ミーチャは、カテリーナからお金を盗んだことを告白する。グルーシェニカは、「返せばいいのよ、わたしのお金を持っていけばいい、いまはもう、わたしのものはあんたのものなの」と言い、「わたしはもう、あんたの恋人になんかならない、あんたに忠実な女になるの、あんたの奴隷になるの、あんたのために働くの。いっしょにあのお嬢さんのところへ出かけていって、頭を下げて謝るの、そして出発するのよ」と続けた。恋は成就するかに思われたが、そこへ、郡の警察署長ミハイル・マカーロフをはじめ、検事補、予審判事、分署長らが訪れ、「あなたは、昨夜起きた、あなたの父親、フョードル・カラマーゾフ殺害の罪で、起訴されております」と告げる。ミーチャは、話を聞きながら、彼らが何を言っているのか、理解できなかった。彼はふしぎそうな目で、まわりの一同を眺めわたしていた……。
衝撃の展開に、一読者の私は唖然となった。
逮捕されたミーチャはこの後どうなるのか?
いよいよ第3部、第9編「予審」の幕が上がる。
