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『カラマーゾフの兄弟』(ドストエフスキー)⑮ …第2部、第5編、第6~7節…




カラマーゾフの兄弟』読了計画の第15回は、(これまでの記事はコチラから)
第2部、第5編「プロとコントラ」の、


第6節「いまはまだひどく曖昧な」
第7節「『賢い人とはちょっと話すっだけでも面白い』」
を読みたいと思う。



第2部、第5編、第6節「いまはまだひどく曖昧な」


【要約】
アリョーシャと別れたイワンは、父フョードルの家をめざして歩き出した。ところが奇妙なことに彼は突然堪えがたい憂鬱に襲われた。家にたどり着くと、門の脇にあるベンチに下男のスメルジャコフが腰掛けていた。イワンは彼を見るなり、憂鬱の原因がスメルジャコフであることに気がつく。この男に対する憎しみに近い感情が日増しにつのっていくのが自分でもはっきりわかるほどだった。イワンを決定的に怒らせ、激しい嫌悪感を植え付けるに至ったもの、それはスメルジャコフが自分に対して示すようになった、なんとも鼻もちならないなれなれしさであった。スメルジャコフは、アグラフェーナ(グルーシェニカ)のことで、フョードルとドミートリーの板挟みになっていることを告げる。ドミートリーからは「アグラフェーナが来たことを教えなかったら殺す」と脅され、フョードルからは、彼女が家に来た場合の寝室のノックの合図や、彼女のために3000ルーブルを用意していることを教わっていた。しかもそれをドミートリーに漏らしていることも……。スメルジャコフは、アグラフェーナが遺産目当てにフョードルと結婚する可能性を示唆し、そうなればドミートリーにもイワンにもアリョーシャにもびた一文残らないことになり、フョードルに恐ろしいことが起こるかもしれないと告げる。イワンが「おれは明日モスクワに発つよ」と言うと、スメルジャコフは「それがいちばんでございます。ただ、もしものことがあった場合、こちらからの電報で、モスクワからお戻りいただくことになるかもしれません」と不吉なことを言った。



第2部、第5編、第7節「『賢い人とはちょっと話すっだけでも面白い』」


【要約】
家に入るなり、フョードルと鉢合わせしたイワンは、「二階の部屋へ行きますんで」と言って、相手の顔も見ずにフョードルの脇を通り抜けた。30分後には屋敷の錠が下ろされ、フョードルは、グルーシェニカが来たときの合図の五つのノックが聞こえないか胸をときめかせていた。イワンは眠れずにいた。彼は何回かソファから体を起こし、誰かに覗き見されているのではないかと恐れてでもいるように、こっそりドアを開けて階段口に出て、階下の部屋の様子や、父フョードルが立てる物音に耳をそばだてた。この行為を彼はその後一生を通して一人ひそかに、心の奥で、自分の全人生でもっとも卑劣な行為とみなし続けた。イワンは翌朝7時頃に目覚め、モスクワに戻るために荷造りを始めた。9時には荷造りを終え、階下に降りた。するとフョードルがやってきて、「チェルマシニャーに寄って一仕事してほしい」と頼んできた。「行くかどうかは途中で決めます」と言って、イワンは馬車に乗り込んだ。敷物を整えようとスメルジャコフが駆け寄ってきたので、イワンが「おれはチェルマシニャーに行く」と口走ると、スメルジャコフはこう言ったのだ。「つまり、賢い人とはちょっと話すだけでも面白いと世間で申しますのは、ほんとうなんですね」と。イワンは、〈「賢い人とはちょっと話すだけでも面白い」とはなんだ。やつはあれで何を言うつもりだったんだ?〉と思い、ふいに生きがつまりそうになった。ヴォローヴィヤ駅に到着し、チェルマシニャーへ行くために乗り換える馬車の手配をするが、突如、「チェルマシニャーへ行くのはやめだ」と叫び、夜7時の列車で一路モスクワを目指す。汽車がモスクワに入る明け方になって、イワンはふとわれに返り、「おれは卑劣な男だ!」と心の中でつぶやいた。一方、フョードルの屋敷では大変な事態が生じていた。スメルジャコフが、なんのためか穴蔵へ行き、最上段から転げ落ちたのである。穴蔵の底で発見された彼は、てんかんの発作で、全身をぴくぴく痙攣させ、口もとに泡を浮かべてのたうち回っていた。病人はなかなか意識を回復せず、医師は「命の危険がある」との診断を下す。悪いことは重なるもので、一昨日から体調を崩していたグリゴーリーも寝たきりとなった。フョードルは早めにお茶を切り上げ、母屋にひとり閉じこもった。「今日ぜひともうかがいますと(グルーシェニカさんは)お約束なさいました」という保証のようなものをスメルジャコフから得ていたフョードルは、「今夜こそ、彼女はまちがいなくやってくる!」と、甘い期待に浸っていた。



カラマーゾフの兄弟』で、
「大審問官」と並んで重要だとされているのが、
ゾシマ長老について記された第2部、第6編「ロシアの修道僧」なのであるが、
その間にあり、繋ぎの役割を果たしているのが、今回読んだ第2部、第5編の、
第6節「いまはまだひどく曖昧な」
第7節「『賢い人とはちょっと話すだけでも面白い』」
なのである。
重要な二つの議論に挟まれている部分なので、
この第6節と第7節は軽く見られがちなのだが、
イワンとスメルジャコフを中心に、思わせぶりで不穏な場面が描かれており、
これからの展開に極めて重要と思われる内容なのである。
第6節の要約で、私は、
「スメルジャコフは、アグラフェーナが遺産目当てにフョードルと結婚する可能性を示唆し、そうなればドミートリーにもイワンにもアリョーシャにもびた一文残らないことになり、フョードルに恐ろしいことが起こるかもしれないと告げる」
と書いたが、その部分をスメルジャコフが発言した部分を引用すると、次のようになる。

(略)で、いま申したことを念頭において、ようくお考えいただきたいんです。イワンさま。そうとなったあかつきに、かりにお父上がなくなられたりしますと、ドミートリーさまはおろか、あなたさまや弟のアレクセイさまの手元には、ほんとうにびた一文残らないことになるわけです。(略)で、そういうことが起こらないうちに、ぽっくりお父上が逝かれることになれば、逆にあなたがたお一人お一人には、すぐにも四万ルーブルずつの金が確実に入るわけです。(第2巻325頁)

その言葉を聞いたイワンの顔は「なぜかゆがみ、ぴくりと震えたかのようだった。彼はふいに真っ赤になった」。
その夜、イワンは眠れない夜を過ごす。
スメルジャコフの「すぐにも四万ルーブルずつの金が確実に入るわけです」という一言によって、動揺し、自分の本心(無意識の欲望に蝕まれた自分)を知ることになる。
その夜、イワンは奇怪な行動に出る。
その夜の様子を、私は、第7節の要約に、
「彼は何回かソファから体を起こし、誰かに覗き見されているのではないかと恐れてでもいるように、こっそりドアを開けて階段口に出て、階下の部屋の様子や、父フョードルが立てる物音に耳をそばだてた。この行為を彼はその後一生を通して一人ひそかに、心の奥で、自分の全人生でもっとも卑劣な行為とみなし続けた」
と書いたのだが、
ドミートリーがやってきて父親を殺す可能性があることを知りつつ、
イワンは、阻止しようと行動することもなく、危険を知らせることもなく、
ただ階下の様子をうかがっている。
この「未必の故意」に期待しているようなイワンの行為について、イワン自身が、

この「行為」を彼はその後一生をとおして「けがらわしい」行為とよび、生涯をとおして一人ひそかに、心の奥で、自分の全人生でもっとも卑劣な行為とみなしつづけた。(第2巻332~333頁)

ドストエフスキーが記すように、
イワンは黙過の罪を犯した自分を許せなかったのだろう。
翌朝、イワンはモスクワに帰る予定を変更して、自分はチェルマシニャーに行くと告げると、
スメルジャコフは、
「つまり、賢い人とはちょっと話すだけでも面白いと世間で申しますのは、ほんとうなんですね」
と言う。
この言葉の意味とは?
物語は、第2部、第6編「ロシアの修行僧」へと移っていく……



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