
『カラマーゾフの兄弟』読了計画の第11回は、(これまでの記事はコチラから)
第2部、第4編「錯乱」の、

第1節、第2節、第3節、第4節。
「フェラポント神父」(第1節)
「父の家で」(第2節)
「小学生たちと知り合った」(第3節)
「ホフラコーワ家で」(第4節)
の4つの節を読みたいと思う。

第2部、第4編、第1節「フェラポント神父」

【要約】
朝早く、アリョーシャは起こされた。目を覚ました長老がベッドから肘掛椅子に移ることを望んだからである。「もしかすると、きょう一日、もたないかもしれません」長老はアリョーシャに言った。夜が明け、修道院から修道僧が集まってくると、長老は一同に別れを告げたいと言い、ひとりひとりに口づけをした。長老は体力の許すかぎり説教を続けた。「自分が俗世の人たちよりも劣っているまかりか、生きとし生けるものに対して罪がある、人間の罪、俗世の罪、個人の罪に責任を負っていると自覚したときにはじめて。わたしたちの隠遁の目的は達せられるのです」。途中、友人に呼び出され庵室から退出したアリョーシャは、ホフラコーワ夫人からの手紙を渡される。その手紙には長老が行なった奇跡について書かれており、この奇跡を修道僧全員に披露してくれるよう夫人は懇願していた。アリョーシャから手紙を受け取ったパイーシー神父は、きちんとした裏づけがとれるまでは誰にも言わないように修道僧一同に自粛を求めたが、この「奇跡」はあっという間に修道院全体、礼拝にやってくる信者たちに知れ渡った。この「奇跡」に誰よりも大きなショックを受けたのは、極北の町オブドールスクの小さな寺院からやってきた修道僧だった。この修道僧はある種の迷いに陥っていて、何を信じていいのか自分でも分からずにいたのだ。彼は昨夜も養蜂場の裏手にある特別の庵室にフェラポント神父を訪ね、その会見に仰天させられ、異常な、ぞっとするような印象を呼び覚まされていた。フェラポント神父は司祭の位を持たない平の修道僧にすぎなかったが、ゾシマ長老と「長老制」の敵対者で、彼はこの「長老制」を有害で軽はずみな新制度とみており、敵対者としてはきわめて危険だった。なぜなら、修道僧の大多数が彼に感化されており、また参拝にくる俗世の人々も彼を偉大な信仰者、偉大な苦行僧として敬っていたからである。75歳のフェラポント神父が口にするのは、3日間で2フント(約800g)のパンのみだった。計4フントのパンと、(修道院長が送ってくれる)聖餅とが、彼の1週間の食料のすべてだった。オブドールスクからやってきた修道僧を驚かせたのは、そんな高齢でパンと水しか口にしないフェラポント神父が、頑強そのもので、背筋はしゃんとし、腰も曲がっておらず、顔色もいきいきとし、頬の肉は落ちていても、いかにも健康そうなことだった。オブドールスクの修道僧の心は、ゾシマ長老よりフェラポント神父に傾いていた。彼は何より精進に重きをおいていたので、フェラポント神父ほどの偉大な精進行者なら「奇跡を目にできる」と思っていたのである。なので、ゾシマ長老が起こした「奇跡」という大ニュースに当惑したのだった。ゾシマ長老は、再び疲れを感じて、ベッドに横たわったが、アリョーシャを思い出し、そばに呼び寄せた。そして家族のもとへ行くように言い、「おまえがいないところでこの世への別れの言葉を告げることはせず、死にはしないからね。息子や、その言葉はおまえに言う、おまえに言い遺す。なぜかというと、アリョーシャ、おまえはわたしを愛しているからだ」と続けた。
第1節のタイトルが「フェラポント神父」だったので、
フェラポント神父に重きを置いて要約した。
ゾシマ長老と「長老制」の敵対者ということで、
フェラポント神父のキャラクターが強烈。
高齢(75歳)の修行僧で、パンと水しか口にしないのに、頑強そのもので、
背筋はしゃんとし、腰も曲がっておらず、顔色もいきいきとし、
頬の肉は落ちていても、いかにも健康そう……というのだから驚く。
65歳で、今にも死にそうなゾシマ長老とは大違いなのだ。
第2部、第4編、第2節「父の家で」

【要約】
アリョーシャは父の家に向かった。前日、父が、「どうかイワンに知られないようにこっそり中に入ってくれ」としきりに念を押していたのを思い出したが、出迎えたマルファが「イワンさんは外出されてもう2時間になります」と教えてくれたので嬉しい気持ちになった。父は起きてコーヒーを飲んでいた。「イワンは外に出てるよ」と言った後、「ミーチャから力ずくでも婚約者をうばいとる気だ。ここにいるのもそのためだしな」と言った。そして、自分の哲学を披露する。「おれはな、この世にできるだけ長生きする気でいるんだよ。だから1コペイカの小金だって必要なんだ。長生きすりゃするだけ金が必要になる」「今のところおれはまだ現役だし、まだ55歳にしかなってないが、この先さらに20年ぐらい男として現役を続けるつもりだ、だが、こうして年をとっていけば汚らしくもなって、女どもが自分から近寄ってくるなんてことはまずなくなる。そこでどうしても金が必要になるって理屈だ」「おれは死ぬまで汚らしいままで生きたいのでね。この汚らしさにこそ、より甘い楽しみがあるってもんでな」「おれはな、アレクセイ君、おまえさんの大好きな天国に行く気なんぞさらさらないからな。かりに天国ってものがどこかにあるにしてもだ。おれに言わせると、寝入ったが最後目を覚まさない。それっきり何もない。供養がしたけりゃすりゃいいし、したくなきゃどうぞご勝手に。これがおれの哲学なんだよ」。アリョーシャは話を聞くだけで何も言わなかった。父の話はイワンのことに移った。「卑しいやつだよ、イワンってのは! やつがおれを見張っているのもおれに(グルーシェニカと)結婚をさせないためだし、ミーチャにグルーシェニカとの結婚をけしかけているのもそのためなんだよ。もしもミーチャがグルーシェニカと結婚すれば、イワンはやつの金持ちの婚約者をいただけるわけだ。それがやつの腹だ! まったく卑しいやつだよ、イワンってのは」「イワンはチェルマシニャーに行こうとしない、なぜだ? スパイする必要があるからさ。グルーシェニカが来たとき、おれが大金を渡すんじゃないかとね。おれはイワンなんて、まるきり息子と認めちゃおらん」「イワンは、だれのことも好きにならない。イワンはおれたちとはちがう人種だ」。こう批判した後、父はふとアリョーシャに「カテリーナさんはやつ(ドミートリー)と結婚する気でいるのか、いないのか?」と訊いた。「あの人は、どんなことがあっても、兄さんを見捨てません」とアリョーシャが言うと、父は、「ああいうやさしい嬢ちゃんにかぎって、こういうろくでもない道楽者や悪党どもが好きになるんだよ!」と言い、アリョーシャに、「今日はもう帰れ」と言った。アリョーシャは父に歩み寄って別れの言葉を言い、その肩に口づけした。老人はすこしばかり驚き、「なんだい、そりゃあ? これからも顔を見せてくれるだろうが? それとも、これが見納めってわけか?」と問うた。
「おれはな、この世にできるだけ長生きする気でいるんだよ」
「長生きすりゃするだけ金が必要になる」
「今のところおれはまだ現役だし、まだ55歳にしかなってないが、この先さらに20年ぐらい男として現役を続けるつもりだ」
「おれは死ぬまで汚らしいままで生きたいのでね。この汚らしさにこそ、より甘い楽しみがあるってもんでな」
「おれはな、アレクセイ君、おまえさんの大好きな天国に行く気なんぞさらさらないからな」
等々、父フョードルの人生哲学は生々しく、俗っぽいが、面白い。
第2部、第4編、第3節「小学生たちと知り合った」

【要約】
アリョーシャはホフラコーワ夫人の家に向かう道の途中で、思いもかけぬ事件に出くわした。一見さして重大とも思えなかったが、彼はひどいショックを受けるはめになった。ミハイロフ通りに出ようと横町を曲がったところで、小学生の一団と出会ったのだ。9歳から12歳くらいまでの幼い子どもたちばかりだった。アリョーシャは子供たちが皆手にひとつずつ、あるいは二つ石を握っているのに気づいた。どぶ川の向こうにはもう一人少年が立っていた。やはり(9歳くらいの)小学生で、小学生の一団といがみあっているらしかった。小学生の一団の一人(左利きの少年・スムーロフ)と話しているとき、一同をめがけて飛んできた石がそのスムーロフの体をかすった。投げてきたのはどぶの向こうにいる少年だった。スムーロフは間髪いれずに川むこうの少年めがけて投げ返したが、当たらなかった。川向こうの少年から、ただちにもう一発、石が飛んできた。今度は直接アリョーシャを狙ったもので、かなりしたたかに肩に当たった。「今のはおじさんをわざと狙ったんだよ。だって、おじさん、カラマーゾフでしょ」と子どもたちは笑いながら叫んだ。6個の石が一団から一斉に放たれた。そのうちの1個が少年の頭に命中し、少年は転んだが、一団をめがけ死に物狂いで応戦しはじめた。双方から絶え間ない石の投げ合いがはじまった。「1人に6人がかりで、あの子を殺そうっていうの!」アリョーシャは叫び、向こうの少年をかばおうと、飛んでくる石に向かって盾のように立ちはだかった。それでも石の投げ合いの応酬は止まなかった。川向こうの少年の胸に石が一つ当たり、少年は悲鳴をあげて泣き出し、坂道を走り出した。アリョーシャは少年を追って行って、「向こうであの子たちに聞いたんですけど、きみはぼくのことを知っていて、何かわけがあってぼくに石をなげたんですって?」と訊いた。「しつこいんだ!」と少年が言ったので、「わかりました、それじゃあ、ぼく、行きます」と背を向けると、3歩も歩かないうちに、少年が放った石が彼の背を打った。少年がポケットに入れていた中でいちばん大きな石だった。「きみ、恥ずかしくないの? ぼくが何をしたっていうの?」とアリョーシャが叫ぶと、反撃されると思ったのか、少年はアリョーシャに飛び掛かってきて、中指に嚙みついた。振り払うと、中指の爪の根元のあたりに骨に達するぐらい激しく嚙まれた深い傷口があり、そこから血がたらたらと流れだした。「さあ、これでもう気が済んだでしょう。それじゃ教えてください、ぼくがきみに何をしたか」アリョーシャがこう言うと、返事をするかわりに、少年は突然大きな声で泣きだし、アリョーシャを残していきなり走りはじめた。アリョーシャは、「時間ができ次第、かならず少年を探し出し、自分にあまりに強いショックをもたらしたこの謎をぜひとも解き明かさなくてはと思った。
ドストエフスキーの子どもの描き方が独特だ。
子どもを純粋で無垢な存在としては描かず、謎めいた暴力的な存在として描く。
スメルジャコフの少年時代の描写でも、
子猫を縛り首にし、
その後お葬式の真似事をするために、彼は僧衣のかわりにシーツを纏い、
子猫の亡骸を見下ろしながら歌ったり、香炉の代わりに何かを振り回したりしていた。
残酷だし、あの「連続児童殺傷事件」の犯人の幼少期の「動物虐待」を彷彿させるような、
予言めいた描写もあったので驚かされた。
少年がアリョーシャに石を投げつけてきた理由とは?
とても気になるところだ……

第2部、第4編、第4節「ホフラコーワ家で」

【要約】
アリョーシャがホフラコーワ夫人の家にやってくると、出迎えるためにホフラコーワ夫人はわざわざ控えの間まで走り出てきた。「ここにいま、カテリーナさんがお見えになってるんですの」と夫人が言うと、「ああ、それはよかった!」とアリョーシャは叫び、「今日ぜひ家に来てくださいって、昨日あの人に言われてたんです」と付け加えた。夫人は「ええ、何もかも知ってます。昨日、あの方の家であったことは、何もかも隅々まで聞いてます。イワンさんもいらしてて、いまカテリーナさんとお話をしてるんです。その話というのがもう深刻なんですの。あれって、言ってみれば、一種の錯乱なんですね。とても信じられない、恐ろしいおとぎ話です。なぜかもわからず、二人とも自滅なさろうとしている。でも、いまは別のこと、いちばん大事なことがありますの。ねえ、教えてくださいな。うちのリーズ、どうしてヒステリーを起こしているんです? あなたがいらしたってことを聞いただけで、もうたちまちヒステリーを起こしているんですから!」と言った。アリョーシャが相手の話をさえぎり、「何か、指に巻けるような、きれいな布をいただけないでしょうか。ひどくケガをしてしまって、やたらずきずきするもんですから」と言い、嚙まれた指を見せると、ホフラコーワ夫人は悲鳴をあげて目をつぶった。リーズがユーリアに水や氷やガーゼや薬の指示をして治療にあたった。「どこでこんなひどいお怪我なさったの?」とリーズが訊いたので、アリョーシャは、例の小学生たちとの謎めいた出会いについて話して聞かせた。リーズが、「昨日あなたに渡した手紙を返してほしい」と言ったが、アリョーシャは手紙を持ってきていなかった。「あなた、あたしのこと笑ったでしょう?」とリーズが言ったので、アリョーシャが「笑っていない」と答えると、リーズは「なぜ?」と訊いてきた。「なぜって、なにもかも信じられましたもの。手紙を読んで、すぐにこう考えたんです。これはすべてこのとおりになるなって。だって、ゾシマ長老が亡くなられたら、ぼくはすぐに修道院を出なければならないんですからね。それから学校に戻り、卒業試験に合格し、法律で決められている年齢が来たら、ぼくたち結婚するんですよ。ぼくはあなたをずっと愛しています。これまできちんと考えるひまもなかったけれど、あなた以上にすばらしい奥さんは見つかるはずがないって思ってました。それに長老もぼくに結婚を勧めているし……」とアリョーシャは答えた。すると、リーズは、「あなたって少し頭が変だわ。だって、あんなばかな冗談を真に受けて、急にそんな変なこと言い出すんですもの」と言った。そこへホフラコーワ夫人がやってきた。アリョーシャがカテリーナとイワンがいる客間に入る前に、ホフラコーワ夫人は次のように囁いた。「わたし、あなたに暗示をかけたり、お芝居のカーテンをそっと上げてお見せするつもりはありませんよ。でもお入りになったら、あそこで何が起こっているか、すっかりおわかりになりますわ。もう、とんでもないことです。現実離れしたコメディなんです。カテリーナさんはね、ほんとうはあなたのお兄さんのイワンさんがお好きなくせに、そうじゃない、自分が愛しているのはドミートリーさんだって、もう必死に思い込もうとなさってるの。ほんとうにとんでもないことですわ! わたし、いっしょに中に入りますが、追い出されなければ、おしまいまでずっといさせてもらいますね」。
いやはや、一体どうなるのか?
第2部、第4編のタイトルが「錯乱」であるだけに、
この後、
第2部、第4編、第5節「客間での錯乱」
第2部、第4編、第6節「小屋での錯乱」
第2部、第4編、第7節「きれいな空気のなかでも」
と、「錯乱」続きなので、楽しみでならない。(笑)