
『カラマーゾフの兄弟』読了計画の第10回は、(これまでの記事はコチラから)
第1部、第3編「女好きな男ども」の、

第9節、第10節、第11節。
「女好きな男ども」(第9節)
「二人の女」(第10節)
「もうひとつ、地に落ちた評判」(第11節)
の三つの節を読みたいと思う。

第1部、第3編、第9節「女好きな男ども」

【要約】
ドミートリーのすぐ後ろから、グリゴーリーとスメルジャコフの二人が広間になだれ込んで来た。グリゴーリーは奥の寝室に通じる扉の前に立ちはだかった。「ははあ、女(グルーシェニカ)はそこか! そこに匿っているんだな!」。怒りに我を忘れたドミートリーはグリゴーリーを殴りつけ、戸口に押し入った。「やつを抑えろ!」フョードルもドミートリーの後から寝室に突入した。しかし、グルーシェニカはいなかった。どの部屋の窓にも鍵がかかっていたし、どこからも入りようがなかったし、どこへも飛び出して行きようがなかったのである。フョードルは「寝室の金を盗んだ!」と叫び、ドミートリーに飛び掛かった。ドミートリーは父親を床に叩きつけ、倒れている老人の顔を踵で蹴り上げた。「ばか、親父を殺す気か!」イワンが叫んだ。「自業自得だよ! 今回は見逃してやるが、また殺しに来てやる。用心しようたって無駄だぜ!」ドミートリーはわめき立てた。「アレクセイ、おまえだけは信じてやる。彼女はさっきここにいたのか、いなかったのか?」アリョーシャは答える。「誓って言います。あの人はここには来ていません」。イワンとグリゴーリーは、血だらけのフョードルを肘掛椅子に座らせた。「あんたの血を流したからといって、おれは後悔していない。これであんたとはすっぱり縁切りだ」こう言ってドミートリーは部屋を飛び出して行った。「おれがやつを引き離さなかったら、あのままきっと殺しちまってたぞ。あんなイソップ爺さん、そうは手がかからんからな」とイワンがアリョーシャに呟くと、アリョーシャは「とんでもない!」と否定するが、イワンは「毒蛇が毒蛇を食いあうたとえさ、行きつく先は同じだよ!」と言った。アリョーシャが寝室の父親に寄り添っていると、父親は言った。「アリョーシャ、いいか、ほんとうのひとり息子よ、じつは、おれはイワンが恐いんだ。あれよりも、イワンのほうが恐い。恐くないのはおまえだけだ……」と言った。
フョードルの言う「ドミートリーよりもイワンの方が恐い」とはどういうことなのか?
イワンがアリョーシャに、
「いいか、おれはいつも親父を守ってやるよ。とはいっても、おれの場合も、自分の望みに完全な自由を保留しておくからな」
と言うと、アリョーシャは心の中でこう思った。
〈兄が自分から先に歩み寄ってきたのにはわけがある。いや、かならずや何かもくろみがあるにちがいない〉
と。
第1部、第3編、第10節「二人の女」

【要約】
アリョーシャがカテリーナの家に入ったときには、すでに7時を過ぎて夕闇が迫っていた。彼はすぐに広間に案内された。カテリーナは急ぎ足で入ってきて、「ああ、よかった、やっと来てくれたわ」と嬉しそうに言った。カテリーナを見て、燃えるような黒い目は美しく、いくぶん黄ばんだ感じのする青白いうりざね顔にとくに似合っているとアリョーシャは思った。だが、魅力的な唇のラインと同様その目には、たしかに兄が恐ろしいほどほれ込みはしても、たぶんそう長くは好きでいられないような何かがあった。アリョーシャはドミートリーからの「こちらにはもう二度とうかがうことはないので、よろしく」という伝言と、兄と父の間で今日起こった事件の一部始終も語って聞かせた。そして、「で、兄はあの人(グルーシェニカ)のところへ出かけて行ったんです」とつけ加えた。カテリーナは「で、あなたはこのわたしが、その人を嫌っていると思ってらっしゃるのね? お兄さんもわたしが嫌っていると思っているのね? でもお兄さんは、その人と結婚なさいませんわ」と笑いながら言った。アリョーシャが「たぶん結婚すると思います」と言うと、カテリーナは「いえ、結婚しません。あのお嬢さんは天使ですよ」と言って、「アグラフェーナ(グルーシェニカ)さん、どうぞ」と言った。カーテンが上がり、グルーシェニカが嬉しそうににこにこしながら近づいてきた。アリョーシャは視線を釘付けにされ、彼女から目を離すことができなかった。彼女はとても美しかった。どんな男からもはげしく愛されてやまないロシア美人だった。彼女は22歳だったが、抜けるような色白の顔をしていて、頬にはほんのり赤みがさしていた。アリョーシャが最も心を打たれたのは、子どもっぽい、無邪気な表情だった。カテリーナはグルーシェニカについて、「この人、単に不幸せなだけだったの」と言った後、ずっと思い続けている人がいて、その人だけをずっと愛し続けてきたのだと打ち明けた。そして、グルーシェニカの手にキスをした。するとグルーシェニカは、「あなたは私を誤解なさってる」と言い、「あのときだって可哀想なドミートリーさんを、冗談半分でその気にさせただけなんですから」と続けた。「でも、そのあなたがあの人を救おうとなさっているじゃありませんか。そう約束なさったでしょう。あお人の迷いを覚ましてあげるって。自分は前から他の人を愛していて、その人がいま自分にプロポーズいていることを素直に打ち明けるって……」。するとグルーシェニカは、「いいえ、そんな約束してませんよ」と言い、「今またドミートリーさんのことを好きになりそう。今日から一緒に暮らしてって言ってしまうかもしれない……ほら、私ってこんな風に気まぐれな女なんです」と言った。さらにカテリーナとって屈辱的なことを言い、侮辱した。「出て行って! 淫売!」カテリーナはわめき立てた。グルーシェニカが、「ええ、淫売でもなんでも結構よ。でもそういうあなただって、生娘のくせに、お金目当てで若い男の家に、闇にまぎれて忍んでったじゃないですか。ご自分の美しさをえさにね。わたし、ちゃんと知ってるんですから」と言うと、カテリーナは叫び声をあげて彼女に飛び掛かろうとしたので、アリョーシャが全力で彼女を抑え込んだ。グルーシェニカは出て行き、アリョーシャも通りへ出た。すると、小間使いが後ろから追いかけてきて、「ホフラコーワさまからことづかった手紙です」と言って、アリョーシャに小さな封筒を渡したのだった。
カテリーナとグルーシェニカの「二人の女」の凄まじいやりとりに呆然となった。
グルーシェニカの豹変ぶりにも驚くが、
カテリーナの豹変ぶりには、グルーシェニカにも増して驚かされた。
〈女って恐い!〉
という思いを(更に)強くさせられた。(コラコラ)
第1部、第3編、第11節「もうひとつ、地に落ちた評判」

【要約】
カテリーナの家をでたアリョーシャは、修道院までの夜道を急ぎ足で歩いていた。すると十字路で待ち構えていたドミートリーが、「なにがあったか話してくれ。あの女なんて言った? あの女、逆上してただろう?」と訊いてきた。アリョーシャが、「それどころじゃなかったんです。カテリーナさんの家に、グルーシェニカさんが来てたんです」と言うと、グリゴーリーは棒立ちになった。「そんなばかな!」。アリョーシャは、カテリーナの家に足を踏み入れた瞬間から、身に起こった一部始終を話して聞かせた。ドミートリーは笑い崩れ、グルーシェニカのことを「極道女の本性だよ! あれはこの世で想像できるあらゆる極道女たちの女王なんだ!」と言い、「これは一種の歓喜だよ! これからおれは、あいつのところへ駆けつけるよ!」と続けた。アリョーシャは、カテリーナがドミートリーにお金を借りに行った日のことをグルーシェニカに話していたことを責めた。「グルーシェニカさん、カテリーナさんに面と向かって『あなたこそ若い男の家にこっそり忍んでいったじゃありませんか、ご自分の美しさをえさに』って。兄さん、これ以上ひどい侮辱はありませんよ」。ドミートリーはグルーシェニカにしゃべったことを認め、「おれは卑怯者なんだ!」と言い、「さあ、おまえは自分の道を行くんだ、おれはおれの道を行くから。おまえとはもうこれっきり会わないでいい、いつかなにか、いよいよってときまではな。じゃあな、アリョーシャ!」と言って去って行った。修道院を迂回し、僧庵に向かったアリョーシャは、ゾシマ長老の容態が目に見えて悪くなる一方であることを知らされる。「すっかり弱って昏睡状態に入っておられる」と、パイーシー神父が小声で彼に伝えた。修道院の外には一切出ず、長老が息を引き取るまでおそばに付き添っていようとアリョーシャは心に決めた。眠りに就く前に、ポケットに入れていた封筒のことを思い出し、開けて読んだ。それはリーズからのラブレターであった。「わたし、とうとう、ラブレターを書いてしまいました。こうしてわたしの秘密はあなたに握られてしまったのです。わたしの評判は、もしかしたら永久に地に落ちてしまったかもしれません」。読み終えたアリョーシャは、手紙を封筒にしまい、十字を切って横になった。
これで第1巻(つまり第1部)を読み終えたことになる。
第1巻を読み終えての感想は、とにかく「面白い」ということ。

この面白さは、若い頃には解らなかった面白さかもしれない。
70代で読んでいるからこその面白さかもしれない。
そして、ただ単に読んでいただけでは、この面白さは解らなかったかもしれない。
一度読んだ後、要約するために二度、三度と読み返す。
そうすることによって一度読んだだけでは解らなかったことや、思い違いしていたことが、
ちゃんと理解できて、面白さへと繋がっていく。
こういう読書体験は長らくしてこなかったような気がする。
10代の頃にように、みずみずしい気持ちで読書ができているのが嬉しい。
第2巻以降も本当に楽しみだ。