
本作『ファーストキス 1ST KISS』を見たいと思った理由は、二つ。
➀松たか子の主演作であるから。
➁脚本が坂元裕二であるから。
松たか子を初めて認知したのは、
TVドラマの『ロングバケーション』(1996年4月~6月、フジテレビ系)であった。
奥沢涼子役で出演していたのだが、
その美しさにすっかり魅了されてしまった。

以来、30年近く、ずっとファンである。
出演したTVドラマや映画はほとんど見ているし、
舞台も九州で公演される場合は観に行っているし、
大阪まで観劇に行ったこともある。

坂元裕二は私の好きな脚本家の一人で、

これまでは、主に、TVドラマでの作品を楽しんできた。
過去の作品では、
「東京ラブストーリー」(1991年1月7日~3月18日、フジテレビ)が有名だが、
その他にも、
「ラストクリスマス」(2004年10月11日~12月20日、フジテレビ)、
「トップキャスター」(2006年4月17日~6月26日、フジテレビ)、
「Mother」(2010年4月14日~6月23日、日本テレビ)、
「それでも、生きてゆく」(2011年7月7日~9月15日、フジテレビ)、
「最高の離婚」(2013年1月10日~3月18日、フジテレビ)
「Woman」(2013年7月3日 - 9月21日、日本テレビ)
「いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう」(2016年1月18日~3月21日、フジテレビ)
「カルテット」(2017年1月17日~3月21日、TBS)
「大豆田とわ子と三人の元夫」(2021年4月13日~6月15日、関西テレビ)
「スロウトレイン」(2025年1月2日、TBS)
などがあり、大いに楽しませてもらったし、
「最高の離婚」「いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう」「カルテット」などは、
このブログにレビューも書いている。
映画では、『花束みたいな恋をした』(2021年)のレビューで、
映画鑑賞後、本作の(坂元裕二の)脚本を読んでみたいと思った。
それほど、劇中の言葉の数々に魅了された。
あらためて脚本の重要性をひしひしと感じさせられた一作であった。
と記し、
日本映画初となるカンヌ国際映画祭脚本賞受賞した『怪物』のレビューでも、
(この作品は三つの視点で描くという手法で書かれて、普通なら純文学的な“藪の中”に帰することが多いのだが)
坂元裕二が書いた『怪物』は、芸術の香りを残しつつも、
見事にエンターテインメント作品として成立しており、
そこが凄いと思った。
と、これまた絶賛した。
松たか子と坂元裕二(脚本)の組み合わせは、
「カルテット」(2017年1月17日~3月21日、TBS)
「大豆田とわ子と三人の元夫」(2021年4月13日~6月15日、関西テレビ)
で実証済みであるし、
そういう意味でも、
映画『ファーストキス 1ST KISS』は見る価値のある作品であると考えた。
監督は、映画『ラストマイル』の大ヒットでも記憶に新しい塚原あゆ子。

松たか子の相手役を松村北斗が務める他、
共演者として、リリー・フランキー、吉岡里帆、森七菜など、
主役級の俳優が名を連ねているのも魅力だった。

で、公開(2025年2月7日)直後に、イオンシネマ佐賀大和で鑑賞したのだった。

舞台美術の仕事をしている主人公・硯カンナ(松たか子)は、
夫の駈(松村北斗)と結婚して15年になるが、
夫婦関係は冷え切っていて、離婚寸前だった。
離婚届を書いて駈に渡した日、
駈は(離婚届を提出しないまま)事故で亡くなってしまう。
線路に落ちた子供を助けようとして、電車に轢かれて命を落としてしまったのだ。
ある日、カンナが車で高速道路を走っていると、

なんと駈と出会った15年前の夏にタイムトラベルしてしまう。

やはり駈のことが好きだったと気づき、
もう一度恋に落ちたカンナは、

15年後の事故死を防ぐために、
何度も過去に戻って歴史を変えようとするのだった……

話としては王道のタイムトラベルものであり、
何度もタイムリープを繰り返すストーリーは、
流行りの手法であり、もはや、手垢の付いた、ありふれた手法とさえ言える。
タイムトラベルをする設定も安易と言えば安易だし、強引と言えば強引。
だが、本作の狙いはそこにはなく、
15年前の駈とタイムトラベルした現在のカンナが再び出会い、交流して、
(結果は変わらずとも)お互いに変化していくところにある。
とは言え、タイムリープの論理的整合性を問う声は当然あるだろうし、
そのことだけを大きく採り上げて、作品の評価を下げる人もいるだろう。

同じような題材の映画『アバウト・タイム ~愛おしい時間について~』のレビューを書いたとき、私は、次のように論じた。
「過去に戻って人生をやり直したい」と、
誰しも一度や二度は思ったことがあるのではないだろうか?
「あの若く美しかった頃の自分に戻りたい……」
とか、
「あのとき、選択を誤らなければ、もっと違った人生を歩んでいるハズだ……」
とか。
そんな夢のような話を現実化したのが、
映画『アバウト・タイム ~愛おしい時間について~』だ。
まあ、一応、SFのようなものなのだが、
タイムトラベルする方法は、
「暗いところで念じると過去に戻れる(過去にしか行けない)」
という非科学的で陳腐なものだし、(笑)

時間軸に関する問題もアバウト過ぎて、矛盾だらけなので、
『アバウト・タイム』のアバウト(おおまかな。大ざっぱな。)はその意味?
と思ってしまうほど。
(あっ、ちなみに「アバウト・タイム」とは「その時はきた」「今こそ、そのとき」という意味)
そういうアバウトなところは目をつぶってもらうとして……(笑)

問題は、映画の中身だ。
これが実にイイのだ。
彼女との出逢いの仕方に失敗すると、
何度も過去に戻って、アプローチの方法を変えたり、
彼女とベッドインするときも、
うまくいかないと、何度も過去に戻って、
トライの仕方を変えてみる。
これが実に面白く、見る者を楽しませてくれる。
そして、笑わせながら、深く考えさせもするのだ。
何度も過去に戻れることは、幸せなことなんだろうか……と。
(中略)
主人公が、タイムトラベルをすることによって、
いろんなことに気づいていくように、
映画の鑑賞者も、時間について、いろんなことに気づかされることになる。

映画を見終わる頃には、
「今」生きているこの一瞬一瞬が愛おしくたまらなくなる。
そんな映画なのだ。

『アバウト・タイム ~愛おしい時間について~』のレビューなのだが、
『ファーストキス 1ST KISS』にも、そのまま当てはまる。
タイムトラベルする方法は、非科学的で陳腐なものだが、
そういうアバウトなところは目をつぶってもらうとして、
問題は映画の中身で、これが実にイイのだ。
何度も過去に戻って、アプローチの方法を変えたり、トライの仕方を変えてみる。
これが実に面白く、見る者を楽しませてくれる。
そして、笑わせながら、深く考えさせもするのだ。
映画を見終わる頃には、
「今」生きているこの一瞬一瞬が愛おしくたまらなくなる。
『ファーストキス 1ST KISS』も、そんな映画なのだ。

特に、主人公の硯カンナを演じた松たか子の演技が素晴らしい。

コメディエンヌ・松たか子の本領発揮といったところで、
随所で笑わせてくれるし、仕草もチャーミングだ。

松たか子は1977年6月10日生まれなので、現在47歳だが、(2025年2月現在)
本作の(現在の)硯カンナの年齢45歳を年齢相応に演じ、

(驚くべきは)15年前の硯カンナも年齢相応に演じるのだ。

どうやってあれほど若返られるのか分からないが、
〈VFXによって俳優を若返らせるディエイジング技術でも使っているのではないか……〉
と思わされるほどに凄い。
「あの若返った松たか子を見られるだけでも本作を見る価値はある!」
と断言できるほど、
長年松たか子を見続けけてきたファンとしては、驚きの一作なのである。

普通、相手役は、硯カンナ(松たか子)のテンションに合わせて演じがちだが、
駈を演じる松村北斗は、同調することなく、
松たか子よりも遥かに年下であるにもかかわらず、
むしろ、松たか子をリードするような落ち着いた演技で魅せるのだ。

基本的に、硯カンナ(松たか子)と駈(松村北斗)の二人芝居のような感じなので、
他の出演者は、やや霞みがちなのだが、
研究員の駈のことを気にかける大学教授・天馬市郎役のリリー・フランキー、


駈に恋心を抱く天馬の娘・里津役の吉岡里帆、


カンナと共に働く美術スタッフ・世木杏里役の森七菜、


宅配便の配達員役の竹原ピストルなどが、
さすがの演技で、松たか子と松村北斗を盛り立て、作品の質を上げている。

脚本を坂元裕二が担当している映画としては、
『片思い世界』の公開が(2025年)4月4日に迫っているが、

主演を(私の好きな)広瀬すず、杉咲花、清原果耶の三人が務めているので、
こちらも必ず見に行くつもり。

楽しみな春が近づいている。