
旅と同時並行で地元紙(佐賀新聞)に連載していた紀行文、
「ふらふらぶらぶら 日本縦断の旅」を元にして、
カテゴリー「徒歩日本縦断(1995年)の思い出」を再開させた。
今回は、その第6回目。

「ふらふらぶらぶら 日本縦断の旅」⑥天の橋立、城崎温泉へ
(※新聞掲載時よりも、漢数字を算用数字にしたり、改行を多くして読みやすくしています)
前回は富山県に入るところで終わったが、
その後、(新聞社の方の都合での)休載もあって二週間が経過、
金沢、福井、敦賀、出石、天の橋立、城崎と歩いてきた。
ほとんど観光地巡りもせず通過するのみであったが、
天の橋立にはちょっと寄り道をした。
あの橋立の中はどうなっているのか見てみたいと思ったからだ。
実際に歩いてみると、
橋立そのものは平凡な松林であったし、

浜辺も美しいとは言えなかった。

しかし、山に登り、その中腹の展望台から見た全景にはさすがと思わせるものがあった。


城崎温泉の場合は、もっと俗っぽいところだと勝手に思い込んでいたので、
意外にその落ち着きのある町の雰囲気に感心した。

城崎温泉といえば志賀直哉の『城の崎にて』を思い出すが、
彼のように優雅な長期間の湯治はできないので、
300円なりの地蔵湯という外湯に入り、
駅で一夜を明かし、少しだけその雰囲気を味わった。
『城の崎にて』には、蜂や井守や鼠など小動物の死が描かれているが、
ぼくが歩いていて、路上でもっともよく見かけるのも動物の死である。
蛙、蚯蚓(みみず)、蝸牛(かたつむり)、蛇、犬、猫、
それに人間(道路わきに供えられている花のなんと多いことか)。
実におびただしい数の死が路上に転がっている。
城崎駅では閉め出されることもなく、朝まで快適に寝ることができたが、
駅にはぼくのほかにもう一人の駅泊者がいた。
それは背の低い痩せたおばあさんで、彼女は、駅の待合室にいる人に、
列車に乗り遅れて家に帰れないのであなたの家に泊めてほしいと哀願してまわっていた。
しかし、誰にも相手にされなかった。
ぼくの隣にいた人が、
「あのおばあさんはいつも駅で寝ているよ」
と教えてくれた。
最終の列車が出て、待合室に人がいなくなると、
淋しいのか、おばあさんはぼくに話しかけてきたが、
疲れ切っていたぼくは、話し相手になってやることもできず、すぐ眠ってしまった。
翌朝5時ごろ、ぼくが出発の準備をしていると、
おばあさんは起き上がって、
「もう行くのん?」
と訊いてきた。
「うん、行くよ」
と答えると、
おばあさんは新聞紙を顔にかけて再び長いすに身を横たえたのだった。

新聞社の方の都合で(大きなニュースや臨時ニュースなどで紙面が取られて)、
休載が何度かあって、
そのときは二週間分の紀行文を書かなければならないので大変であった。
小さなスペースの記事なので、
そこに二週間分の出来事を書くこと自体がそもそも無理で、(笑)
いくつかの場所に絞って文章を書くようにしていた。
この回は、天の橋立、城崎温泉でのことを書いたのだが、
その他の場所でも、いろんな体験をさせてもらった。
富山県に入る前には、
新潟県の親不知を歩いた。


親不知駅(無人駅)で一泊したのだが、
夜中に、パッと顔にライトを当てられ、警官二人に起こされて職務質問を受けた。
怪しげな男が駅に寝ていると通報があったのかもしれない。
1995年は「地下鉄サリン事件」が起きた年で、
逃げているオウム真理教の信者と間違われた可能性もある。

親不知では、
(このブログにも何度か書いているが)栂海新道の登山口の前を通ったとき、
「これからアルプスまで登るんですか?」とか、
「アルプスから下りてきたんですか?」などと訊かれた。
当時は、山登りにはそれほど興味はなかったので、
この栂海新道登山口のゲートを見たとき、
〈ああそうか、ここがアルプスへの登山口なんだ~〉
と思い、写真を撮った。

2012年に、海抜0メートルから登る北アルプス「白馬岳」をやったとき、
この登山口から登ったのだが、

(1995年から)17年後に、この登山口から自分が登り始めるなんて、
当時は思いもしなかったことである。(笑)

京都府宮津市由良にある「安寿の里もみじ公園」の中の「安寿と厨子王」像。

小学生の頃に見たアニメ映画『安寿と厨子王丸』を見て、安寿に憧れた。

「古事記」や「日本書紀」にも名前が登場するほど古い歴史を持つ、
但馬の小京都「出石」(兵庫県豊岡市)。
素敵な町だった。

※「ふらふらぶらぶら 日本縦断の旅」➀~⑫
(タイトルをクリックするとレポが読めます)
➀宗谷岬から留萌へ
➁留萌から長万部へ
③長万部から函館、青森へ
④秋田から象潟、鳥海山へ
⑤「良寛」ゆかりの地を巡る
⑥天の橋立、城崎温泉へ
⑦余部鉄橋、松江、出雲へ
⑧萩と、仙崎と、金子みすゞ
⑨八代大花火、球磨川星花火
⑩佐多岬に到着、そして
⑪沖縄本島縦断
⑫日本最南端・波照間島にて