
以前、夕刊フジのZAKZAKというネット配信で、
「75歳を待たずに死亡、なぜ増えているのか 無事通過するには…生活を若い頃と大きく変える〝65歳以前の努力〟が必要」(2024/3/12 15:30配信)
というタイトルの記事を読んだ。
書いたのは、富家孝氏。

【富家孝】(ふけ・たかし)
医師、ジャーナリスト。1972年東京慈恵会医科大学卒業。病院経営、日本女子体育大学助教授、新日本プロレスリングドクターなど経験。著書計68冊。最新刊『それでもあなたは長生きしたいですか? 終末期医療の真実を語ろう』(ベストブック)が話題に。

私は医師という仕事柄、有名人の訃報にはくまなく目を通します。自分が後期高齢者になったこともあります。そこで気になっているのは、昨年来、75歳(後期高齢者)を待たずに亡くなられる有名人が多いことです。平均寿命は、男性81.05歳、女性87.09歳(2022年)。人生100年時代と言われるいま、75歳前というのはいかにも早すぎます。
「先生、最近、早死にする有名人が多いと思います。なにか理由でも?」と、本当によく聞かれます。
先週末、「Dr.スランプ」「ドラゴンボール」で知られる漫画家、鳥山明さんが1日、68歳で亡くなったことが報じられ悲しみに包まれました。死因は急性硬膜下血腫でした。同じ日に国民的アニメ「ちびまる子ちゃん」でまる子を演じる声優のTARAKOさんが63歳で急死したことも伝えられアニメ界の相次ぐ訃報に驚きました。
70代の死も昨年来、多いように感じます。八代亜紀さん(歌手、73歳=膠原病・急速進行性間質性肺炎)、坂本龍一さん(ミュージシャン、71歳=直腸がん・肺転移)、谷村新司さん(ミュージシャン、74歳=急性腸炎)、伊集院静さん(作家、73歳=肝内胆管がん)、門田博光さん(元プロ野球選手、74歳=糖尿病・脳梗塞)、大橋純子さん(歌手、73歳=食道がん)、もんたよしのりさん(ミュージシャン、72歳=大動脈解離)らが亡くなり、みな、75歳前でした。
鳥山さん、TARAKOさんのように70代を待たず世を去った方もいます。北別府学さん(元プロ野球選手、65歳=成人T細胞白血病)、寺尾常史さん(元大相撲・寺尾、60歳=うっ血性心不全)、長岡末広さん(同・朝潮、67歳=小腸がん)、KANさん(歌手、61歳=メッケル憩室がん)…。
このように列記すると、有名人ほど早死にするように思えます。しかし、それは印象にすぎないでしょう。有名人は訃報が大きく扱われますが、突出して多いというデータはありません。
一方、印象が生まれる余地がない日本人全体の統計から、75歳以前の死亡者数を見ると、確実に増えています。なぜなら、現在75歳前の世代というのは、人口が最も多い「団塊世代」(1947~49年生まれ)とそれに続く世代だからです。厚労省の「簡易生命表」によれば、男女共80歳を越えている平均寿命を待たずに多くの人が亡くなっています。そして、平均寿命より重要なのは健康寿命(男性72.68歳、女性が75.38歳=19年調べ)です。健康寿命は平均寿命よりはるかに早く来るのです。
厳しい現実を述べると、平均寿命まで生きる人は約半数で、健康寿命を境に多くの人が亡くなります。もっと端的に言うと、男性は約4分の1が75歳までに亡くなり平均寿命の81.05歳には半数が亡くなります。女性も85歳までに約3分の1が亡くなり、平均寿命の87.09歳までに半数が亡くなります。
このように見てくると、後期高齢者になる75歳前後にハードルがあることがわかります。
後期高齢者になった私の実感から言うと、「75歳」を無事通過するためには、その10年前、いわゆる高齢者と呼ばれるようになる65歳、あるいはそれ以前からの努力が必要です。食生活、運動生活などを若い頃と大きく変える必要があります。
人は年を取って初めて「残りの人生、精いっぱい生きよう」と思います。しかし、年を取ってからでは遅いのです。多くの有名人と接してきた経験から言わせていただくと、才能ある有名人ほど生き方を変えようとしません。若いときと同じように生きようとするのです。残念です。

私は、この富家孝氏の記事よりも前の昨年(2023年)11月12日に、
ミュージシャンの訃報相次ぐ ……70代で亡くなったミュージシャンたち……
とのタイトルで、
「人生100年時代」は大ウソ……という記事をすでに書いていて、
60代前半までは、誰もが比較的元気だ。
だが60代後半から躰のあちこちで支障が出るようになり、
70代には急速に体が老衰してくるし、亡くなる人も多くなる。
70代は実に危険な年代なのである。
と、警鐘を鳴らしていた。
また、2019年に書いた映画『長いお別れ』のレビューでは、
次のように記している。
……調べてみると、
私の誕生年(1954年)に生まれた日本人は、約177万人。
私が60歳になった年に、私と同年齢の人の数は、約159万人。
生まれた人の数の89.8%で、
還暦になった時点で、統計上でもすでに1割の人が亡くなっていたのだ。
〈60歳で1割の人が亡くなっているとすると、70歳、80歳、90歳の時点ではどうなんだろう……〉
と思って、さらに調べてみると、驚くべきことが判った。
女性は男性よりもかなり長生きするので、男性だけに限って言えば、
70歳で、約2割、
80歳で、約4割、
90歳で、約8割の人が亡くなっていることが判った。
言葉は悪いが、倍々ゲームなのである。
以上は極私的な調査だったので、(男性の場合に限ってだが)
60歳までに10人に1人が亡くなり、(10%)
70歳までに5人に1人が亡くなり、(20%)
80歳までに5人に2人が亡くなり、(40%)
90歳までに5人に4人が亡くなる、(80%)
とは、あまり大っぴらには言えなかったのだが、(言ってるけど)
富家孝氏もほぼ同じようなことを言われていたので、
お墨付きを得たようで心強く思ったことであった。
厳しい現実を述べると、平均寿命まで生きる人は約半数で、健康寿命を境に多くの人が亡くなります。もっと端的に言うと、男性は約4分の1が75歳までに亡くなり平均寿命の81.05歳には半数が亡くなります。女性も85歳までに約3分の1が亡くなり、平均寿命の87.09歳までに半数が亡くなります。

これは(医師による)けっこう衝撃的な証言ではあるまいか?
富家孝氏によると、男性の場合、
75歳までに4人に1人が亡くなり、(25%)
81歳までに2人に1人が亡くなる。(50%)
というのだから。
(……ということは70代で男性の半数近くの人は亡くなってしまうのだ)
そして、
2019年の厚生労働省の調査によると、認知症の割合は、
80代前半では男性20.0%、女性24.0%だが、
80代後半になると男性35.6%、女性48.5%と大きく増加するとのこと。
たとえ80代まで生き残ったとしても、認知症になる確率はかなり高いのだ。
「身も蓋もないことを言うな!」といわれそうだが、これが現実である。
はたしてあなたは、何歳で「何人に1人」に選ばれるのだろうか?

※先日(11月14日)のNHKの歌番組「寺尾聰 人生の集大成ライブ!」で、
〈俺が死んだら「ルビーの指輪」ではなく、この曲を流してほしい……〉
と寺尾聡自身が語っていた曲「出航 SASURAI」。