
本作を見たいと思った理由は二つ。
①黒木華が出演している。

②廣木隆一監督作品である。

黒木華は私の大好きな女優の一人で、
主演映画である、
『シャニダールの花』(2013年)
『リップヴァンウィンクルの花嫁』(2016年)
『日日是好日』(2018年)
『ビブリア古書堂の事件手帖』(2018年)
『先生、私の隣に座っていただけませんか?』(2021年)
などはもちろん、
主演ではなくても、
『草原の椅子』(2013年)
『舟を編む』(2013年)
『小さいおうち』(2014年)
『繕い裁つ人』(2015年)
『幕が上がる』(2015年)
『ソロモンの偽証』(前篇・事件、後篇・裁判)(2015年)
『永い言い訳』(2016年)
『散り椿』(2018年)
『来る』(2018年
『甘いお酒でうがい』(2020年)
『浅田家!』(2020年)
『星の子』(2020年)
などの傑作、秀作、佳作で、存在感を示しており、
私も鑑賞後には必ずレビューを書き、黒木華の魅力を伝えてきた。
こうして列記してみると、
休みなく映画に出演していることが判るし、
その間にもTVドラマにも出演し、
「重版出来!」(2016年4月12日~6月14日、TBS)
「みをつくし料理帖」(2017年5月13日~7月8日、NHK総合)
「凪のお暇」(2019年7月19日~9月20日、TBS)
などで主演し、
現在も、主演ドラマ(瀬古凛々子役)である、
「ゴシップ#彼女が知りたい本当の〇〇」(2022年1月~、フジテレビ)
で我々を楽しませてくれている。

本作『ノイズ』は、黒木華の主演作ではないが、
彼女が出演している映画ならば見たいと思った。

廣木隆一監督は当たり外れの多い監督なのだが、(あくまでも私見です)
時々、
『ヴァイブレータ』(2003年)
『彼女の人生は間違いじゃない』(2017年)
のような傑作をぶち込んでくる監督なので、油断できず、
チェックしておくべき監督の一人として用心している。(笑)
本作『ノイズ』は漫画が原作で、
題材からして一般的なエンターテインメント作品という感じなので、
『彼女の人生は間違いじゃない』級の傑作は望めそうにないが、(コラコラ)
「当たり」を期待して映画館に向かったのだった。

時代に取り残され過疎化に苦しむ孤島・猪狩島。
島の青年・泉圭太(藤原竜也)が生産を始めた黒イチジクが高く評価されたことで、

島には地方創生推進特別交付金5億円の支給がほぼ決まり、
島民たちに希望の兆しが見えていた。
しかし、小御坂睦雄(渡辺大知)という男の登場によって、島の平和な日常が一変する。

小御坂の不審な言動に違和感を覚えた圭太と、

幼なじみの猟師・田辺純(松山ケンイチ)、
新米警察官の守屋真一郎(神木隆之介)の3人は、
小御坂を追い詰めていくが、圭太の娘の失踪を機に誤って小御坂を殺してしまう。

島の未来と大切な家族を守るため、死体を隠蔽することを決意する3人。
〈この男が消えたところで、だれも追ってこない〉
そう思った矢先、予想外の事態に発展する。
なんと、その男は、出所したばかりのサイコキラーであったのだ。
足取りを追う刑事・畠山努(永瀬正敏)らが、大挙して島に押し寄せてくる。

24時間体制で執拗な捜査を繰り返す県警。
その包囲網が圭太たちを追い詰める。
正義のために島の生活を踏みにじる者(警察)と、
島の生活を守ろうとする者(島民)の攻防によって、
島の日常は崩れ落ち、
何もかもが少しずつ狂っていくのだった……

私は元々、閉ざされた空間(山奥の村や、島など)で起きるミステリーが好きなので、
本作『ノイズ』も楽しく見ることができた。
現代版・横溝正史原作映画といった感じで、
少し懐かしさも感じさせる作品であった。

泉圭太(藤原竜也)
田辺純(松山ケンイチ)、
守屋真一郎(神木隆之介)の3人が死体を隠蔽することから始まる物語なので、
犯人は最初から判っており、
3人が警察によって追い詰められていく……といった単純な展開を予想していたのだが、
違った。
死体を隠すことに必死な3人の前に予想外の新たな事件が起こり、
死体も増えていき、にっちもさっちもいかなくなっていくのである。(笑)
そして、ラストには、新たな“謎解き”も用意されている。
“ある人物”がとんでもない罠を仕掛け、別の“ある人物”を陥れようとしていたのだ。
そこに至り、この物語が、単なる倒叙ミステリーではなく、
人の情念を描いた人間ドラマであったことを知らされる。

藤原竜也、松山ケンイチ、神木隆之介の好演が、
この作品を「見るべきもの」にしているのは間違いないのだが、

(特に神木隆之介の演技は素晴らしかった)

「鑑賞する映画は出演している女優で決める」主義の私としては、
どうしても女優の方に目がいってしまう。
まずは、主人公・泉圭太(藤原竜也)の妻・加奈を演じた黒木華。

それほど出演シーンも多くとは言えず、
この地味な泉圭太の妻・加奈の役が、
なぜ黒木華だったのか……それが疑問だったのであるが、
その理由が、最後の最後で判明する。
そして、
〈やはり加奈役は黒木華でなければならなかった〉
と見る者に思わせる。
ネタバレになるので詳しくは記せないが、
〈相手がもし黒木華であったならばさもありなん……〉
と、私をも納得させるものがあった……とだけ記しておこう。

畠山努(永瀬正敏)と行動を共にする刑事・青木千尋を演じた伊藤歩。

伊藤歩を最初に「好きな女優」と認知したのは、
『渾身 KON-SHIN』(2013年)という映画であった。
私の好きな作家・川上健一の小説が原作であったことから鑑賞した作品であったのだが、
主演していた伊藤歩にすっかり魅せられてしまった。
多美子役の伊藤歩。
ミュージシャンでもあるし、
現代的な女性という感じがするが、
この映画では、
どちらかというと、やや古風な日本女性を演じていて、
そしてそれがピタッとハマっていて、実に素晴らしかった。

〈伊藤歩って、こんなに素敵な女優だったか……〉
とあらためて思わせられ、すっかり彼女に魅了されてしまった。
伊藤歩という女優の、その人生でいちばん美しい瞬間が、
この作品の中に封じ込められている。
それは、とても幸運で、幸福なこと。
本作は、彼女の代表作になるに違いない。

とレビューに書いたのだが、(全文はコチラから)
以降、伊藤歩が出演する映画やTVドラマもなるべく見るようにしてきた。
『横道世之介』(2013年)
『ジャッジ!』(2014年)
『昼顔』(2017年)
『海辺の映画館―キネマの玉手箱』(2020年)
などの映画ではレビューも書いている。
本作『ノイズ』では、3人の男を追い詰めていく刑事の役であったが、
目の演技(そのキツめの鋭い目が私の好みであるのだが)が印象的で、
畠山努(永瀬正敏)だけでは殺伐とした風景であったと思うが、
彼女がいることで美しい画になっていたように思う。

猪狩島町長・庄司華江を演じた余貴美子。
昔から好きな女優で、
余貴美子の出演作もこれまでなるべく見るようにしてきた。
彼女の出演作は多すぎるので、ここではもう余計な解説はしないが、(笑)
本作『ノイズ』での余貴美子は、
イッちゃってて、ブッ飛んだ町長を演じていて、
「怪演」と表現してもイイほどであったし、けっこう笑わせてくれた。
こんな余貴美子はあまり見たことがなかったので、
なんだか得した感じ。
余貴美子は、やはり「凄い」と思った。

横田昭一(酒向芳)の妻で、
横田庄吉(柄本明)の義理の娘となる洋子を演じた菜葉菜。

普段、私が見るような映画にはあまり出演していない女優で、(笑)
菜葉菜というインパクトのある名前が印象に残るものの、
本名も年齢も非公表とのことで、
菜葉菜については、正直、私は何も知らなかった。
菜葉菜という女優をじっくり見たのは本作が初めてのような気がする。
で、じっくり見た結果、「好い女優」だと思った。

個性的なその顔立ちも私の好みであるし、

演技も巧く、
〈今後は注目していきたい……〉
と思っていたら、
明日(2022年2月4日)公開の映画『夕方のおともだち』で、
主演するとのこと。(村上淳とのW主演)

しかも、監督は、『ノイズ』と同じく廣木隆一。

予告編を見たら、なんだか傑作の予感がした。
見たいと思って上映館を調べたら、
九州では3館のみで、
その中に、佐賀のシアターシエマもあった。
たぶん、数ヶ月遅れての上映になると思うが、
必ず見に行きたいと思っている。
スペースの関係で、サブタイトルを、
……黒木華、伊藤歩、菜葉菜に魅せられる廣木隆一監督作品……
としたが、本当は、
……黒木華、伊藤歩、余貴美子、菜葉菜に魅せられる廣木隆一監督作品……
としたかった。
黒木華、伊藤歩、余貴美子の3人にスクリーンで逢えたこと、
そして、菜葉菜という素晴らしい女優がいることに気づけたことが、
映画『ノイズ』の収穫であった。