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映画『浜の朝日の嘘つきどもと』 ……映画愛にあふれるタナダユキ監督作品……




新型コロナウイルスの第3波が来襲していた昨年(2020年)末、
私はひとつの決断をした。

「来年(2021年)一年間は県外には出ない」と。

新型コロナウイルスとの闘いは長期戦になることが予想されたので、
第4波、第5波と、
感染者の数は、増えたり減ったりを繰り返しながら推移するだろうが、
それらに一喜一憂することなく、
(他人はどうであれ)自分のやれることをやり、成すべきことを成そう……
と思ったのだ。

私が県外に出るのは、
①他県の山に登山に行く。
佐賀県で上映されない映画を他県に見に行く。
佐賀県で上映が予定されている映画が、数ヶ月遅れであるため、早く見たいと他県に見に行く。
佐賀県で上演されない演劇やコンサートを他県に観に行く。
⑤仕事、結婚式、法事などで他県に行く。

などの理由が考えられるが
登山に関しては、数年前から、家から近い山を主体とした山歩きに変えていたし、
65歳で定年退職してからは、今の仕事で他県に行くことはなくなっていたし、
新型コロナウイルスの影響で、演劇やコンサートや冠婚葬祭は軒並み中止になっていたし、
「県外に出ない」という決意は、それほど難しいものではなかった。
問題は、映画。
佐賀県で上映されない映画は多いし、
上映されても数ヶ月遅れであるため、
「見たい」という気持ちが勝り、気持ちが抑えられないようなときもあった。
しかし、「県外に出ない」と決めた以上は、
佐賀県内で見ることができる映画を大事に見よう!〉
〈数ヶ月遅れでも、見ることができるだけで幸せではないか!〉
と思い直し、
県内で上映される映画のみを鑑賞し、レビューを書いてきた。
そのことによって、いろいろと気づかされたこともあり、
すべてが悪いことばかりではないと思わされた。
新型コロナウイルスの影響で、映画館も苦境に立たされていたし、
佐賀県のミニシアター系の映画館、
シアターシエマ(佐賀市)や、シアターエンヤ(唐津市)などは、
特に影響を受けていたことと思う。
公開日が大都市より遅いという理由で、他県(主に福岡県)に映画を見に行っていた私など、
せっかく佐賀県で良質な映画を上映してくれる映画館に対して、
裏切り行為をしていたとも言える。
今年、シアターシエマや、シアターエンヤに通ううちに、
地元に存在する映画館の大切さや有難さにも気づけたし、
数ヶ月遅れでも見たい映画を見ることができることに幸せを感じた。
そのことは、私のレビューを書く姿勢にも影響を与えた。
レビューの締めで、私は「ぜひぜひ」と皆さんに映画を薦める言葉を書いていたが、
それを書かなくなったのだ。
その理由のひとつは、
大都市の公開日よりも数ヶ月遅れてレビューを書くので、
私がレビューを書いた頃にはもう映画が上映されなくなっている地域が多くなっているということがあった。
ふたつ目の理由は、
これまで、「ぜひぜひ」を安易に使い過ぎていたと思ったから。
「ぜひぜひ」は便利な言葉で、レビューの最後に記しておけば、
とりあえず文章を終えることができ、
それほど薦めたくなる映画ではなくても、
「ぜひぜひ」と書いていることがままあった。(コラコラ)
レビューは私自身の感想であるので、
別に他人に薦めなくてもいいわけで、
今後は「ぜひぜひ」を使わないでレビューを書こうと思った。
なので、今年(2021年)は一度も「ぜひぜひ」を使っていない。(気づいてました?)

いつものように前置きが長くなった。(笑)

本日紹介する映画『浜の朝日の嘘つきどもと』は、
福島県南相馬に実在する映画館を舞台に、
映画館の存続に奔走する女性の姿を描いたタナダユキ監督のオリジナル脚本を、
高畑充希主演で映画化したもの。
主人公・莉子役を高畑充希が演じるほか、
大久保佳代子柳家喬太郎甲本雅裕光石研吉行和子らが顔をそろえる。
本作と同じタナダユキ監督&高畑充希主演で、
福島中央テレビ開局50周年記念作品として2020年10月に放送された同タイトルのTVドラマ版の前日譚にあたるという。


新型コロナウイルスの影響もあり、
地方で(シネコンではない)小さな映画館を営むことは難しくなっており、
映画館の存続に奔走する女性の姿を描いた物語ということで、
〈見たい!〉
と思った。
(2021年)9月10日に公開された映画であるが、
佐賀では(珍しく)1ヶ月半遅れの10月29日から(シアターシエマで)公開された。
で、先日、やっと見ることができたのだった。



シネコンと呼ばれる複数のスクリーンを持つ複合映画館の台頭で、
厳しい経営状況に陥っていた「朝日座」。


100年近い歴史を持ち、主に旧作映画を上映する名画座として地元住民に愛されていたが、
時代の流れには逆らえず、
支配人の森田保造(柳家喬太郎)はついに閉館の決意を固める。


古い35mmフィルムを一斗缶に放り込み火を着けた瞬間、
森田の背後からその火に水をかけて邪魔する女性(高畑充希)が現れる。


茂木莉子と名乗るその女性は、(本名は浜野あさひ)
経営が傾いた「朝日座」を立て直すために東京からやってきたという。


しかし、「朝日座」はすでに閉館が決まり、
森田も打つ手がないと決意を変えるつもりもない。


「ここが潰れたら本当に困る!」
と主張する莉子は、この町に住んで、なんとかすると言う。


それは、「ある人との約束」が理由だった。
莉子が高校1年生のとき、東日本大震災が起きた。
タクシー会社で働いていた莉子の父・浜野巳喜男(光石研)は、


除染作業員の送迎を担当していたが、
やがて莫大な利益をあげたと噂されるようになり、
莉子は友達が一人もいなくなってしまう。
そんな高校2年生のある日、
立入禁止の屋上にいるところを、数学教師の田中茉莉子(大久保佳代子)に見つかり、
視聴覚準備室に連れて行かれる。


茉莉子先生と一緒に映画『青空娘』のDVDを鑑賞した莉子は、


映画の魅力を知るのだった。


その後、家族で東京に移住するが、
高校3年生の一学期でドロップアウトしてしまう莉子。
家に居場所がない莉子は、郡山にある茉莉子先生の家を訪ねて、二人の同居生活が始まる。
茉莉子先生との楽しい毎日は長くは続かなかったが、
莉子が実家に戻るまで、二人の時間には、いつも映画があった。


2019年、映画の配給会社に勤めていた莉子のもとに、
茉莉子先生が病に倒れたという連絡が届く。
8年ぶりに茉莉子先生と再会すると、
「お願いがある」
と言われるのだった。
南相馬にある朝日座という映画館を立て直してほしい」
と……



新型コロナウイルスの感染拡大により、
緊急事態措置及びまん延防止等重点措置が実施されるなどして、
いろんな分野で、様々なことが制限され、
人々が集う「場」が存続の危機に見舞われた。
そのひとつに映画館もある。
本作『浜の朝日の嘘つきどもと』は、
人々が集う「場」としての映画館の重要性を訴えた、
映画愛にあふれた、タナダユキ監督の秀作であった。


タナダユキ監督は私の好きな監督のひとりで、


百万円と苦虫女』(2008年)でタナダユキ監督作品に出合って以降、
ふがいない僕は空を見た』(2012年)、
四十九日のレシピ』(2013年)、
『ロマンス』(2015年)、
『ロマンスドール』(2020年)などのレビューを書いてきた。
家族愛を題材にする監督が多い中で、
タナダユキ監督は、これまで、
「人間関係は必ずしも家族じゃなくても成り立つのではないか?」
と、問題提起してきたように思う。
たとえば、『四十九日のレシピ』では、
母が残したあるレシピによって、離れ離れになっていた家族が再び集い、
それぞれが抱えた心の傷と向き合いながら再生していく姿を描いていたが、
二階堂ふみが演じる(家族ではない)井本幸恵(通称イモ)が重要な役割を果たしていた。
四十九日のレシピ』の公開時、

最初にこの映画を作ろうと思ったときに、"助けたり助けられたり"という人間関係は必ずしも家族じゃなくても成り立つのではないか、という考え方を大事にして作ろうと思いました。本作で描かれているハルやイモなどは、一瞬だけ目の前に現れて人生をかき回して帰っていくだけのキャラクターかもしれない。でも、血のつながった家族だから全てを分かり合えるわけでもないし、世の中には色々な人との関わり方があると思う。この映画が2013年に世の中に出る意味はそこにあるような気がします。

タナダユキ監督は語っていたが、
東日本大震災以降、日本人は家族至上主義へと回帰し、血のつながりを求めるようになり、
家族の絆の重要性を訴える物語が多く生み出されてきたが、
タナダユキ監督はそれを十分に解った上で、
「人間関係は必ずしも家族じゃなくても成り立つのではないか?」
と、問題提起し続けているように思う。
本作『浜の朝日の嘘つきどもと』にもそれは引き継がれていて、
家族のことで傷付いた主人公が、
地域の住民と協力しながら、映画館を再生させていく姿が描かれており、
家族愛も否定することなく、血のつながりの大切さ、大事さも、しっかり描きつつ、
「他人同士でも家族同様の人間関係が築ける」ということを見せてくれる。
映画の最後では、
保造(柳家喬太郎)と莉子(高畑充希)が本当の親子のように見えたし、
町の人々も二人の家族のように思えた。
これは、私にとっても、実に、歓びに満ちた体験であった。



主人公の茂木莉子(本名は浜野あさひ)を演じた高畑充希


高畑充希という女優を強く印象付けられたのは、
連続テレビ小説NHK)「ごちそうさん」(2013年~2014年)での、
川久保(西門)希子役であったのだが、
以降、
いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう」(2016)
過保護のカホコ」(2017年)
「同期のサクラ」(2019年)
「にじいろカルテ」(2021年)
などのTVドラマで、彼女の演技を楽しんできた。
映画では、
アオハライド』(2014年)
バンクーバーの朝日』(2014年)
『怒り』(2016年)
『アズミ・ハルコは行方不明』(2016年)
DESTINY 鎌倉ものがたり』(2017年)
『こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話』(2018年)
町田くんの世界』(2019年)
『引っ越し大名!』(2019年)
ヲタクに恋は難しい』(2020年)
『キャラクター』(2021年)
などの作品を鑑賞し、レビューも書いてきた。(書いていないものあるけど……)
演技が上手いのは前から知っていたが、
本作『浜の朝日の嘘つきどもと』を見て、彼女の“美しさ”にあらためて気づかされた。


なぜなら、タナダユキ監督が、高畑充希の顔をアップで多く撮っていたから。


〈こんなにも美しく、魅力的な女優さんだったんだ……〉
と、再認識した次第。



田中茉莉子を演じた大久保佳代子


意外に(と言っては失礼だが)良かったのが大久保佳代子で、
茉莉子は、男好きで、男なしではいられないような性格で、


でも、すぐにフラれて、(笑)


いい加減な性格の人物のようで、それでいて優しくて、
人間味あふれる憎めないキャラクターを演じていたのだが、




芸人・大久保佳代子の人柄も相俟って、
私の目には実に魅力的な人物に映った。


〈第8回「一日の王」映画賞(2021年公開作品)の最優秀助演女優賞候補にノミネートしなければならない……〉
と思ったほどに。
昨年(2020年)見た映画『喜劇 愛妻物語』でも、
主人公・豪太(濱田岳)のバイト先の浮気相手・吾妻を演じ、
ノリノリの過剰な演技で笑わせられたが、




これからも女優・大久保佳代子に大いに期待できると思った。



莉子が“おっさん”と呼ぶ朝日座の支配人・森田保造を演じた柳家喬太郎


チケットがなかなか取れないほど人気がある落語家の柳家喬太郎であるが、
ちょくちょく(特にNHKの)TVドラマでも見かけることがあり、
映画でも『スプリング、ハズ、カム』(2017年)という主演作がある。




既成の俳優にはない独特の雰囲気があり、
本作でも、話し方の間や抑揚が素晴らしく、
力の抜けた飄々とした演技が光っていた。
普段、ひとりで話している噺家ではあるが、
莉子とおっさんの掛け合いでは、(コントのように面白い!)
莉子の強いツッコミを優しく受け止め、軽くいなしたりして、
掛け合いを楽しんでいるようにも見えた。


柳家喬太郎だけではなく、大久保佳代子も、竹原ピストルもそうであったが、
異業種で活躍している人を俳優としてキャスティングしている場合、
演技はそれほど上手くなくても、
従来の俳優にありがちな「いかにも」な演技がないのが新鮮で、
ずっと見ていられるような気がした。



その他、
茂木莉子こと浜野あさひの父で、
タクシー会社「浜野朝日交通」の社長・浜野巳喜男を演じた光石研


地元の不動産会社「岡本不動産」の経営者・岡本貞雄を演じた甲本雅裕


資産家の未亡人で、「朝日座」の常連客・松山秀子を演じた吉行和子


映画の最後にちょっとだけ登場する川島健二を演じた竹原ピストルなどが、
印象深い演技で作品を支えていた。



こうして、本作の登場人物の役名を列記してみると、
それぞれが、有名な映画監督や俳優から取られていることが判る。
大久保佳代子が演じた田中茉莉子は、岡田茉莉子の茉莉子だろうし、


柳家喬太郎が演じた森田保造は、
映画の中でも扱われる映画『青空娘』の監督・増村保造の保造だろうし、


光石研が演じた浜野巳喜男は、
成瀬己喜男監督の己喜男だろうし、


吉行和子が演じた松山秀子は、
高峰秀子松山善三と結婚して松山秀子となった)の秀子だろうし、


甲本雅裕が演じた岡本貞雄は、
岡本喜八監督と山中貞雄監督の合成のようだし、(違うかもしれんけど)

竹原ピストルが演じた川島健二も、
川島雄三監督と溝口健二監督の合成のような気がする。(違うかもしれんけど)


登場人物の名前にも、こうした遊び心というか、「映画愛」にあふれたユーモアがあり、
登場人物のキャラクター、本作に関わっているスタッフのみならず、
『浜の朝日の嘘つきどもと』という映画全体から「映画愛」が伝わってきて、
映画好きにはたまらない作品であった。


『浜の朝日の嘘つきどもと』というタイトルにもあるように、
莉子(本名は浜野あさひ)がとっさに名乗る茂木莉子(もぎりこ)という名前にはじまり、
“おっさん”こと森田保造も、
茉莉子先生も、
思わず笑ってしまうような嘘を、いけしゃあしゃあと吐く。(笑)
この「嘘つきども」の嘘は、嘘のための嘘ではなく、
人を傷つけないための嘘であり、
真実を伝えるための嘘であったりする。
鑑賞後には、この映画そのものが、
真実を伝えるための嘘(虚構)であったような気がした。


映画の最後に、朝日座にやってくる川島健二(竹原ピストル)がちょっとだけ映るが、
TVドラマの方では、
この竹原ピストルが重要な役(生きる希望を失った映画監督)を演じているようなので、
ここで映画は、ドラマ版の前日譚であることが判る。
できれば、いつの日か、ドラマ版も観てみたいと思った。

『浜の朝日の嘘つきどもと』を鑑賞し、
あらためて佐賀県にある映画館に感謝する気持ちが沸き起こり、
今後は一層、県内での映画鑑賞を中心に映画を楽しんでいこうと思った。
やはり、映画はイイな~



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