
和月伸宏の漫画『るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-』を原作とした、
『るろうに剣心』実写映画シリーズ(佐藤健主演、大友啓史監督)は、これまで、
『るろうに剣心』(2012年8月25日公開)
『るろうに剣心 京都大火編』(2014年8月1日公開)
『るろうに剣心 伝説の最期編』(2014年9月13日公開)
の3作があった。
そして、今年(2021年)、完結編2部作として、
『るろうに剣心 最終章 The Final』(2021年4月23日公開)
『るろうに剣心 最終章 The Beginning』(2021年6月4日公開)
が公開された。
当初は、昨年(2020年)の7月3日と8月7日にそれぞれ連続公開される予定だったが、

新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、約10ヶ月遅れの公開となった。
前3作は公開時に映画館で見ており、
完結編2部作も楽しみにしていた。
ただ、この2作品は物語的に連動しており、
1ヶ月以上も間が空くと、(前期高齢者なので)細部を忘れてしまう恐れがある。
〈できれば続けて見たい!〉
と思った。
で、4月23日公開の『るろうに剣心 最終章 The Final』はこれまで見ずにきて、
『るろうに剣心 最終章 The Beginning』の公開日である6月4日に、
2作を続けて見ることにした。
109シネマズ佐賀の6月4日の上映スケジュールを見ると、
9:50~12:15『るろうに剣心 最終章 The Final』
12:25~14:55『るろうに剣心 最終章 The Beginning』
と、10分間の休憩をはさんで、続けて見ることができそうである。
約5時間の映画鑑賞は(前期高齢者にとっては)かなりハードであるが、
ワクワクしながら109シネマズ佐賀へ駆けつけたのだった。

『るろうに剣心 最終章 The Final』

かつて“人斬ひときり抜刀斎ばっとうさい”として恐れられ、
激動の幕末を刀一本で戦い抜いた男、緋村剣心(佐藤健)。
新時代を迎え、二度と人を殺さないと誓う。
斬れない“逆刃刀さかばとう”に持ち替え、
日本転覆を狙った志々雄真実をはじめ数々の敵との戦いを乗り越えた今は、
仲間たちと平穏な日々を送っていた。

ある日、東京が何者かに攻撃され、
次々と大切な人々が襲われた剣心は、次第に追い詰められていく。
憔悴しきった彼の前に現れたのは、
あの志々雄(藤原竜也)に武器や軍艦を送り込んでいた上海マフィアの頭目・雪代縁(新田真剣佑)。

剣心の“十字傷の謎”を知る彼こそが、
剣心自らが生み出してしまった最恐最悪の敵だった。
剣心に強烈な恨みを持ち、
剣心だけではなく“剣心が作った新時代”をも破壊するため、
“人誅じんちゅう”を仕掛けてくる。

全てを悟った剣心は、
「自分のせいでござる」
と、薫(武井咲)や仲間達を集め自分の過去を語り始める。

かつて結婚していたこと、
そして、
自らの手で妻を斬殺したこと。
今まで語られることのなかった衝撃の過去に、仲間たちはショックを受ける。
その矢先、遂に縁による東京への総攻撃が開始され、一瞬で修羅場と化す。
そして縁の復讐の刃は神谷道場の仲間たちにも容赦なく向けられていく。
逃れられない運命を背負い、
愛する者のため全てをかけて立ち向かう、究極の戦いが始まる……

「キネマ旬報」のキネ旬Reviewで、
3人の映画評論家が揃って低い点をつけていたので心配していたが、杞憂であった。
前3作を面白く見た人なら、存分に楽しめる内容であったし、
前3作に負けず劣らず面白かった。
キネ旬Reviewの3人の映画評論家は、
Review原稿を書くために、見たくないのに仕方なく見たという雰囲気が文章に表れており、
〈そんなに見たくないのなら断ればいいのに……〉
と思ったことであった。(笑)
本作は「The Final」ということもあって、
『るろうに剣心』のオールスター戦のような感じで、
これまで出てきたキャラクターが次々と現れ、
しかも、前3作では、剣心と敵対していた彼らが、
剣心の味方となり闘う姿は、
このシリーズのファンにとっては感涙モノであった。


中でも、私が最も感心、感動したのは、巻町操であり、
その巻町操を演じた土屋太鳳であった。

両親はなく、江戸御庭番衆の拠点である京都にある葵屋で育てられ拳法を学び、
旅の途中で金に困り、剣心の刀を盗もうとしたのをきっかけに剣心と知り合うのだが、
天真爛漫だが、子供の頃から慕い続ける蒼紫(伊勢谷友介)が復讐に囚われた時は心を痛め、
蒼紫を救ってくれた剣心に厚い信頼を寄せている……という役で、
暗い色調の本作であるが、巻町操が出てきただけでパッと明るくなったし、
巻町操を演じた土屋太鳳の運動神経が半端なく、キレッキレで、

〈さすが、日本女子体育大学卒の実力!〉
と感心したことであった。(多忙のため出席日数が足りず、4年間での卒業は叶わなかったが、2021年3月15日、入学から8年がかりで卒業にこぎつけた)

「The Final」の見どころは、やはり、
ラストに待ち構える剣心と雪代縁(新田真剣佑)の死闘であるのだが、

新田真剣佑の父親(千葉真一)ゆずりの運動神経も半端なく、魅せる。

この雪代縁の剣心への恨みは、
縁の姉であり、かつての剣心の妻・巴(有村架純)を剣心が殺したことに由るものだが、
時折、回想シーンでスクリーンに現れる有村架純が、限りなく美しい。(コラコラ)

〈有村架純をもっと見たい!〉
という欲求が沸き起こってくるのだが、
その欲求を満たしてくれるのが、「The Beginning」なのだ。
普通なら、「The Beginning」が先で、「The Final」が後にくる筈なのだが、
構成を逆にした大友啓史監督の企みが、実によくハマっていると思った。
『るろうに剣心 最終章 The Beginning』

動乱の幕末。
緋村剣心(佐藤健)は、
倒幕派・長州藩のリーダー桂小五郎(高橋一生)のもと、

暗殺者として暗躍。

血も涙もない最強の人斬り・緋村抜刀斎として恐れられていた。
ある夜、緋村は助けた若い女・雪代巴(有村架純)に人斬りの現場を見られ、
口封じのため側に置くことに。

その後、幕府の追手から逃れるため巴とともに農村へと身を隠すが、

そこで、人を斬ることの正義に迷い、本当の幸せを見出していく。
しかし、ある日突然、巴は姿を消してしまうのだった……

「The Final」は、原作の最後のエピソードとなる「人誅編」をベースに、
剣心の十字傷の謎を知る上海マフィアの頭目・縁との戦いを描いていたが、
「The Beginning」では、
緋村剣心が過去を語る形式で物語が進む「追憶編」をベースに、
剣心が不殺の誓いを立てるに至るまでの物語と、
彼の頬に刻まれた十字傷の謎に迫る内容。
だが、「The Beginning」を鑑賞し終え、しばらくすると、
「The Beginning」は、剣心と巴のラブストーリーであったことに気づく。

巴は、居酒屋で、男二人に絡まれているところを剣心に助けられる。

その剣心を逆恨みした男二人が剣心を待ち伏せし襲うが、逆に斬られてしまう。
剣心が人を斬る現場に居合わせた巴は卒倒し、
介抱された長州藩士が寝泊まりする宿で、帰る家もないからと働き始める。

剣心の人斬り稼業を咎める一方で、彼の身を案じ何かと世話を焼く巴は、

やがて桂からの信頼も得て、幕府から追われる剣心と共に暮らすよう頼まれる。
剣心が血も涙もない人斬り抜刀斎だった時代に、
剣心は巴の許婚であった清里明良(窪田正孝)を斬っており、
巴は、許婚の復讐のために、剣心に近づいてきたのであり、
同じく剣心の命を狙う幕府直属の隠密組織の首領・辰巳(北村一輝)の指示で動く、
内通者であったのだ。
だが、巴は、剣心と一緒に暮らすうちに、剣心を愛してしまう。

剣心がなぜ巴を斬ってしまったのかは、映画を見てもらうとして、
日記に残された巴の心情が胸を打つ。
その日記は、「The Final」の方では、
薫(武井咲)から、巴の弟・雪代縁(新田真剣佑)へ渡されるのだが、
それを読んだ縁の慟哭が、「The Beginning」へと続き、
“愛の物語”へと結実していく。
「The Beginning」が成功しているのは、
ひとえに巴を有村架純が演じていたから……と、私には思われた。

巴という難役のキャスティング理由を、大友啓史監督は、
彼女なら、真っ白い心で、この役を、孤独な二つの魂の、燃えるような邂逅の物語を一緒に走ってくれるのではないか。悲劇的な憂いの中に、強い意志と限りない優しさを帯びて。これだけドラマチックなヒロインにはめったにお目にかかれません。(「シネマトゥデイ」より)
と語っていたが、
有村架純の方も、
以前ご一緒した『3月のライオン』では、出演シーンは少なかったのですが、監督と一緒にキャラクターを作るという作業をさせてもらいました。すごく俳優に寄り添ってくださる監督という印象があったので、そんな大友監督がとても大事にしている作品に、私を信じてお声をかけてくださったというのは本当に感無量でした。
絶対に「有村架純を呼んで良かった」と思ってもらいたい。承認欲求みたいなものかもしれませんが、一緒に仕事をした方々の期待を裏切りたくないという思いは常に心のなかにあるんです。(「クランクイン!」インタビューより)
と語り、儚さを表現するために体重も絞り、役作りをしたとのこと。

儚さだけではなく、凛々しさを表現した有村架純の巴は、
『るろうに剣心』実写映画シリーズの最後を飾るに相応しいキャスティングであったし、
これ以上ない、『るろうに剣心』ファン、有村架純ファンへのプレゼントであった。

『るろうに剣心 最終章 The Final』138分、
『るろうに剣心 最終章 The Beginning』137分、
計275分の上映時間であったが、
まったく退屈せずに、存分に楽しめた4時間35分であった。
今も、有村架純の巴が脳裏を離れない……