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映画『凪待ち』 ……西田尚美、リリー・フランキー、恒松祐里の演技に拍手……



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※ネタバレした箇所があります。これから鑑賞予定の方で、予備知識なしで見たい方は、鑑賞後にお読み下さる様お願い致します。


本作『凪待ち』(2019年6月28日公開)は、公開直後に見たのだが、
〈この映画のレビューは書かないでおこう……〉
と思っていた。
なぜなら、批判が多くなりそうだったから。
だが、西田尚美リリー・フランキー恒松祐里が好演している等、
良い部分もあるので、スルーするには惜しい作品ではある……と思った。
で、私個人の忘備録的な意味も込めて、
少しだけ書き残しておきたいと思った。

白石和彌監督作品である。
白石和彌監督作品には『凶悪』(2013年)で初めて出会った。
素晴らしい作品であったし、絶賛のレビューを書いた。(コチラを参照)
以降、
『日本で一番悪い奴ら』(2016年)
『彼女がその名を知らない鳥たち』(2017年)
『サニー/32』(2018年)
『孤狼の血』(2018年)
と、良質な作品を作り続けていて、(タイトルをクリックするとレビューが読めます)
私にとっても次作が待たれる映画監督であった。


だが、
止められるか、俺たちを』(2018年)はあまり感心しなかった。

映画通の間では、とても評価が高く、
キネマ旬報』のレビューでも高評価だったので、
かなり期待して見たのだが、
私にとっては、特別の作品にはならなかった。
〈なぜ、私にとっては特別の作品にはならなかったのだろう……〉
と思いながら、白石和彌の年齢を調べてみたら、
1974年12月17日生まれの43歳。(2018年10月現在)
映画は1969年から始まり、
1970年代を舞台とし、若き日の若松孝二を描いている。
1974年生まれの白石和彌監督は、まだ生まれてさえいなかったのだ。
若松プロ出身ということで、
なんとなく若松孝二のすべてを知っているような錯覚を私はしていた。
白石和彌監督は若松孝二監督の晩年に数作関わっていただけなのだ。
だからだろう、1970年代の雰囲気がまるで描けていなかったのだ。
白石監督と1歳違いの冨永昌敬監督が、
末井昭の奔放な文化的叛逆ぶりを、
ほぼ同じ時代設定で描いた傑作『素敵なダイナマイトスキャンダル』とは、
好対照ともいうべき作品なっていた。
その原因は、キャスティングにもあるだろう。
若松孝二監督は、生涯、
反権威、反権力の精神を貫き、スキャンダリストとして名をはせたが、
自身の映画にキャスティングした俳優は、映画バカとも言えるような純粋な青年が多かった。
映画の内容が特異なだけに、純粋無垢な青年が狂気にかられていく様を描く方が、より刺激的であったし、よりスキャンダラスであったのだ。
その若松孝二監督作品によく出演していた俳優に、
若松孝二監督およびそのスタッフたちを演じさせていたのが、
映画ファン(若松孝二監督ファン)には堪らないのだろうが、
私には物足りなかった。
若松プロという“梁山泊”に集った当時のスタッフは、
世間の常識を逸脱したような人物ばかりなので、
若松孝二を演じた井浦新をはじめ、
その他のスタッフを演じた俳優陣も、うわべを真似しただけの演技で、
安っぽい再現VTRのようで、やや滑稽であった。
白石和彌監督は、若松プロ出身者だけのオールスター作品にしたかったそうだが、
そのことによって、この作品は傑作になりそこねている。
(全文はコチラから)

このように不満たらたらであったのだが、
なぜレビューを書いたかというと、唯一、門脇麦の演技が良かったからである。
吉積めぐみを演じた(若松プロ出身ではない)門脇麦が、
同窓会的な雰囲気の本作にあって、異分子として孤軍奮闘していたからである。
門脇麦の頑張りがなかったならば、この作品の出来は悲惨なものになっていたと思われる。

このように『止められるか、俺たちを』で(私にとっては)評価を下げた白石和彌監督であったが、次作には期待していた。
麻雀放浪記2020』(2019年)は佐賀県での上映館がなかったので見ることはできなかったが、『凪待ち』には期待していたのだ。
私の好きな西田尚美リリー・フランキーも出演しているので、
ワクワクしながら映画館へ向かったのだった。



無為な毎日を送っていた木野本郁男(香取慎吾)は、


ギャンブルから足を洗い、
恋人・亜弓(西田尚美)と、


彼女の娘・美波(恒松祐里)とともに、


亜弓の故郷である石巻に移り住むことに。
亜弓の父・勝美(吉澤健)は末期がんに冒されながらも漁師を続けており、


近所に住む小野寺(リリー・フランキー)が世話を焼いていた。


人なつっこい小野寺は、郁男を飲み屋へ連れていく。
そこで、ひどく酒に酔った村上(音尾琢真)という中学教師と出会う。


村上は、亜弓の元夫で、美波の父だった。
新しい暮らしが始まり、亜弓は美容院を開業し、郁男は印刷会社で働きだす。
そんな折、郁男は、会社の同僚らの誘いで競輪のアドバイスをすることに。
地元のヤクザが経営するノミ屋でのレースに興奮する郁男。
ある日、美波は亜弓と衝突し家を飛び出す。
その夜、戻らない美波を心配しパニックになる亜弓。
落ち着かせようとする郁男を亜弓は激しく非難するのだった。
「自分の子供じゃないから、そんな暢気なことが言えるのよ!」
激しく捲くし立てる亜弓を車から降ろし、ひとりで探すよう突き放す郁男。
だが、その夜遅く、亜弓は遺体となって戻ってきた。
郁男と別れたあと、防波堤の工事現場で何者かに殺害されたのだった。
突然の死に、愕然とする郁男と美波――。


「籍が入ってねえがら、一緒に暮らすごどはできねえ」
年老いた勝美と美波の将来を心配する小野寺は美波に言い聞かせるのだった。
一方、自分のせいで亜弓は死んだという思いがくすぶり続ける郁男。
追い打ちをかけるかのように、郁男は、社員をトラブルに巻き込んだという濡れ衣をかけられ解雇となる。


「俺がいると悪いことが舞い込んでくる」
行き場のない怒りを職場で爆発させる郁男。
恋人も、仕事もなくした郁男は、自暴自棄となっていく……




冒頭に書いたように、
本作『凪待ち』は、私にとっては、特別な作品にはならなかった。
その第一要因は、脚本にある。
本作の脚本を担当している加藤正人は当たり外れの多い脚本家で、
雪に願うこと』(2006年)
『孤高のメス』(2010年)
彼女の人生は間違いじゃない』 (2017年)
は素晴らしかったが、
クライマーズ・ハイ』(2008年)
雷桜』(2010年)
『ふしぎな岬の物語』(2014年)
『エヴェレスト 神々の山嶺』(2016年)
などは、同じ脚本家とは思えないほどに良くなかった。
『凪待ち』は残念ながら後者であった。
脚本『凪待ち』の出来の悪さは、
同じ加藤正人の脚本による『彼女の人生は間違いじゃない』と対比するとよく判る。

監督は、廣木隆一
脚本は、加藤正人
どちらも当たり外れの多い監督と脚本家なので、(あくまでも私見です)
それだけが心配であったのだが、
どうやら杞憂に終わったようだ。
廣木隆一監督が、出身地の福島に暮らす人びとを描いた処女小説を、
自身のメガホンにより映画化したということもあってか、
ドキュメンタリー風な作品でありながら、
骨格がしっかりしており、ブレがなく、
安心して最後まで見ることができた。
まさに「当り」を引き当てたと言えよう。
なによりも瀧内公美の演技が素晴らしかった。
『日本で一番悪い奴ら』を鑑賞したときの「彼女をもっと見たい」という思いが、
この『彼女の人生は間違いじゃない』で満たされた……と言っても過言ではない。
こう言っては何だが、脱ぎっぷりも見事だったし、
その辺にいる顔の売れた若手女優など足元にも及ばないような覚悟が感じられ、
瀧内公美という女優の代表作になるであろう作品だなと思った。
いや、代表作と言うにはまだ早すぎるのかもしれない。
代表作となる作品は、まだまだ先にあるような気もする。
彼女の人生は間違いじゃない』という作品は、
瀧内公美という女優にとっての、
日本を代表する女優になるためのターニングポイントとなる作品であった……
と、後に語られるような気がした。


彼女の人生は間違いじゃない』のレビューで私はこのように書いたが、(全文はコチラから)
廣木隆一監督が出身地の福島に暮らす人びとを描いた処女小説が原作ということもあって、
脚本も、その力のある原作に引きずられるように良質なものになっていた。
だが、『凪待ち』の方は、加藤正人のオリジナル脚本。
舞台を宮城県石巻市にしているだけで、
そこを舞台にしている必然性がほとんど感じられなかった。
彼女の人生は間違いじゃない』は、
東日本大震災を経験した福島県いわき市の市役所に勤めている若い女性が、
週末ごとに東京で風俗嬢として働く……
という物語であったが、
『凪待ち』の方は、
関東で無為な毎日を送っていたギャンブル中毒の男が、
人生をやり直すために恋人の故郷である石巻にやってきて、
そこで、恋人を殺され、堕ちていく……
という物語で、
彼女の人生は間違いじゃない』とは真逆の構図をとっている。
主人公の郁男は東日本大震災を経験しているワケではないし、
人生をやり直すためにやってきた石巻で、再びギャンブルに手を染める。
ラストに、とってつけたように“再生”を予感させるシーンがあるが、
クズ男のクズな物語である。
郁男をクズな男に描くだけならまだしも、
石巻の人たちもクズに描いているのも問題だ。

「Yahoo!映画」のユーザーレビューは、
香取慎吾ファンの5点満点が集中投下されており、高得点となっているが、
そのユーザーレビューに、宮城県民という方からの投稿があり、
私の目を引いた。

3.11最大の死者数3500人超の被害を記録した「石巻」。人生再生の舞台に分かりやすく適している「石巻」。ロケ地に選んで下さって有難うございました。
でもイチ宮城県民として辛かった点がありました。

1.「石巻」の描写がクズすぎて…(-.-;)
よそ者をいぶかしがり排除するとか、町中みな顔見知りとか、会話の内容が下品とか、やたらゴロツキが多いとか…ゲスい田舎町という描写でしたが…なんかドキュメンタリー風にも受け取れる映画なので、石巻ってあんなところだと認識されているのが辛かった(石巻の名前を使わなければ構わないのですが…)

2.福島原発の除染作業への蔑視
溜まったツケを支払うため「福島へ行かされる」。放射能防護服を着用しての除染作業は高収入だが命懸けの危険な作業、ヤクザにそれを強要される、同じ震災で共に辛い思いをしている「石巻」のヤクザが「福島除染」を蔑視し利用する…。3.11復興に尽力下さっている方からはちょっと出ない発想と言わざるを得ないのが辛かったです。

…再生をテーマにした映画の舞台に「石巻」を選んで下さったのは大変有難い事で、石巻の皆さんからはクレーム等出る由も無いと思います。でも、映画鑑賞後に読んだインタビュー記事で監督が「震災を正面から描くものではない」と話したのを読み、いくら正面からじゃないからって震災を軽く扱って(利用して)良いわけじゃないですよと監督にモヤモヤしたので、こちらに書かせて頂きましたm(__)m 。


白石和彌監督は某インタビューで、

僕自身、震災を描くタイミングがずっとなくて。当時はむしろ背を向けてたし。あれから時間が経ち、語られることも少なくなり、誰かが震災後の今を描かないとダメなんじゃないか? との思いもありました。

と語った後、
「震災の語り部的な役割にならないと、という?」という問いに、

いや、そこまではないです。この作品自体、震災を正面から描くものではないので。背景としてそこはかとなくそれが写り込んでおり、どこか根底で人の哀しみや何かに繋がっていけばいいなぐらいで。

と答えているが、
「背景としてそこはかとなくそれが写り込んで……」
という、その程度の軽い想いで石巻を舞台にするのは、あまりにも無責任すぎるような気がした。
郁男が取られたお金を、ノミ屋の胴元の地元ヤクザが返しにくるのもオカシイし、
ラストの、郁男と石巻の“喪失”と“再生”というヒューマンさも、
「どうした白石和彌監督!」
と言いたくなるような有様。


当初、白石和彌監督は寡作なアウトロー的な監督であったが、
最近は監督依頼が殺到して、嬉しい悲鳴をあげている状態だという。

「もう少しゆったりと仕事をしたい」というのが本音なんですけどね(笑)。ありがたいことに色々とお声かけいただき、それらが面白かったりで、ついついやりたくなっちゃう。“寝る時間さえ削れば何とか撮れるな……よし!”って(笑)。

と語っていたが、
もう少し「撮る作品」を厳選して、質の高い作品を創り出してもらいたいと思う。

やや批判的なレビューになってしまったが、(ゴメンナサイ)
私の好きな西田尚美は、素晴らしい演技で、私を楽しませてくれた。
『新聞記者』(2019年6月28日公開)での彼女を見たばかりだが、
政治色がつくことを嫌う女優が多い中、
勇気ある決断で出演した西田尚美を大いに褒めたいと思う。
本作でも、むさくるしい男ばかりの出演陣の中で、
娘役の恒松祐里と共に、唯一安らげる存在であった。


小野寺を演じたリリー・フランキー
亜弓の父・勝美の世話をしたり、
郁男の就職の世話をしたり、
とても心優しい世話好きの男なのだが……
一般的に「優しいは恐い」というが、
リリー・フランキーが演ずると、その恐さは倍加するのだった。


美波(というネーミングは“あざとさ”を感じるが)を演じた恒松祐里も良かった。
散歩する侵略者』(2017年)での好演が強く印象に残っているが、
本作では、
主人公の郁男と血のつながらない父娘のような絆があるという役どころで、
役柄的にも難しかったのではないかと思われる。
1998年10月9日生まれなので、まだ20歳。(2019年7月現在)
現在公開中の『いちごの唄』(2019年7月5日公開)を始め、
今年だけでも、
アイネクライネナハトムジーク』(2019年9月20日公開予定)
『殺さない彼と死なない彼女』(2019年11月15日公開予定)
『酔うと化け物になる父がつらい』(2019年公開予定)
の公開が控えている。
白石監督も、

恒松祐里さんは、あの香取さんを相手に堂々とした演技をしてくれて頼もしかったです。今後どんな女優になっていくのかが、ますます楽しみになりました。

と語っていたが、私も同じ気持ちだ。


西田尚美リリー・フランキー恒松祐里
それに、
吉澤健、音尾琢真などの演技も素晴らしい映画『凪待ち』。
やや甘々の白石和彌監督作品であるが、
これも、白石和彌監督が、より高みへ昇るための過渡期の作品と私個人は捉えている。
そういう意味で、見ておくべき作品と考える。
映画館で、ぜひぜひ。



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