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映画『ROMA/ローマ』 ……優れた純文学のようなキュアロン監督の自伝的傑作……


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本作『ROMA/ローマ』は、
ゼロ・グラビティ』(2013)で第86回アカデミー賞において監督賞に輝いた、
アルフォンソ・キュアロン監督の自伝的作品である。
第91回アカデミー賞に最多10部門でノミネートされ、

・作品賞
・主演女優賞(ヤリッツァ・アパリシオ
助演女優賞(マリナ・デ・タヴィラ)
☆監督賞(アルフォンソ・キュアロン
☆撮影賞(アルフォンソ・キュアロン
脚本賞アルフォンソ・キュアロン
外国語映画賞
美術賞
・録音賞
・音響編集賞


監督賞、外国語映画賞、撮影賞の3部門で栄光に輝いている。

『ROMA/ローマ』を手掛けたのは、映画会社ではなく、
世界最大手の有料動画配信サービス会社Netflix
『ROMA/ローマ』は、このNetflixのオリジナル映画なのである。
劇場公開を経ることなく、
インターネット配信によってのみ視聴できる“映画”として製作したという経緯もあり、
「映画館で上映されるわけではない」作品を、映画として認めるべきかどうか……
意見は真っ二つに分かれおり、
ヴェネチア国際映画祭ではグランプリに輝いたが、
カンヌ国際映画祭では、
「劇場公開を意図しない作品は映画に当たらない」
としてNetflix作品は拒否されている。

Netflixは、劇場で公開されていないという批判に対して、
『ROMA/ローマ』を一部の劇場で公開し、柔軟な姿勢を見せたり、
豊富な資金源にモノを言わせ、様々なメディアにキャンペーンを展開し、
『ROMA/ローマ』の制作費の数倍を費やしたと言われる。


このような経緯もあり、
“映画館”主義の私としては、
〈映画館で見ることはできないのか……〉
と思っていたところ、
急遽、3月9日(土)より、全国48館のイオンシネマで上映されることが決定した。
で、私も急遽、予定を変更。
天山から下山した後、
真っ直ぐイオンシネマ佐賀大和へと向かったのだった。



政治的混乱に揺れる1970年代初頭のメキシコシティ
医者の夫アントニオ(フェルナンド・グレディアガ)と、
妻ソフィア(マリーナ・デ・タビラ)、
彼らの4人の子どもたちと、
祖母・テレサ(ヴェロニカ・ガルシア)が暮らす中産階級の家で、


家政婦として働く若い女クレオ(ヤリッツァ・アパリシオ)は、


子どもたちの世話や家事に追われる日々を送っていた。
アントニオはカナダのケベックでの会議のために留守にする。




すでに夫婦仲は破綻しかけており、
不満を募らせたソフィアは、クレオやもう一人のメイド・アデラに八つ当たりをしたりする。
休暇中、クレオとアデラは、ボーイフレンドのフェルミンとラモンと共に映画館に行く。


映画館の入り口でクレオフェルミンは映画鑑賞の代わりに部屋を借りることにする。
全裸のフェルミンは、
シャワーカーテンのロッドとポールを使って武術の技をクレオに披露する。
後日、2人は映画館で会い、
クレオは、「生理がないので妊娠している可能性がある」とフェルミンに告げる。
すると、フェルミンは「トイレに行く」と言って席を立ったまま戻らなかった。
クビを覚悟で恐る恐るソフィアに相談したところ、優しく受け止めてくれ、


病院に連れて行かれ、検査の結果、妊娠が確定する。
クレオは、子供達とその祖母を『宇宙からの脱出』を鑑賞するために映画館に連れて行ったところ、若い女と一緒にいるアントニオを目撃する。
ソフィアは、子供達にアントニオとの別居を隠そうとするが、
次男が電話での会話を盗み聞きしてそれを知ってしまう。
彼女は父親がまだカナダに出張していると信じている他の子供達に事実を明かさないように次男に頼む。


アデラのボーイフレンドを通じて、クレオは野外の武術訓練場でフェルミンを発見するが、


彼は赤ん坊の父親が自分であることを認めず、2度と会いに来ないように脅す。


クレオの出産予定日が近づき、
テレサはベビーベッドを見るためにクレオを買い物に連れて行く。
店への道中で彼女らは抗議のために集まる学生達を目撃する。
2人が家具屋を見物している間、
路上では抗議団体と警官隊で暴動に発展し、
若者達で構成される準軍事的集団によって抗議者が次々と射殺される。


負傷した男女が店内に逃げ隠れるが、
追ってきた若者たちにより見つかってしまい、客の目の前で男は射殺される。
追跡してきた若者集団の中にはフェルミンもおり、
クレオにも銃を向けて睨み付けた後に店を立ち去る。
直後にクレオは破水するのだった……



映画の内容を知らず、
タイトルだけを見たときは、
〈イタリアのローマに関係があるのか……〉
と思っていたのだが、
メキシコシティの「ローマ地区」のことであった。
また、回文のように、
「ROMA」を逆から読むと「愛」という意味のスペイン語「AMOR」になることから、
ダブル・ミーニングとして「愛」をテーマにしているという説もある。


このように、本作は、
メキシコ人監督による、メキシコシティを舞台にしたモノクロ・スペイン語映画なのである。
(故に、『ゼロ・グラビティ』のアルフォンソ・キュアロン監督の新作にも関わらず、ハリウッドメジャースタジオがどこも資金を提供せず、Netflixが出資したという経緯がある)

とにかく、モノクロの映像が美しい。
冒頭は、長回しで、
タイル張りの地面を掃除しているのか、水が何度も流され、
そこに、空を飛ぶ飛行機が写り込む。
飛行機が飛ぶ空のラストショットで終わるまで、
きめ細やかな映像がずっと映し出される。
この映画には、
ALEXA65という65ミリフィルムカメラが用いられており、
このカメラは、他のカメラと比較しても格段に解像度が高い。
モノクロ映画は、カラー映画に比べて立体感に乏しくなるが、
アルフォンソ・キュアロン監督は、ALEXA65で撮影することで、
光と影のコントラストを巧みに用い、映像に深みを持たせている。


この美しい映像が、時に、静物画やポートレートのようにも見え、
見る者は恍惚となるほどに、その映像美に酔わされる。
若い人は、その斬新さに魅了されると思うが、
私のような古い人間には、むしろ懐かしささえ感じさせる。
ポランスキーの監督デビュー作『水の中のナイフ』(1965年日本公開)を見たときのような、
勅使河原宏監督による安部公房原作の一連の作品(1962年~1968年)を見たときのような、
いや、私自身の幼少期をモノクロ映像で見ているような感覚にもなり、
得も言われぬ感覚が蘇ってくる。


『ROMA/ローマ』は、半自伝的作品。大半が僕の記憶に基づく。家族の物語で、町や国の物語でもあるが、究極には人間性について、身近でかつ普遍的な映画にしたかった。誰にでも分るような。願わくば、何らかの形で、貴方と貴方の過去、そして記憶につながってほしい。貴方の経験を私や世界と共有しませんか?

アルフォンソ・キュアロン監督は公式サイトのコメント動画でこう語っていたが、


少なくとも、私自身は、この『ROMA/ローマ』の世界と共有できたように思えた。


本作で、映像と共に重要なのが、“音”だ。
人々の話し声、街の喧噪、車、ラジオ、テレビの音、犬の咆哮、山火事で木や草が燃える音、拳銃の音、打ち寄せる波の音……
大小様々な環境音が見る者(聴く者)の感覚を刺激する。


一箇所だけ、街角にメリー・ホプキン「悲しき天使」が流れるシーンがあり、
あまりの懐かしさにウルッときてしまった。


これまでスポットライトが当たらなかった、
家政婦や先住民族の女性のような普通の人を主人公にして、
私たちの日常に潜む小さな物語の積み重ねを描いた作品が評価され、
アカデミー賞で、監督賞、外国語映画賞、撮影賞の3部門で受賞したことは喜ばしいことだ。
(ちなみに、アルフォンソ・キュアロン監督は、撮影も担当していたので、監督賞、撮影賞のW受賞)
地味な作品であるが、質の高い純文学作品のような感じで、
映画好きには堪らない作品である。


ただ、Netflixの「映画館で上映されるわけではない」作品を、映画として認めるべきかどうか……という問題は、今後も議論されていくだろう。
かねてより、
Netflix作品はアカデミー賞にノミネートされる資格がない」
との考えを公言してきたスピルバーグ監督は、
アカデミー賞を主催する映画芸術科学アカデミーの役員という立場を利用し、
4月に行われる役員会で、アカデミー賞からNetflix作品を締め出すための新ルール制定に向けた提案を行う意向を表明している。

これに対しNetflixは、公式Twitterアカウント上で、
「私たちは映画を愛しています」と宣言した上で、

①映画館がない町に住む人々や、鑑賞料金が高すぎて映画館に行くのは無理という人々でも、映画を楽しむことができる。

②世界同時配信によって、どこに居ようが誰もが同じ日に映画を見ることができる。

③より多くのフィルムメーカーに、彼らの作品・アートを共有する機会を与えられる。


という3つの利点を掲げたうえで、
「これらは相互排他的なものではありません」と締めくくっている。

私は、どちらかというと、
スピルバーグ監督派というより、「映画館で見たい」派であるが、
佐賀県に住んでいると、佐賀県の映画館で上映しない作品も多く、
(中には福岡県を含め、九州での上映がない映画もある)
ミニシアター系の作品だと、上映されても1ヶ月から3ヶ月遅れが当たり前で、
どんな作品でも「封切日に見たい」という思いはある。
それを可能にしてくれるのがNetflixをはじめとする有料動画配信サービスだとすれば、
それが今後増えてくるのも「やむなし」とも思うのである。

今回のNetflixの騒動は、
出版界における電子書籍化と似ているような気がする。
その内、紙の書籍化を経ずして、ネットだけで読める小説が、
芥川賞直木賞の候補になり、受賞する時代がくるだろう。
全国の書店数が減少しているように、
有料動画配信サービスが主流になれば、
映画館の数が減少することも考えられる。
「映画館で見たい」派である私は、それも困る。
まあ、私の寿命もそう長くはないだろうから、
映画館の無い世の中は見ずに済むと思われるのだが……

それはともかく、
本来、映画館で見ることのできない映画『ROMA/ローマ』が、
3月9日(土)より、全国48館のイオンシネマで上映されているのだ。
近くのイオンシネマで、ぜひぜひ。



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