
もうそろそろ、
《第5回「一日の王」映画賞・日本映画(2018年公開作品)ベストテン》
を発表しなければならない時期なのだが、
昨年(2018年)公開された作品で、
まだ見ていない作品が数作残っている。
佐賀の映画館では数ヶ月遅れで上映されることがザラにあり、
第2回「一日の王」映画賞では、
2015年12月に公開された映画『ハッピーアワー』の佐賀での公開が、
2016年2月20日にまでずれ込んだので、
「一日の王」映画賞の発表が大幅に遅れてしまった。
第5回「一日の王」映画賞の対象(2018年1月1日~12月31日公開)となる映画で、
(見たいけれども)まだ見ていなかった作品が数作あり、
そのひとつが、本日紹介する『ハード・コア』であった。
私の好きな山下敦弘監督作品である。
『リンダ リンダ リンダ』(2005年)や、
『天然コケッコー』(2007年)を見て山下敦弘監督のファンになった人は、
甘酸っぱい青春映画の監督と思いがちだが、
川本三郎のノンフィクションが原作の社会派青春ドラマ『マイ・バック・ページ』(2011年)、
渋谷すばるが、歌うこと以外全ての記憶を失った男を演じた『味園ユニバース』(2015年)、
佐藤泰志の小説が原作で、函館を舞台にした『オーバー・フェンス』(2016年)、
北杜夫が自身をモデルに書いたユーモア小説が原作の『ぼくのおじさん』(2016年)など、
山下敦弘監督の作品内容は多岐にわたっている。
本作『ハード・コア』のポスターやスチール写真を見たときも、正直、

〈何じゃこりゃ!〉
と思った。(笑)
正確には、
〈このロボットは何じゃ!〉
であったが……(笑)

コミックが原作と聞いていたが、未読であったし、
あまり「傑作」の匂いがしなかったからだ。
だが、これまで傑作、秀作を連発している山下敦弘監督作品なのである。
私の好きな山田孝之や荒川良々や松たか子も出演している。
見ないわけいかないではないか!
2018年11月23日に公開された作品であるが、
佐賀では今年(2019年)1月11日からようやく上映され始めた。
で、先日、やっと見ることができたのだった。

人間同士の交流が希薄になり、打算的な生き方をする人々が増えた現代日本。
その都会の片隅で細々と生きる権藤右近(山田孝之)は、
あまりにも純粋で、信念を曲げることが出来ず、世間に馴染めないアウトロー。

弱者を見下し利用しようとする世間に対して、
間違いを正そうとする信念を暴力に変えてきた彼は、仕事も居場所もなくしてきた。
あるハロウィンの夜、
カラオケバーで仮装し、バカ騒ぎする若者たちを横目に、酒を飲みながらイライラを募らせていた右近だったが、ついに爆発。
きっかけは、
隣りで「バカみたい…」と漏らしながらひとり飲んでいたOL風の女性(松たか子)が、

若者たちに誘われるままカラオケで熱唱し、
男からのキスを躊躇することなく受け入れてしまったことだった。

右近は、男の頭に激しい頭突きを放ち、店内は大騒ぎに。
そのまま爆睡してしまった右近が目を覚ますと、
虚ろな目に飛び込んできたのは、
商社マンの弟・左近(佐藤 健)が、代金を払いながら、
「悪いけど、もうこの店には…」
と注意されている光景だった。

そんな右近の仕事は、
怪しい結社を組織する活動家・金城銀次郎(首くくり栲象)と、
その番頭・水沼(康すおん)が、
群馬の山奥で進める埋蔵金探し。

共に働く精神薄弱気味の牛山(荒川良々)だけが唯一心を許せる友人だった。

女性を知らない牛山を不憫に思い、何とかしてやりたいと考えている。
ある日、そんな彼らの、自由でどこか呑気な日々が一変する出来事が起きる。
住所不定の牛山が住処にする廃工場で、古びた謎のロボットを発見したのだ。
牛山はすぐにそのロボットを友人のように受け入れ、
自分たちに寄り添うロボットに次第に親しみを覚えた右近も、
「ロボオ」と命名して友情関係を深めていく。
やがてAIの知識もある左近が、
ロボオが見た目とは違い、現代科学の水準を遥かに凌駕する高性能であることを突き止める。

「ロボオの人工知能があれば、埋蔵金の発掘なんてちょろいぜ!」
と主張する左近に導かれ、群馬の山奥へと向かった3人と1体は、
ロボオの能力を使い、まんまと100憶を超える本物の埋蔵金を見つけてしまうのだった。

小判を換金のために海外へ行った左近の行方、

悲しい牛山の過去、


右近の水沼の娘・多恵子(石橋けい)との禁断の恋、

そして、会頭・金城の失踪。

果たして、彼らの運命は如何……

先程も述べたが、
本作『ハード・コア』のポスターやスチール写真を見たとき、正直、
〈面白くない作品だったらどうしよう……〉
と心配する気持ちの方が先行していた。
で、鑑賞後の感想はというと……
最初から最後までスクリーンに目が釘付けの「傑作」であったのだ。
〈さすが山下敦弘監督!〉
と思った。
漫画が原作ということもあって、荒唐無稽な物語だと思っていた。
なにしろロボットが出てくるのだから……(笑)

それが、実際に映画を見てみると、
まったく違和感なく見ることができたのだ。
それだけでも凄いことなのだが、
その中に、“笑い”や“涙”や“感動”まであるのだ。


山下敦弘監督の演出手腕もさることながら、
独特の作品世界を見事に演じ切った俳優陣の頑張りが見えた作品であった。
権藤右近を演じた山田孝之、

権藤左近を演じた佐藤健、

牛山を演じた荒川良々、

金城銀次郎を演じた首くくり栲象、

水沼を演じた康すおん、

水沼多恵子を演じた石橋けい、

バーの女を演じた松たか子など、

すべてのキャストがピタリとはまり、
見る者を作品世界へと導いてくれる。
サブタイトルは、スペースの関係で、
……山田孝之、荒川良々の演技が秀逸な山下敦弘監督の傑作……
としたが、正確には、
……山田孝之、荒川良々、佐藤健、石橋けいの演技が秀逸な山下敦弘監督の傑作……
としたいところ。
松たか子の演技も素晴らしかったが、出演シーンが最初だけだったので、
代わりに石橋けいを入れたい。
【石橋けい】
1978年6月23日、神奈川県横浜市生まれ。40歳(2019年1月現在)
堀越高等学校、調布学園女子短期大学卒業。
特技はモダンバレエ、水泳、ピアノ。趣味は芸術鑑賞、カメラ。
映画のオーディションがきっかけでスカウトされ、
1992年『NIGHT HEAD』でデビュー。
1993年には『有言実行三姉妹シュシュトリアン』で山吹家の次女・山吹月子役を演じ、
注目を浴びる。
1994年には東日本キヨスク(現・JR東日本リテールネット)のイメージガールを務めた。
ウルトラシリーズ平成初期3部作全てに出演した女優である。
『ATHENA -アテナ-』に麻宮アテナ役で主演。
2006年以降は舞台、映画への出演が多い。
2008年よりパチンコ・コンコルドのCM(静岡県ローカル)に出演していることをきっかけに山内ケンジ演出の舞台の常連になっている。
2008年10月5日に逗子マリーナの「リビエラ」で俳優の古宮基成と結婚式を挙げている。
私は、恥ずかしながら、この石橋けいという女優を知らなかった。
いくつかのTVドラマや映画で見ているとは思うのだが、記憶に残っていなかった。
『ハード・コア』の石橋けいを見て、初めて意識した。
それほど本作の彼女は存在感があったし、素晴らしかった。
私にとっての『ハード・コア』を鑑賞しての一番の収穫は、石橋けいに逢えたことだ。

この映画を特別なものにしているのは、
山下敦弘監督の演出手腕、俳優陣の頑張りに加え、
映像が優れていることだ。
撮影を担当したのは、高木風太。

『不能犯』(2018年)
『セトウツミ』(2016年)
『味園ユニバース』(2015年)
など、独特の作品世界を切り取ってきた高木風太なればこその映像であり、
荒唐無稽な話を、そう感じさせずに鑑賞させる力を持った映像であった。
本作では、
山田孝之が主演のほかに、自らプロデュースも務めているが、
まもなく公開の映画『デイアンドナイト』でもプロデュースし、脚本にも参加している。
私の好きな清原果耶や小西真奈美が出演しているので、
すごく楽しみにしている作品なのだが、
山田孝之のプロデューサーとしての今後の活躍にも期待したい。

出勤前に急いで書いているので、まとまりのないレビューになったが、
映画好きにはたまらない超面白作である。
こちらも、まだまだ上映している映画館も多いので、
映画館で、ぜひぜひ。