
世は“夏休み”に突入し、
映画も“お子ちゃま向け”が中心となり、
ジジイの私が見たい映画は、極端に少なくなった。
そこで、
見たいと思いながらも、
見る機会を逸していた映画『パンク侍、斬られて候』を見に行くことにした。
“お子ちゃま向け”が多い中、
唯一、大人の鑑賞に堪えうる作品に思えた。
原作は、芥川賞作家・町田康が2004年に発表した異色時代小説。

監督は、『狂い咲きサンダーロード』の石井岳龍。

脚本は、俳優、作詞家、作曲家、放送作家、映画監督、演出家、ミュージシャンなど多くの肩書を持ち、「クドカン」の愛称で親しまれる“時代の寵児”宮藤官九郎。

主演は、『そこのみにて光輝く』『日本で一番悪い奴ら』の綾野剛。

共演には、北川景子、東出昌大、染谷将太、浅野忠信、永瀬正敏など。

6月30日に公開された作品なので、
早く行かないと終了してしまう。
で、急いで映画館へ駆けつけたのだった。

舞台は江戸時代。
ある日、とある街道に一人の浪人があらわれ、巡礼の物乞いを突如斬りつける。
自らを“超人的剣客”と表すその浪人の名は、掛十之進(綾野剛)。

掛は、
「この者たちは、いずれこの土地に恐るべき災いをもたらす」
と言い放ち、
(仕官の職と報酬欲しさに)
恐るべき災いを引き起こすとされる新興宗教団体「腹ふり党」の討伐を説く。
黒和藩の重臣・内藤帯刀(豊川悦司)は、
これを利用して自分と対立する重臣・大浦主膳(國村隼)の失脚を目論むが、
教祖が捕縛された「腹ふり党」は既に解散しており、存在しないことを知る。

内藤がニセの「腹ふり党」をねつ造する計画を企てたことにより、
掛は「腹ふり党」の元幹部の茶山(浅野忠信)を探し出し、

一芝居うって「腹ふり党」の驚異を演出することにしたが、
予想外に民衆がこれを信じ込んでしまい、大暴動が発生する。

保身と出世のためのデマが、
藩を揺るがす大事に発展してしまうのだ。
掛十之進(綾野剛)

内藤帯刀(豊川悦司)

大浦主膳(國村隼)

黒和直仁(東出昌大)

幕暮孫兵衛(染谷将太)

茶山半郎(浅野忠信)

真鍋五千郎(村上淳)

オサム(若葉竜也)

長岡主馬(近藤公園)

江下レの魂次(渋川清彦)

クセもの10人が腹の探り合いを繰り広げ、
そこに一人の美しい女・ろん(北川景子)が加わることで、事態は混迷を極める。

そして、謎の猿将軍・大臼延珍(永瀬正敏)が驚愕の真実を語り出し、

黒和藩に阿鼻叫喚の大惨事が訪れる……

本作『パンク侍、斬られて候』は、もともと、
2時間尺の配信コンテンツとしてdTVで配信する予定だったらしい。
原作者の町田康と石井監督の濃密な繋がり、
宮藤官九郎の石井監督への想い、
そして『パンク侍、斬られて候』への想いが絡み合ったことで、
この組み合わせが織りなす“企み”を面白がって、
日本映画界を代表する主役級の豪華俳優たちと、
一流の制作スタッフが続々と集まってきたという。
パンクな原作、
パンクな映画監督、
パンクな脚本家、
パンクな俳優陣、
パンクなスタッフが合体したことで、
〈この企画は、映画として勝負できるんじゃないだろうか……〉
という機運が高まり、
配信事業者が制作した日本で初めての実写映画として、
6月30日に“映画”として産声をあげたのだ。

映画の誕生からしてパンクなので、
〈かのマイナー映画の大御所といった感じの石井岳龍が、商業映画を監督したらどうなるのか……〉
と、一抹の不安を感じながら鑑賞したのだが、
映画が始まり、
ポップな映像と、
上映中ずっと鳴り響く音楽を聴いていたら、
なんだか『狂い咲きサンダーロード』を初めて見たときのような興奮を思い出し、
ワクワクしながら最後まで見ることができた。
石井岳龍が石井聰亙に戻ったような錯覚をおぼえたし、
〈石井岳龍監督にとっては、マイナーもメジャーもないのだ〉
ということを再認識させられた一作であった。

登場人物たちのクレイジーで大真面目なハジけっぷりに驚かされるが、
特に染谷将太と、

浅野忠信のハジけっぷりが半端なく、

主演の綾野剛を食うほどの勢いなのだ。
浅野忠信に至っては(本人の希望で)セリフさえなく、
躰の動きや顔の表情ですべてを表現しているのがスゴイ。

染谷将太と浅野忠信の勢いに負けじと、
綾野剛を始め、
北川景子、東出昌大、永瀬正敏、村上淳、國村隼、豊川悦司、若葉竜也、近藤公園、渋川清彦等が、パンク魂を持って全身全霊で弾けている。(これが実に楽しそう)
この相乗効果で、本作は異様な“熱気”を孕んでいるし、
見る方にもそれ以上の“熱量”を要求される。
そうでなければ、見る方が火傷してしまうからだ。

「Yahoo!映画」のユーザーレビューの点数が意外に低いが、
そのレビューを読むと、
この映画に対する「戸惑い」が感じられる。
「わけがわからないし、つまらない」
「ついていくだけで、精一杯」
「バカバカしくて、くだらない」
「ビックリした」
「わからん」
「こんな映画、理解できるわけがない」
「ごめんなさい、途中でギブアップ」
等々、
思わず笑いたくなるような感想が多くて楽しくなる。
この映画、意外に、若者よりも中高年世代の方が楽しめるのかもしれない。
新聞のアンケート調査を見ても、今の若者は保守的な人が多い。
(だから自民党が選挙権年齢の引下げに積極的なのかな?)
時代の不安定さが、若者をそうさせているのだと思うが、
そんな今の若者たちよりも、中高年世代の方が、ずっとパンクでアナーキーなのだ。
様々な時代を生き抜いてきているので、
免疫があるし、少々のことでは驚かないし、より刺激を求める傾向にある。(笑)
上映中は、おばさんの笑い声がよく聞こえたし、
若者より中高年、男性よりも女性の方がより楽しめる映画に思えた。

映画『パンク侍、斬られて候』は、
時代劇でありながら、なんだか近未来を描いた作品のように感じられた。
『マッドマックス 怒りのデス・ロード』(2015年)と同じ熱を感じたし、
『マッドマックス 怒りのデス・ロード』に感動した人ならば、
必ずや『パンク侍、斬られて候』にも感動してもらえると思う。

出勤前なので、この辺で終わろうと思うが、
いろんな楽しみ方ができる一作だと思う。
ぜひぜひ。