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映画『パターソン』 ……一見代わり映えしない毎日が、これほど愛おしいとは……




私は“詩”が好きだ。
読むのも好きだし、書くのも好きだ。
でも、誰かに、
「詩が好きなんだ」とか、
「詩を書いているんだ」とか言うことはほとんどない。
匿名性の強いブログなどでは公言できても、
直に対面した人には(何かのきっかけがない限りは)自分から言うことはない。
なぜなら、“詩”には、小説などと違って、
客観性よりも主観性が、より重要視されるような気がするからだ。
読んでいる“詩”や、
書いている“詩”を見れば、
その人の内面が透けて見えてしまうのだ。
だから、“詩”が好きな人は、そのことを口外せずに、
誰にも知られずに密かに愛好しているのではないか……
私を含め、
恥ずかしがり屋が多い日本人には、
その傾向が特に強いような気がする。

そんな市井の詩人たちに、
とても共感できるであろう映画が登場した。
ジム・ジャームッシュ監督作品『パターソン』である。
バスの運転手をしながら詩を書いている男の、
何気ない日常を切り取った人間ドラマで、
『ミステリー・トレイン』でジャームッシュ監督と組んだことのある永瀬正敏も、
日本人の詩人役として出演しているという。
〈見たい〉
と思った。
2017年8月26日(土)にロードショー公開された作品であるが、
佐賀(シアターシエマ)では10月14日(土)から上映が始まった。
で、雨の日曜日(10月15日)に、見に行ったのだった。



ニュージャージー州パターソンに住むバス運転手のパターソン(アダム・ドライバー)。


彼の1日は、朝、隣に眠る妻ローラ(ゴルシフテ・ファラハニ)にキスをして始まる。


いつものように仕事に向かい、乗務をこなす中で、
心に芽生える詩を秘密のノートに書きとめていく。
帰宅して妻と夕食を摂り、


愛犬マーヴィンと夜の散歩に出る。


バーへ立ち寄り、1杯だけ飲んで、


帰宅しローラの隣で眠りにつく。
そんな一見変わりのない毎日。
パターソンの日々を、
ユニークな人々との交流と、思いがけない出会いと共に描く、
ユーモアと優しさに溢れた7日間の物語。




ニュージャージー州パターソンに住む、
町の名と同じ名前のバス運転手のパターソンが、
朝、妻にキスをし、(一人朝食を摂って家を出る)


昼は、バスを運転し、(昼食は、滝の見えるいつものベンチで)


夜は、愛犬と散歩する。(途中、バーに立ち寄りビールを一杯だけ飲む)




そんな、同じような毎日が七日間続くだけの映画である。
月曜日の朝に始まり、翌週の月曜日の朝で終わる。
同じ日課を淡々とこなす男の一週間を見せられれば、
普通は退屈する。
だが、この映画に限り、まったく退屈しないのだ。
日常に詩が満ち、
毎日が、新しく、美しく、
そして、愛おしいのだ。
むしろ、こんな日がずっと続けばいいのに……と思ってしまう。
こんな不思議な映画には滅多にお目にかかれない。
実に好い映画だ。


主人公のパターソンは、
毎日ノートに“詩”を書いているが、
その“詩”をどこかに発表しようという気はないらしい。
それを妻のローラは残念がり、
ノートのコピーをとり、世に発表するように勧める。


妻のローラもアーティストで、
日々、部屋の模様替えをしたり、


ギターを弾いて唄を歌ったり、


カップケーキを焼いたり、
とても楽しそうだ。


愛犬・マーヴィンは、
そんな仲の良い二人を、
時にはヤキモチを焼きながら、
優しく見守っている。


毎日、同じような日課でも、
日常生活には日々変化がある。
バスの乗客の会話は、毎日違うし、




夜の散歩で出会う人も違うし、


立ち寄るバーでの、
マスターや常連客との会話も違う。
詩人である主人公の目には、
すべてが新鮮に映り、すべてが詩的なのだ。


この映画を見ると、
書籍化された詩集の中だけに“詩”があるのではなく、
町の至る所に“詩”があり、
町の人々の会話の中に“詩”があることが判る。
この世は“詩”に満ちていることが解る。
そのことに気づかされる幸福感があり、
そのことに気づいた自分への幸福感がある。
こんな平凡でありふれた日常を見せられて、
これほどの幸福感を得られる作品は、本当に稀有なことだ。
奇跡と言ってもイイだろう。


バス運転手で詩人のパターソンを演じたアダム・ドライバー
このブログでもレビューを書いている
『奇跡の2000マイル』(2015年7月18日、日本公開)
『沈黙-サイレンス-』(2017年1月21日、日本公開)
などでの演技が強く印象に残っている。
本作『パターソン』では、
平凡の中の非凡を巧みに演じており、
その特徴のある顔立ちと共に、忘れられない演技となった。


パターソンの妻・ローラを演じたゴルシフテ・ファラハニ。
リドリー・スコット監督の『ワールド・オブ・ライズ』(2008年12月20日、日本公開)で、
ハリウッド作品に出演した初のイラン・イスラム共和国出身の女優で、
その後、
彼女が消えた浜辺』(2010年9月11日、日本公開)
エクソダス: 神と王』(2015年1月30日、日本公開)
パイレーツ・オブ・カリビアン/最後の海賊』(2017年7月1日、日本公開)
などに出演している。
実に美しい女優で、
本作『パターソン』では、大作では見せない愛らしい表情や仕草で見る者を魅了する。
こんな奥さんがいる男は本当に幸せだと思う。


愛犬・マーヴィンを演じたネリー。
元救助犬のメスのイングリッシュ・ブルドッグのネリーは、
昨年(2016年)のカンヌ国際映画祭で、パルム・ドッグ賞を受賞している。
世界中の批評家たちから最も素晴らしい演技をした犬と評価され、讃えられたのだ。
それだけ表現力が豊かで、見ていても抜群に可愛い。
「このネリーを見るだけでも、この映画を見る価値はある」
と言っても過言ではないほど。
それほどの存在感があり、この映画には欠かせない俳優だ。
ただ、残念なことに、ネリーは受賞前に亡くなったそうだ。


日本人の詩人を演じた永瀬正敏


『ミステリー・トレイン』(1989年12月23日、日本公開)以来、
実に27年ぶりのジャームッシュ監督作品出演で、
それでいながら、本作に実に巧く溶け込んでいた。


ラスト近くで、主人公のパターソンと“詩”について交わす会話は本作の肝で、
別れ間際に永瀬正敏演ずる日本の詩人がパターソンに真っ新(まっさら)のノートをプレゼントするのだが、
これは、
「毎日、新しい頁が始まる」
「白い頁には無限の可能性がある」
ということを示唆しており、実に好い余韻を残す。


この映画で、最も印象に残ったのは、
詩を書いている少女との出会いと、会話だ。
このシーンは、本当に宝石のように輝いている。


いや、このシーンだけでなく、
今、思い返すと、
この映画のすべてが輝いており、
一瞬一瞬が本当に愛おしく思われる。


先程も言ったが、
これほどの作品には滅多にお目にかかれない。
映画館で、ぜひぜひ。



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