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映画『美しい星』 ……リリー・フランキーの軽薄さ、胡散臭さが堪らない傑作……




私にとって三島由紀夫という作家は、
今となってはそれほど重要な作家ではないが、
読書を始めた十代の頃には、
仮面の告白』『潮騒』『金閣寺』『豊饒の海』(中でも『春の雪』)などに魅了され、
集中して読んだ時期があった。
その時期は、どちらかというと、
大江健三郎安部公房などの前衛的な文学に惹かれていたのだが、
三島由紀夫のやや古風な文体の小説にも魅力を感じていた。
三島由紀夫の作品を読み進めていく中、
奇妙な作品に遭遇した。
それが『美しい星』であった。


SF的な空飛ぶ円盤や宇宙人を取り入れた作品で、
東西冷戦時代の核兵器による人類滅亡の不安・世界終末観を背景に、
宇宙的観点から見た人間の物語を描いた異色の長篇小説だった。
1962年(昭和37年)に雑誌『新潮』(1月号~11月号)に連載され、
同年に出版された、三島由紀夫37歳の時の作品である。
当時から、大島渚監督をはじめ、内外の多くの映画監督から映画化を望まれていた作品であったそうだが、実現せず、
発表から55年後の今年(2017年)、
吉田大八監督によってようやく映画化された。
主演は、私の大好きなリリー・フランキーで、
撮影は、私が信頼している近藤龍人
原作である小説も久しぶりに読み直し、
準備万端で映画館へ駆けつけたのだった。



予報が当たらないと話題の気象予報士・重一郎(リリー・フランキー)は、
さほど不満もなく日々適当に過ごしていた。


ある雨の降る夜、重一郎は、
愛人関係にある予報士助手との情事の後に、首都高を車で走っていた。
すると、眩しい閃光と金属音に包まれ、気を失い、
翌日に意識が戻った重一郎は、不思議なかたちで田圃に落ちた車の中にいた。


助手席にいた筈の愛人の姿はなく、
急いでTV局に行くが、放送には間に合わず、
重一郎の助手である愛人が、彼の代わりに天気を伝えていた。
この不思議な出来事を、オカルト好きで詳しい番組ADの男に話すと、
「間違いないアブダクションです」
と解説をされた。
重一郎がUFOに遭遇して、一時的に拉致され、検査されたのだという。
それを信じた重一郎は、
「自分は火星人で人類を救う使命がある」
と、突然覚醒する。


一方、
フリーターで、自転車便のバイトをしている息子・一雄(亀梨和也)は、


彼女とのプラネタリウムでのデート中に迫って拒否され、
彼女が立ち去った後に、残された一雄の目の前に映る水星がどんどん大きくなり、
スクリーンを飛び出した水星に身体を押し潰されそうになり、
「自分は水星人である」ことに目覚める。


娘の暁子(橋本愛)は、美し過ぎる大学生。
その美貌故に、目立ちたくもないのに目立ってしまうことに苛立っていた。


教壇に立つ教授から特別扱いにされ、
男子学生・栗田岳斗(藤原季節)からはしつこく学園祭のミスコン出場して欲しいと誘われる。


心が疲弊した暁子は、夜の街でギターを弾く青年・竹宮薫(若葉竜也)に出逢う。


その懐かしいようなギターの音色と青年に歌声に惹かれた暁子は、
演奏を終え金沢に帰るという男からCD「金星タケミヤカオル」を買わされる。
CDを聴き、魅了された暁子は、
いてもたってもいられなくなり金沢へ向かい、竹宮薫と再会する。


その竹宮から、「僕たちは金星人だよ」と告げられ、
二人でUFOが現れる海へと向かう。
竹宮に導かれるまま、暁子は彼の行なう不可思議な仕草を真似てみる。
目を閉じて両手を胸元で重ね、ゆっくりと開き海へと差し出す仕草を何度も繰り返す。
突如、沖合に二つの発光物体が出現し、
暁子は今までには感じたことのない恍惚を感じて絶頂感を得る。


妻の伊余子(中嶋朋子)だけは覚醒せず、地球人のまま、
怪しげな水の販売にのめり込む。


ひとたび目覚めた彼らは、
それぞれの方法で“美しい星”地球を救おうと使命感に燃え、奮闘を重ねるが、
やがて世間を巻き込む騒動を引き起こし、それぞれに傷ついていく。


そんな一家の前に、
人気参議院議員・鷹森を裏で操る代議士秘書の黒木(佐々木蔵之介)が現れ、


「地球に救う価値などあるのか?」
と問いかけてくる……




原作から時代設定を変更し、
「核戦争の危機」を「地球温暖化」にするなど大幅な脚色がされており、
原作とはかなり違ってはいたが、
映画を見終わってみると、
それは、まごうことなき三島由紀夫の『美しい星』なのであった。
原作を読んでいたときは、
政治小説、思想小説のような感じで、
ドストエフスキーの『カラマーゾフの兄弟』の「大審問官」を思わせる論戦などもあって、
けっこう難しい顔をして読んでいたのだが、
映画の方は、各所で笑わされ、
吉田大八監督の演出力を思い知らされた。



なんといっても、リリー・フランキーが良かったし、面白かった。
原作では、定職に就いたことのない芸術家肌の高等遊民であったが、
映画では、予報が当たらない気象予報士ということで、
この設定も秀逸で、リリー・フランキーの個性とマッチしていたように感じた。
のっけから愛人である予報士助手とのベッドシーンがあり、
そのエロさ、軽薄さ、胡散臭さが堪らなかった。(笑)


変なキメポーズも、
ちょっとふらついたりして、キメきれないところもすこぶる良かった。(笑)



娘の暁子を演じた橋本愛も素晴らしかった。


美し過ぎる大学生ということで、
その美貌はもちろん、
洗脳されたような奇妙な動きや表情が秀逸であった。


家族4人の中では、原作に最も忠実な役で、
原作の暁子をよく体現していたと思う。


熊本県出身で、
熊本地震をうけてのチャリティー上映が話題になった、
熊本県出身者で制作された映画『うつくしいひと』(行定勲監督、2016年)が記憶に新しいが、
今年(2017年)は、『PARKS パークス』(2017年4月22日公開)という作品で主演している。(佐賀ではシアターシエマで6月24日から上映予定)
夜空はいつでも最高密度の青色だ‏』という作品で紹介した(好きになった)石橋静河も出演しているので、『PARKS パークス』は絶対見に行くつもり。



意外に(と言っては失礼だが)良かったのが、
重一郎(リリー・フランキー)の妻・伊余子を演じた中嶋朋子
彼女だけは覚醒せず、地球人のまま(原作では木星人)。
孤独な専業主婦で、
日中は家族が家にいない為、退屈な毎日を送っており、
友人から「美しい水」を勧められ、大量の水を購入し、


その水の勧誘活動にのめり込んでいく……という役であったが、
オドオドした態度の序盤、
水の販売実績を伸ばし自信を持つ中盤、
「美しい水」のインチキが判明し呆然自失となる終盤……
変化していく伊余子の演技分けが素晴らしかった。



フリーターで自転車便のメッセンジャーをしている息子・一雄を演じた亀梨和也は、
その未来人的な容姿、TVドラマや映画で『妖怪人間ベム』に主演したイメージなどで、
最も宇宙人的な雰囲気を醸し出していたような気がした。
この『美しい星』という映画は、それほど一般受けする作品とは思えないが、
映画館で若い女性を多く見かけたのは、
彼が出演していたから……だろう。



三島由紀夫が『美しい星』を書いたのは、
あの時代、大江健三郎安部公房への対抗意識があったからかもしれない。
そして、ノーベル文学賞を獲るには、
このような小説も書いておかねばならないと思ったのかもしれない。
三島は英訳を強く希望し、当時ドナルド・キーンに何度も翻訳依頼したが、
キーンはこの小説を気に入らなかったために、英訳は実現しなかったという。
55年の年月を経て、映画化された『美しい星』を、
もし三島由紀夫が生きていたならば、どんな気持ちで見ただろうか?
どんな感想を持っただろうか?
案外、気に入って、
「これこそが私の描きたかった『美しい星』だ」
と叫んだかもしれない。


SF小説であり、政治小説、思想小説でもあった『美しい星』を、
傑作エンターテインメント作品として蘇らせた吉田大八監督に、大きな拍手を……


映画を見終わると、
あなたもきっと、このポーズをしたくなる筈。(爆)


映画館へぜひぜひ。




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