
『駅 STATION』(1981年)
『居酒屋兆治』(1983年)
『夜叉』(1985年)
『あ・うん』(1989年)など、
数々の日本映画の名作を世に送り出してきた、
監督・降旗康男、撮影・木村大作の黄金コンビ。

16作目のコンビ作となるのが、本作『追憶』である。
岡田准一、小栗旬、柄本佑、吉岡秀隆などの男優陣、
長澤まさみ、木村文乃、安藤サクラなどの女優陣と、
キャストも豪華で、

東宝が力を入れているということが、
ひしひしと伝わってくる作品だ。
東宝が力を入れているということは、
来年の日本アカデミー賞でも、
各部門でノミネートされる可能性が高い。(何故かはコチラを参照)
〈見ておかねば……〉
と思い、
映画館へ向かったのだった。
富山県の漁港で殺人事件が起きた。
事件によって、かつて親友だった3人は、
刑事、容疑者、被害者として再会することになった。
刑事・四方篤(岡田准一)。
妻(長澤まさみ)へ自分の心をうまく伝えられず、すれ違いの日々を送る。
なぜ、愛する人にも心を開くことが出来ないのか。

容疑者・田所啓太(小栗旬)。
会社の好転、妻(木村文乃)の妊娠、新居の建築と幸せの絶頂の中、
なぜ、事件の真相を語ろうとしないのか。

被害者・川端悟(柄本佑)。
倒産寸前の会社と家族のため、金策に奔走していた。
なぜ、殺されなければならなかったのか。

25年前、親に捨てられた3人は、
涼子(安藤サクラ)が営む、喫茶「ゆきわりそう」に身を寄せていた。

常連客の光男(吉岡秀隆)とともに5人はまるで家族のような間柄になった。

だが、ある事件を機に、その幸せは終わった。
無実を信じる四方の問いかけにも、田所は口をつぐむ。

一体、何を守ろうとしているのか。
3人の過去に何があったのか……
複雑に絡みあった人生のドラマが、
25年の時を経て、再び運命の歯車を回し始める……

映画を見終わって、「う~ん」とうなってしまった。
感心したのではなく、困ったときの「う~ん」である。
物語の部分が弱いのである。
というか、ズバリ言うと、脚本が弱いのである。
降旗康男監督と木村大作キャメラマンのコンビ作で、
私が一番好きなのは、『駅 STATION』(1981年)。
脚本は、倉本聰。
物語の骨格がしっかりしており、
人間ドラマとしての感動があった。
それに比べて(比べてはいけないのかもしれないが)、
本作『追憶』は「軽い」気がした。
特に、殺人の真相が明らかにされるシーンで、
その真犯人と動機があまりにも軽く、
拍子抜けしてしまった。
物語の重要な骨格とならねばならない謎が、
「なんだ、それ?」
なのだ。
人物造形も単純で、深みがない。
刑事・四方篤(岡田准一)は、いきなり犯人に殴りかかったり怒鳴ったりして、
なんだか昔(昭和)の刑事みたいだ。
スマホを持っていなかったら、完全に昭和の映画である。

この映画を古臭く感じてしまう原因は、
脚本だけにあるのではなく、
その映像や演出にもあった。
風景には、必ず太陽や月や雪が映し出され、なんだか絵葉書の写真のようだ。

そんなに都合よく美しい夕日は見ることができないし、
カモメも都合よく現れない。(笑)
登場人物は皆同じ表情しか見せないし、
演出にも面白味がなく、新鮮味がまったくなかった。
せっかく若手実力派の俳優を揃えているのに、勿体ない気がした。

と、まあ、不満を連ねてしまったが、
それだけだったら、私は、レビューを書かなかったと思う。
「この映画を見て良かった」と思う部分もあったので、
このレビューを書く気になったのだ。
その「この映画を見て良かった」部分も少し書いてみたいと思う。
この映画には、
私の大好きな女優が三人(長澤まさみ、木村文乃、安藤サクラ)も出演しており、



映画の良し悪しはともかく、
彼女達をスクリーンで見ることができただけでも、
(私にとっては、)嬉しいことなのであるが、
もう一人、私の好きな女優が出演していたのだ。
それは、西田尚美。
川端悟(柄本佑)の妻・川端小夜子役で出ていたのだが、
出演シーンは少ないものの、好い演技をしていた。
長澤まさみ、木村文乃、安藤サクラの三人だけがクローズアップされ、
公式サイトにも西田尚美の名は無かったので、
嬉しいサプライズであった。

だが、しかし、
(もちろん、西田尚美との出逢いも喜びであったが、)
この『追憶』を見て、
一番驚き、そして、嬉しかったのは、
昨年(2016年)11月11日に亡くなった(コチラを参照)りりィが出演していたこと。

西田尚美と同じく、
公式サイトにりりィの名は無かったので、
スクリーンに彼女が出てきたときには、もうビックリ仰天。
『リップヴァンウィンクルの花嫁』(2016年)
『湯を沸かすほどの熱い愛』(2016年)
などで素晴らしい演技を魅せ、
遺作は『彼らが本気で編むときは、』(2017年)とこのブログで紹介(コチラを参照)したばかりなのだが、
なんと、本作『追憶』にも出演していたのだ。
四方篤(岡田准一)の母・四方清美を演じていたのだが、
この演技が素晴らしかった。

りりィの演技を見ることができただけでも、
(私にとっては、)『追憶』を見る価値はあったと思った。

今回もまた極私的な感想になってしまったが、
そういう意味で、(私にとっては、)見て良かった作品であった。
ちょっと厳しいことも言ったが、
昔ながらの映画を愛している人にとっては、この上ない作品であろうし、
北陸の、荒ぶる日本海、立山連峰を臨む町並み、美しい間垣の集落など、
旅情を楽しみたい人にとっても見応えのある作品である。
感動できる人もきっと多いと思う。
映画館で、ぜひぜひ。