
三島有紀子監督作品『しあわせのパン』(←クリック)を見たのは、
3年前(2012年)の、3月1日であった。
それまで、三島有紀子監督のことはまったく知らなくて、
私の好きな北海道が舞台であることや、
原田知世、大泉洋、余貴美子など、
私の好きな俳優が出演していたので見に行ったのだが、
大人の寓話(ファンタジー)ともいうべき佳作で、
美しい映像や、
感動的なストーリーにすっかり魅せられてしまった。
映画鑑賞後に、無性にパンを食べたくなったのも憶えている。(笑)
その三島有紀子監督の新作が、現在公開されている。
それが、本日紹介する映画『繕い裁つ人』である。
池谷葵の同名人気コミックが原作で、
私自身はこのコミックを読んだことはなかったが、
映画館に置いてあった「お試し読み小冊子」で、

第1話の最初の部分だけを読んでみたのだが、

繊細かつ優しい絵で、
とても好感が持てるコミックだった。

コミックでは、舞台となる街は特定されていないが、
映画では、神戸をロケ地として選んでいる。
「南洋裁店」という小さな看板が掛けられた、古びた洋風の一軒家。
その店は、神戸の街を見渡す坂の上にあった。

祖母が始めた洋裁店を継いだ市江(中谷美紀)は、
街の仕立て屋の2代目店主として、
毎日、古びたミシンをカタカタ言わせて、
一生ものとなるような服を一着一着丁寧に作っていた。

昔ながらの職人スタイルを取っているため量産はできず、
百貨店の営業・藤井(三浦貴大)からの再三にわたるブランド化の提案も断り続けている。

祖母が作った服の仕立て直しやサイズ直しをし、
祖母のデザインを流用した新作を作る日々に、
市江は十分満足していた。
しかし、
「自分がデザインしたドレスを作りたいはず」
という藤井の言葉に、
市江の心に封印してきた何かが揺れ動く……

「大切な人のための、世界でただ一着の服を作り続ける」
という、祖母の志を受け継いだ南洋裁店の2代目店主・市江と、
その服にほれ込み、ブランド化にしようと企画する百貨店企画部の藤井、
この二人のやり取りを軸として、
南洋裁店に訪れる客との交流や思い出が描かれている。
『しあわせなパン』と同様、
大きな事件が起こるわけでもなく、
日常生活における小さな喜びや哀しみを淡々と描いているのだが、
それでいて、人生における大事なもの、大切なものが何なのかを、
そっと教えてくれるような作品に仕上がっている。
なによりも、
主人公・市江を演じる中谷美紀がイイ。
美しく、凛として、品があり、
ミシンを踏む後ろ姿や、
服を見つめる眼差しが、
実に魅力的だった。

彼女が着ている洋服の色とデザインもすこぶる良かった。

三島有紀子監督は、衣装を担当した伊藤佐智子との対談で、
次のように語っている。
服にはその人の内面が表れていますよね。意識的に選ぶこともあれば、なんとなく身につけることもあるかもしれないけど、それも含めて、服を通して描写される心情があると思うんです。だからいつも、すべての登場人物の内面を衣装で演出できたらいいなと……(後略)
市江を演じた中谷美紀だけではなく、
『繕い裁つ人』の登場人物たちは、多くを語らない。
その着ている衣装で内面を語っている部分が多かったように思う。
だからといって、自己主張する派手な衣装が多かったというわけではない。
むしろ逆で、派手さはないものの、
奥ゆかしさと強さを兼ね備えたような衣装が多かったように思う。
そういう意味では、
大人のための、大人の映画だったといえるかもしれない。

ただ、大人の着る洋服が、
子供たちから見たらどう映るのか、
その対比をうまく映像化した場面があった。
「夜会」のシーンである。
このシーンを見るだけでも、
この映画を見る価値はある……と断言しておこう。
この映画には、
私の好きな、余貴美子や黒木華も出演している。
余貴美子は、市江(中谷美紀)の母親役で、
コミカルな演技がとても良かった。

黒木華は、とても重要な役(詳しくは書かないでおこう)で、
車椅子でのウエディングドレス姿がとても美しかった。

中谷美紀、余貴美子、黒木華などの美しき女優陣、
彼女たちが着ている美しい服、
そして、もうひとつ、
この映画を、より魅力的にしているのは、
舞台が「神戸」だということ。
神戸の街を中心に兵庫県でオールロケを敢行しており、
異国情緒漂うエレガントな街並みが、
女優たちの美しさ、
彼女たちが着ている洋服の美しさを、
より引き立てていたのだ。

神戸の街は、
港町ということもあって、
長崎や佐世保の街にも似ていて親しみがあるし、
昔、私の兄が神戸に住んでいたので、
時々遊びに行っていたし、
2012年11月には、
神戸市立博物館での
「真珠の耳飾りの少女」inマウリッツハイス美術館展(←クリック)に行ったし、
海抜0mから登る六甲全山縦走(←クリック)にもチャレンジした。
大好きな街なので、
いつかロケ地めぐりができたら……と思う。

特に、神戸市中央区にある珈琲店サンパウロでチーズケーキが食べたい。(←映画を見たら納得してもらえると思う)

神戸の街が好きな人、
洋服が大好きな人には、ぜひ見てもらいたい映画である。
特に、男性には、
「洋服によって、女性はこんなにも表情が変わる」
ということを、この映画で学んでほしいと思う。
ぜひぜひ。