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映画『草原の椅子』 ……辛い過去を持った他人同士が繋がっていく物語……


主に文芸誌に作品を書いていた頃の宮本輝が好きで、
「泥の河」「蛍川」「幻の光」「錦繍」などの初期作品を好んで読んでいた時期があった。
新聞連載などが増えたその後の作品は、
初期作品に比べ、やや大味な感じがして、
最近ではあまり良い読者ではなくなっていた。
映画化された宮本輝作品も、
『泥の河』(1981年・小栗康平監督)
『螢川』(1987年・須川栄三監督)
幻の光』(1995年・是枝裕和監督)
などを愛していた。

『私たちが好きだったこと』(1997年・松岡錠司監督)
を最後に、宮本輝作品の映画化は長い間なされなかったが、
今年、久しぶりに『草原の椅子』が映画化された。
監督は、日本アカデミー賞10部門で最優秀賞を受賞した『八日目の蝉』(2011年)の成島出
奇をてらわず、正攻法で演出する監督だが、
『孤高のメス』(2010)をはじめ、ここ数年の充実ぶりは目を瞠るものがあり、
成島出監督作品なら見てみたいと思った。
キャストも、佐藤浩市、西村雅彦、吉瀬美智子小池栄子黒木華中村靖日若村麻由美、井川比佐志など、期待できる俳優陣だったので、それも楽しみだった。

バツイチで、年頃の娘と二人暮らしの遠間憲太郎(佐藤浩市)に、
50歳を過ぎて三つの運命的な出会いが訪れる。
ひとつは、
取引先の社長・富樫(西村雅彦)に懇願され、いい年になってから親友として付き合い始めたこと。


もうひとつは、
ふと目に留まった独り身の女性・貴志子(吉瀬美智子)の、憂いを湛えた容貌に惹かれ、淡い想いを寄せるようになったこと。


3つめは、
親に見離された幼子、圭輔(貞光奏風)の面倒をみるようになったこと。


憲太郎、富樫、貴志子の3人は、いつしか同じ時間を過ごすようになり、
交流を深めていく中で、圭輔の将来を案じ始める。
年を重ねながら心のどこかに傷を抱えてきた大人たち。
そして、幼いにも関わらず深く傷ついてしまった少年。
めぐり逢った4人は、ある日、異国への旅立ちを決意する……
(ストーリーはパンフレットから引用し構成)


年齢も性別もバラバラな4人が、
世界最後の桃源郷と呼ばれるパキスタンフンザへ旅するという、
大人の寓話的とも言うべきヒューマンドラマなので、
正直なところ、少し心配していた。
小説で読むぶんには(宮本輝の文章に酔わされ)違和感なく読めても、
それを映像で見るとなると、絵空事的な非現実感を味わうことが間々あるからだ。

で、映画『草原の椅子』はどうだったかというと、
これが、かなり良かったのだ。
心配は杞憂であった。
違和感なく、139分を退屈することなく楽しむことができた。

その一番の要因は、脚本が優れていること。
この映画の脚本担当を見ると、
加藤正人、奥寺佐渡子、真辺克彦、多和田久美、成島出
の5名が名を連ねている。
クライマーズ・ハイ』(2008年)、『孤高のメス』(2010年)の加藤正人
しゃべれどもしゃべれども』(2007年)、『八日目の蝉』(2011年)の奥寺佐渡子、
歓喜の歌』(2007)、『脳男』(2013)の真辺克彦、
第4回WOWOWシナリオ大賞(2011年)で優秀賞受賞作した多和田久美、
それに、成島出監督自身も加わり、
ディスカッションしながら脚本を作ったらしいのだ。
この複数の脚本家でシナリオを練っていくというやり方は、
昔の日本映画がよくやっていた手法であるが、
「脚本家5人体制でのシナリオ作り」というのは、
黒澤明監督のシナリオ作りに倣ったものだとか。
寓話的なストーリーや、海外ロケという、
ややもすれば大味な作品になりがちなものを、
5人の優れた脚本家でグッと引き締め、感動作に仕上げている。
この贅沢なシナリオ作りが、成功の第一の要因だろう。

俳優陣の演技も良かった。
佐藤浩市は、あのいつもの存在感あふれる肩肘張った演技を封印し、
肩の力を抜き、優しさに満ちた表現力で勝負していた。
それが見事であった。


西村雅彦が演じた役が一番の難役だと思ったが、
さすがの演技力で、物語を違和感なく繋いでいく役割を果たしていた。
彼なくして、この作品の成功はなかったものと思われる。


吉瀬美智子は、その美貌と、哀しみを含んだ表情で、
砂漠のなかのオアシスのような役割を果たしてした。
彼女がラスト近くに発する言葉に感動。


育児放棄した母親を演じた小池栄子は、すごい怪演を見せていた。
正直、グラビアアイドル出身の彼女を、昔の私は嫌っていた。
その「嫌い」を「好き」にさせてくれたのが、
毎日映画コンクール女優主演賞を受賞した『接吻』(2008年)
あの作品を見て以来、一転、
彼女は私の好きな女優になった。
映画『草原の椅子』を見ようと思った要因のひとつは、
彼女が出演していたから。
いまではそれほど好きになってしまった。
今回の作品では、「女・香川照之」かと思わされるほどの壊れっぷり。
いや~、小池栄子は凄すぎる。
彼女から目が離せなくなってしまった。


遠間憲太郎(佐藤浩市)の娘を演じた黒木華も良かった。
数年前から舞台で活躍していた女優で、
映画やTV ドラマの出演は少ない。
私は、NHK朝ドラ『純と愛』で、彼女を知った。
1990年3月14日生まれというから、
明後日(2013年3月14日)で23歳。
蒼井優を彷彿とさせる容姿と表現力、それに存在感。
これからの活躍を予見させるものを持っている稀有な女優だと思う。
2013年4月13日公開予定の『舟を編む』にも出ているので、こちらも楽しみ。


この他、若村麻由美、井川比佐志、中村靖日などが素晴らしい演技を見せていた。
  

原作と同じ舞台設定となるパキスタンフンザで、本格的な長期ロケを敢行。


作品後半は、世界最後の桃源郷と言われているフンザの、
なかなか見られない景色の連続なので、
ぜひ大きなスクリーンで見て欲しい。


『草原の椅子』は、1995年の阪神・淡路大震災で被災した宮本輝が、
命の儚さを感じ、シルクロードを経てフンザまで旅した体験が基になっている。
旅をしながら、辛い過去を持った他人同士が繋がっていく様子は、
東日本大震災を体験した「今」の日本に強く訴えるものを持っている。
映画館で、ぜひ……



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