
10月から11月初旬にかて、映画館で映画を見るたびに、この『ハッピーフライト』の予告編を見せられていた。
この予告編を見る限り、『ハッピーフライト』は、それほど面白い作品とは思えなかった。
まず、出演者が地味だと思った。
人気女優の綾瀬はるかは別として、田辺誠一、時任三郎、寺島しのぶ、田畑智子など、ちょっと地味過ぎやしないかと、余計な心配をしたくなるほど……。

それに、なんだか、おちゃらけた雰囲気だけが伝わってきて、上滑りしているコミカルな演技ばかりが強調されていたので、「大丈夫なのか、この作品」と思っていた。

しかし……この映画の監督は、『ウォーターボーイズ』(2001年)や『スウィングガールズ』(2004年)でお馴染みの矢口史靖である。
(きっと)面白い筈なのだ。
それでも予告編の悪印象が頭に残っていて、見に行くのに勇気が必要だった。(ちょっと大袈裟?)
で、今日、見に行ってきた。
見た感想を一言で言えば、意外に「面白かった!」。
さすが矢口史靖監督!
最初は、綾瀬はるか演ずる新人CAが巻き起こす騒動を、面白おかしく映画にしたものだと思っていた。

ところが、ぜんぜん違っていた。
誰が主演かと訊かれれば、ポスターに写っている綾瀬はるかと田辺誠一かな……と答えるしかないが、この作品はむしろ群像劇と言えるもので、2人だけが飛び抜けて出演場面が多いわけではなかった。
飛行機・空港の裏側でどんなことが起きているのか、ユーモアを交えながら映画にしたのが本作なのだ。
CA、パイロット、グランドスタッフ、整備士、OCCや管制塔で働く人々、乗客、見学者……など、すべての登場人物が主人公と言えるかもしれない。

あとから調べたのだが、脚本も担当した矢口史靖監督は、航空関係者100人以上に取材し、飛行機オタクにも負けないほどの知識を得て、そのトリビアをこの作品の中にうまく活かしている。
そして、見る者に驚きを与えてくれる。
例えば……
●管制官は国土交通省所属の公務員なので、航空会社とは規定が違うから私服でOK
●食中毒などを避けるため、パイロット同士で同じ食事は食べない
●パイロットは、2人のうち1人がコックピットを離れたら、残った一人は緊急時に備えて酸素マスクを着用する
●整備場では、たとえペン1本でも紛失したら、大事故につながる恐れがあるので、出てくるまで探す。
●飛行機に鳥が衝突しないように見張るバードパトロールという職がある。
などなど……。
知らないことを知る喜びと同時に、それぞれの役を演じている俳優の演技にも感心した。
OCC(オペレーション・コントロール・センター)で、パソコンが苦手で最新ソフトについていけないオペレーション・ディレクターを演ずる岸部一徳。
この俳優は、数多くの映画で見かけるが、どの作品でも見事に役になりきっていて、いつも驚かされる。
飄々とした演技に好感がもてる。
私の大好きな男優だ。
「岸部一徳は、昔、人気グループサウンズ【タイガース】でサリーって呼ばれてたんだ」
と娘に話すと、娘はまったく信じてくれない。

チーフ・パーサー役の寺島しのぶ。
『赤目四十八瀧心中未遂』や『愛の流刑地』などで妖艶な女というイメージだが、ここでは厳しさで有名なチーフ・パーサーを好演していた。

グランドスタッフ役の田畑智子も良かった。
今年5月に見た映画『アフタースクール』にも出ていたが、その時私は、
「この女優、こんなにイイ女だったっけと思わせる一瞬がある。さすがだ」
とブログに書いたが、『ハッピーフライト』でも、ちょっとしたロマンスを演じていて、なかなか素敵だった。

吹石一恵は、新人CAを指導する中堅CAをうまく演じていた。
この女優は、いつまでも新鮮さを失わず、見ていて飽きない。
最近では稀有な存在である。

その他では、
田畑智子と同じくグランドスタッフ役の平岩紙。
この女優、なんだかフンワカした雰囲気があり、個性的で、強く印象に残った。
管制官役の宮田早苗。
ちょっと東ちづる似のキリッとした表情が良かった。
この女優も強く印象に残った。
岸部一徳の部下のディスパッチャー役の肘井美佳。
この映画で初めて見た女優だが、これから伸びていきそうな雰囲気を感じた。
この映画を見ている間、いろんな意味で面白くて、時間はアッと言う間に過ぎていった。
上映時間は、1時間43分。
正直、もっと長く見たいと思った。
こういう気分になることは、そうあるものではない。
『ウォーターボーイズ』や『スウィングガールズ』のノリがそのま空港までやってきた感じなので、こんな人たちに飛行機や空港を任せておいて大丈夫なのか……という声が聞こえてきそうだが、ここではそんな野暮は言うまい。
『ウォーターボーイズ』や『スウィングガールズ』と同じく、大いに楽しませてもらったので、私としては大満足である。