
普段、われわれは、それが当たり前のように山に登っている。
だが、山に登ることができているのは、いくつもの幸運が重なっているからだ……ということに気づいている人は案外少ないのではないだろうか?
①歩くことができる。
②山登りをする体力がある。
③健康である。
④山登りに行く時間がある。
⑤家族の理解がある。
⑥経済的に問題がない。
……等々
これらの一つが欠けても、山登りをすることは難しい。
そう考えると、山登りができるということは、(ちょっと大袈裟だが)奇跡のようにさえ思えてくる。
私事だが、11月29日に黒髪山に登った時、下山中にちょっと足首をひねった。
足許を見ずに、キョロキョロと周囲を眺めながら下山していた時だった。
激痛がして、屈み込んだ。
しばらくじっとしていると、痛みは治まった。
足踏みをしてみると、すこし痛んだが、歩けないことはなかった。
正直ホッとした。
そのまま歩いて下山し、車を運転して帰ったのだが、帰宅してからよく見ると、足首が腫れていた。
病院に行って診てもらった。
レントゲン検査の結果、骨に異常はないが、しばらくは山登りは控えた方が良いとのことだった。
普通に歩くぶんにはそれほど支障はないのだが、足首に横の力が働くと少し痛んだ。
足首を痛めたのは、まったく私の不注意だった。
岩崎元郎著『登山不適格者』という本に、山を歩くコツがこう書いてある。
①二本のレールの上を歩くように平行に歩く。
②歩幅を小さく。
③足音をたてない。
④足裏を見せない。
《極意というのは「ゆっくり歩く」ということだ。
なーんだ、そんなことかと思わないでいただきたい。言葉にすれば単純でやさしいことだが、山ではゆっくり歩けない人が実に多いのだ。
「静荷重静移動」が、山での足の運び方の基本になる。後ろ足にのっている体重を、ゆっくり前足の靴底全体に移動する。
前足に完全に体重をのせたら、体重のかかっていない後ろ足を、太股の力で引き上げる。そして、前に押し出す。
足を踏み出す地点をしっかり見据え、できるだけ平らな場所に、靴底全体をフラットに下ろす――。
「静荷重」とは、静かに体重をかけること。
「静移動」とは、足を静かに移動すること。
これを繰り返していれば、歩幅は自然に小さくなり、歩く速度もゆっくりにならざるをえない。》
これは、「バテない歩き方」でもあり、「捻挫や骨折を防ぐ歩き方」でもある。
このことを私は守っていなかった。
山歩きを、少しナメていた。
12月16日の「からつ労山・月例山行」の「田原山」にはぜひ参加したかったので、私は山登りはせずにしばらくおとなしくしていた。
11月が終わった時点で、今年の私の山行日数は48日だった。
今年は、ほぼ一週間に一度の割合で山登りをしていた。
半月以上も山登りをしなかったのは本当に久しぶりだった。
「痛みは出ないだろうか?」
「最後まで歩けるだろうか?」
不安を抱えながら、12月16日を迎えた。
参加者は24名。(マイクロバス22名、マイカー2名)
車窓から由布岳が見えた。
雪だろうか? 霧氷だろうか?
山頂付近が白くなっている。

登山口の駐車場に着き、出発準備を終え、準備体操をする。

駐車場からは、鋸山の別名を持つ田原山の稜線が見えた。
低山だが、危険箇所も多く、なかなか手強い山だ。

案内板をみて、コースを確認する。
熊野磨崖仏までの往復が余計にあるが、ほぼこの案内板の矢印通りに歩くことになる。

「静荷重静移動」を心掛けながら、ゆっくり登ろう……
そう心に決め、歩き出した。

紅葉は終わっていたが、所々に赤いニシキギの葉が僅かに残っていた。

細い道が多く、注意しながら歩いた。

囲観音、雫岩などを過ぎ、南尾根に出た。

花は少なかったが、ヤマジノギクなどの野菊の仲間が数種類咲いていた。
この黄色い花は、シマカンギク。

南尾根からは、これから向かう、八方岳、経岩などの長い岩尾根が見渡せた。

反対側には、遙か彼方に由布岳が見えた。

大観峰は人で溢れていた。
足の間から、絶景が見える。

人がいなくなって、大観峰に立つ。
抜群の眺めである。

南尾根を登る佐賀労山のパーティが見えた。

大観峰から八方岳に向かう途中のクサリ場。

八方岳も人で溢れていた。

八方岳から見た大観峰。

難所が続くが、三点確保で、慎重にクリアしていく。

登山口駐車場が見えた。
と、言うことは、駐車場から見た稜線に、今居るということか――

駐車場側から見ると、こんな感じ。

股覗き岩に着き、対面の岩壁に彫られた太陽石(右上)を見る。
股の間から覗くと……(笑)

無名岩に到着。
丁度お昼時。
お腹の虫が鳴いている。

ここで昼食。
狭いので、皆寄り添って食べた。
素晴らしい風景を眺めながらのランチは、最高に美味しかった!

この後、行者尾根を通って、熊野磨崖仏を見に行った。





途中まで引き返し、南へ下山。
ここもなかなか急な坂道で、注意しながら下りた。

登山口の駐車場に戻ってきた。
無事に帰って来られて、私自身、ホッとした。
足首も大丈夫だった。
熊野磨崖仏から登り返しているとき、Mさんがやや遅れがちだったが、Mさんも無事戻って来られた。
全員無事故で、本当に良かった。
Mさんに年齢を訊くと、「75歳」と答えられた。
Mさんは、先月の阿蘇・根子岳にも参加されていたし、セルフレスキュー講習会でもお会いした。
いつも大きな一眼レフのカメラを持って登山されているし、本当にお元気だ。
会員ニュースの一口感想の欄には、素晴らしい俳句も発表されている。
私もMさんのように、いつまでも元気で、好奇心を失わず、山登りを続けたい……心底そう思った。

帰りの車窓からも、由布岳が見えた。
なんだか、とても嬉しかった。

今日は、歩けることの歓びを実感した一日だった。
素晴らしい一日をありがとうございました!