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和田春樹氏はなぜ私に謝罪したのか―拉致報道を巡る誹謗中傷の真相その4

 和田春樹・東大名誉教授は、次のように記し、私・高世を事実上「捏造ジャーナリスト」と断じている。
 
 《(2月4日、電波ニュース社の高世仁が安明進を取材すると)安は平壌で横田めぐみをみたと言い出したのである。前年に石高に二回取材をうけたときには、安はそんなことは言っていなかったのに、である。この高世の安インタビューは二月八日にテレビ朝日で放映されたが、安を匿名で登場させた。安はこれまで何度も公衆に向かって話しているが、横田めぐみのことは話していなかったので、横田めぐみ拉致の話が報じられたあとに突然彼女を見たと言い出したのでは信頼されないと高世が考えたのであろう》(和田春樹『日朝交渉30年史』ちくま新書、二〇二二年)。

 和田氏の問題提起は、大きく二点に集約される。

 第一に、安明進氏はすでに実名・顔出しで取材に応じていたにもかかわらず、テレビ朝日の報道番組「ザ・スクープ」では匿名で登場した。これは作為的な演出ではないか、という点。

 第二に、朝日放送の石高健次氏が前年(正確には前々年)に取材した際、安明進氏は横田めぐみさんらしき人物について語っていなかった。ゆえに、私たちの取材での「目撃証言」は虚偽だ、という主張である。

 まず第一点について。
 確かに安明進氏は1994年以降、複数の活字メディアに実名・顔出しで登場している。『月刊朝鮮』94年11月号(『現代コリア』95年1月号、2・3月号に邦訳)や『AERA』94年10月10日号などがそれである。

 しかし、ここで和田氏が決定的に見落としている事実がある。安明進氏は、テレビ取材だけは一貫して拒否してきたという点だ。石高健次氏が95年に取材した際も、動画取材は断られている。理由は「北朝鮮に残る家族の安全」のためだった。

 本人はこう説明している。活字なら、たとえ名前と写真が出ても「内容を勝手に書かれた」と言い逃れができる。しかし、テレビで顔を出して話せば、それが通用しない――。これは石高氏が著書『これでもシラを切るのか北朝鮮』で紹介している。

 そして1996年10月、私たちは安明進氏の初めてのテレビ取材に成功した。その際に提示された条件が、「匿名・顔出しなし」だった。

 97年2月4日の「ニイガタの少女」証言は安明進氏の二度目のテレビ取材であり、「匿名・顔出しなし」という取材条件は前回と同じだった。安明進氏のように特殊な環境下にある取材対象からのこうした要請には十分配慮せざるをえない。匿名は私たちの意図的な演出ではなかったのである。

 次に第二点である。
 なぜ石高氏の取材では「ニイガタの少女」が語られなかったのか。この点について、石高氏自身がこう解釈している。

 《私はこれまで安明進はじめ、数人の亡命工作員に会って話を聞いているが、彼らは全員が「日本人拉致」のことを先輩などから聞かされて知っていた。(略)彼らをインタビューして感じたのは、拉致ということ自体、我々が考えるほど情報として重大な価値があるという認識はないようだった。(略)相手が重要だと意識していない事柄は、だから、具体的に踏み込んで聞かなければ出てこない場合もあるだろう(同書)。

 実は、安明進氏は「ニイガタの少女」以外にも多くの拉致被害者を知っている。私たちがめぐみさんの写真を示し、「踏み込んで」尋ねたことで彼の記憶が呼び起こされたと考えるのが自然だ。聞き手の質問の仕方によって初めて引き出された証言を、「以前に語らなかった」という理由だけで虚言と決めつける方が、よほど不合理である。

 にもかかわらず和田氏は、最初から安明進氏の証言を「ウソ」と断定し、その前提の上に憶測を積み重ねていく。その結果、議論は事実から大きく逸脱していくのである。

 さらに、あまり知られていない重要な事実がある。

 この取材は、当初、拉致問題とは無関係のテーマで申請され、2月4日午後に行われることが1月下旬には決まっていた

 2月3日、私たちは成田空港でソウル行きの便を待つ間、たまたま空港内の書店で、その日の『産経新聞』と『AERA』に掲載された横田めぐみさん拉致疑惑の記事を目にした。これを受け、急遽、翌日の取材で安明進氏に問いただすことにしたのである。

 もし2月3日に記事が出ていなければ・・
 もし出発まで時間の余裕がなければ・・
 もし空港で書店に立ち寄らなければ・・
 もし取材日が翌4日でなければ・・。

 この証言は、奇跡的な「めぐりあわせ」の結果として生まれたのである。事前に何かを「仕込む」ことなど不可能だった。陰謀論の入り込む余地はない。


 それにもかかわらず和田氏は、横田めぐみさん拉致疑惑の背後に巨大な陰謀が存在するかのような妄想を描き、その結果、私たちを含む関係者を根拠なく貶めている。

 研究者であるならば、まず何よりも事実に謙虚であるべきだと思う。

 私は和田氏に対し、テレビ番組「ザ・スクープ」と私に向けられた捏造報道という誹謗・中傷を、公の場で取り消し、謝罪することを強く求めたい。

 なお、横田めぐみさん拉致疑惑の発覚過程については、拙著『拉致 封印された真実』(今月末発売予定)上巻第1章「横田めぐみさん拉致疑惑―問題の『原点』をたどる」で詳述している。また、和田氏の非難への反論は「安明進『捏造報道』疑惑に答える」にまとめている。関心のある方はお読みください。月末には書店に並ぶと思います。

(完)

 




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