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総選挙についての雑感

 今回の総選挙を詠んだ朝日川柳欄を見ると—

投票前(2月5日)

   日本中浮かれ模様の押し選挙 
   パンダ去りキャピキャピのひと衆集め

結果が出た後(2月11日と12日)
   3割で8割攫(さら)う民主主義
   九条が足を掛けてる徳俵
   批判した人みな消えて沈黙の春
   勝因は俺の無愛想 石破言い
   「参院は意味ない」などとすぐ驕(おご)る
   このくにのかたちを憂う菜の花忌

 菜の花忌は司馬遼太郎の命日(2月12日)。さすが朝日川柳は厳しいが、そもそも川柳は強きもの、権力をコケにして笑うものなので、これでいいのだ。

 それにしても高市早苗旋風はすさまじかった。

 自民党へと有権者を引き寄せたのは、高市氏の政策というより人物イメージ(さなえちゃんと呼ばれるそうだが)、いわば高市人気と言った方がよいだろう。そして耳に心地よいフレーズを確信ありげに語り(しかし、中身を語っていない)、にこやかな笑顔を振りまく高市氏に、閉塞感漂うなか、何か大きな変化をもたらしてくれそうな期待が寄せられたように思われる。

 ただ、ここに指摘しなければならないのは、このイメージ操作に決定的な役割を果たしたSNSの問題だ。高市首相の「日本列島を、強く豊かに」と題する30秒の動画が公示前日の1月26日から2月6日時点で約1億3千万回再生されたことが分かっている。政党の動画の中で突出している。さっき見たら1億6千万回にまでなっていた。これはユーチューブの広告としても再生されており、広告主は自民党だった。

31秒の高市氏の登場する自民党の動画

 公職選挙法ではビラの枚数からアルバイトの日当まで細かい規制があるネット上でも特定候補への投票を呼びかける「選挙活動」としての有料公告は禁じられている。しかし、政党や政治団体が「政治活動」として有料公告を出すことは規制されない。つまり1億回以上再生された自民党の動画は「選挙活動」には当たらず自由に流してよいことになる。これでは資金力のある政党が圧倒的に有利になる。

 さらに収益目的のSNS上の動画投稿で、再生回数をかせぐために煽情的、刺激的な内容の動画があふれることで、見る人の投票行動が左右される問題もある。YouTube全体の視聴数分析では、第三者による切り抜き動画などを合わせると自民党関連で約8億回超と、他党を圧倒しているという。SNSの影響力が劇的に高まっている今日SNSの動画が選挙の「風」を大きく増幅したことは間違いない。

 次に「風」を増幅したのが小選挙区である。

 自民党は全体で衆議院定数465の3分の2超の316議席を確保したが、うち小選挙区では定数289のうち86.2%の249議席を獲得した。しかし、小選挙区での自民党の絶対得票率(有権者のうち自民党に投票した人の割合、今回は投票率56.26%)は26.9%、有権者の4人に1人が投票したに過ぎない。反対に中道は絶対得票率が11.8%で獲得議席は7議席で2.4%だった。今回は絶対得票率と議席占有率の差がこれまでより大きく開いている。

 過去、衆議院における自民党の獲得議席で最多だったのが、中曽根政権による1987年の衆参同日選挙による300議席だった。党内基盤が磐石でない中曽根政権が、高い内閣支持率を利用して党勢回復を図ったもので、解散などしないそぶりをしていきなり解散となり、野党の準備不足もあって自民に大勝をもたらした。それで「死んだふり解散」と言われる。今回と同様のまさに党利党略解散だった。自民が大勝した選挙を並べると—

(数字は自民党議席数、総議席数、3分の2ライン)    
1986年(中曽根首相)   300 512 341    
2005年(小泉首相)     296 480 320    
2026年(高市首相)     316 465 310    

 中曽根首相の86年の総選挙では、自民党の得票率は49.42%。当時は定数が512と多かったので300議席議席占有率は58.6%で3分の3には遠く及ばない。投票率は71.40%と今回より15%も高く、有権者のうちに占める自民党の得票率(絶対得票率)は35%強だった。

 今回は、小選挙区自民党の得票率はほぼ同じだが絶対得票率が26・9%で議席占有率86.2%。これが中曽根時代の中選挙区制との違いである。

 自民党比例代表での得票率は36%超 だった。昨年の参院選の21.6%から14ポイント以上大幅に上昇しているとはいえ、投票に行った人の3人に1人という割合だった。中曽根時代の方が、議席数、議席占有率は今回より少ないが、国民の自民党への支持はずっと強かったといえる。「風」が増幅されているなか、自民党の“実力”は落ちていることを確認したい。

 深刻なのは反自民野党である中道の惨敗(公示前167から49議席に)で単独で内閣不信任案を提出できる数51をもつ野党がなくなった

 中道は比例に公明を優遇した結果、公明出身者は2024年の前回衆院選を4上回る28議席を確保。立民出身者は公明より少ない21議席しか獲得できなかった。立民前職は144人いたから7分の1しか当選しなかったことになる。立民は再建が可能か、ぎりぎりのところではないか。

 私は、右傾化の潮流に抵抗するために異なる政治勢力が手を組む、いわゆる「統一戦線」的な戦術自体には賛成である。政党が融合することもありうるし、その過程で、主張をすり合わせ、左派が妥協して結果的に政策が中道化するのは当然である。しかし、それはあくまで「結果」としてであって、最初から相対概念である「中道」の看板を掲げ、それを政党名にするのには非常に強い違和感をもつ

 統一戦線を作る場合、重要なのは何をもって自民・維新に対抗するかである。安保政策(安保法制)やエネルギー政策(原発)といった中核的な政策について、こないだまで与党だった公明党の政策を「丸吞み」したのは、従来の支持者から「変節」と批判されて当然だった。テレビの政見放送で斎藤氏が野田氏より先に挨拶したのも、公明による立民の「吸収合併」を印象づけた。立民支持者の中には公明党へのアレルギーを持つ人は少なくない。結果として立民支持層が大量に離反したと思われる。

 もともと立民は、連合以外に支持基盤がないに等しい。地域にしっかり根を張った党組織がない。


 写真は各政党の機関紙だが、日刊の『赤旗』、『公明新聞』は別格として、『立憲民主』は週刊の『自由民主』にも及ばぬ隔週刊。しかも内容もページ数も薄く、組織の弱さを象徴する。つまり足腰のない議員政党なのである。現職議員の7分の6が議席を失って、どのように再建できるのか。注視してきたい。




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