企業法務系の書籍を読む時間が減り、月刊誌すら積読状態になっている。
月遅れだが「ビジネス法務 2026年2月号」で少し気になった記事について。
ビジネス法務(2026年2月号)特集「法務とプレスリリース」は、
法務担当者にとって分かりやすい“出口”に焦点を当てたものと受け止めている。
ただ実務の実感としては危機管理はプレスリリースの出来不出来のみで決まるものではない。
自分なりの読後感のメモから。
- 企業の製品事故や不祥事といった事例について
「法令報告が必要な事故情報が長年埋もれる」
「悪い情報ほど法務・経営に上がらない」
といった入口(情報伝達・内部統制)の設計不良で起きる。 - 危機対応の方法としてのプレスリリースや記者会見について
開示するリスク/開示しないリスクの比較衡量が不可避だが、
これは法務単独の仕事ではなく、
広報・IR・現場・顧客対応・行政対応まで含む組織横断の意思決定になる。
法務の仕事はプレスリリースのチェックだけで済むわけではない。 - 危機対応の成否は、平時の関係性でほぼ決まる。
販促物や新商品企画が早い段階で法務に回ってくるか、
カスタマーサービスやビジネス部門と日常的に会話があるか、
悪いニュースほど上がりにくい構造になっていないか。
危機時に法務が機能するかどうかは、
平時に現場に嫌われずに入り込めているかの通信簿。 - 法務部門に対するビジネス部門の姿勢を嘆く声を見かけるが、
法務担当者がビジネス部門に期待しすぎ・他責思考になっていないかの自己点検の機会が必要。情報は待っても来ない。
法務担当者自身が取りに行く設計になっているかが、危機管理の実効性を左右する。
何回も危機管理広報の機会を経験したわけではないが、危機管理とプレスリリースに関する
自分の感覚は以下のようなものである、
【危機対応の時系列整理】
危機対応は「プレスリリースを出すまで」と「出した後」で性質が変わる。
① 第一ピリオド(事案把握~プレスリリースまで)
* 事実確認、法令上の報告要否の判断
* 開示するリスク/しないリスクの比較衡量
* 広報・IR・法務・現場・経営の意思決定
* 所管官庁・業界団体との関係整理
*プレスリリースの実施時期、記者会見の要否についての所管官庁、業界団体との調整
*(消費者対応が必要な場合)専用コールセンターの設置、人員確保
*テレビ、新聞などにリコール広告を出す場合の放映枠•掲載枠取り
法務部門が全てに関わるわけではないが、「司令塔」の役割につくこともある。
② 第二ピリオド(プレスリリース後~沈静化まで)
* メディア対応、SNS炎上対応
* 顧客窓口・営業・販売員への説明と支援
* 追加開示・訂正・想定外対応
→ 前線に立つ従業員へのケアまで含めて設計しないと、組織が疲弊する。
③ 着陸フェーズ(平時レベルへの回復)
* 原因分析、再発防止
* 内部統制・報告ルートの見直し
* 危機対応の事例、経験を組織知として残す。
→ ここをやらないと、次の危機で同じ失敗を繰り返す。
自分が経験した事例(重大製品事故)でいうと、①から③まで大体半年であった。
なお製品リコールの場合は厳密にいうと捕捉率と対策実施率が一定の数値を満たすまで所管への報告義務が継続する。長期戦になることが多いので、担当者の異動や退職時は要注意である。
読後感に戻る。
「プレスリリース」に焦点を当てていること自体は、「実務」へのヒントになるものなので異論はないが、「広報」業務全体像にもう少し言及があったほうが良いと思った。
または補完する意味でジュリスト連載中の「広報と法務」の併読の必要性にふれても良かったのではないかと思う。
最近話題の「法務のリスクテイク」と絡めてのネタにしようと思ったのだが、今回は見送る。