ジュリスト連載『広報と法務』、2025年1月号から5月号分の感想まとめ。
今年2月のエントリーで本連載に「期待する」と記したものの、その後何のエントリーを書かいていない。これはこれで無責任に思ったのでタイミングをみて感想をあげることにした。今回は2025年2月号から5月号の内容に対する感想である。この5回はメディア総論、メディアの行動原理からメディア対応が取り上げられていたが、この期間にもいくつかの企業や団体がメディアやSNS上で批判に晒され、炎上する事例が何件も発生していた。当事者はそれなりの事業規模、法務や広報といった陣容が整っていると思われる企業も含まれ、そのうちの1社に関しては自身が巨大メディア企業である。企業の広報・メディア対応の失敗例はこれまでも何件となく発生しているのに、なぜ数多ある前例が教訓として活かされないのだろうか、と外野はつい考えてしまうが、それだけ有事対応というのは難しい。「知っていること」と「できること」は別物ということだ。
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ジュリスト2月号から5月号にかけては主にメディアの行動原理や広報リスクについて、日常業務において接する機会がないメディアの全体像や報道記者の行動原理、広報部門がメディアと築いている関係性、リーク、オフレコといった手法のメリット・デメリット等をわかりやすく解説している。自分は一時期広報業務を経験しているのだが、今回の連載を読みその経験が既に過去のものなりつつあることに気付かされた。
具体的には「記者クラブ」や前述のリーク、オフレコ取材といった項目である。ここ数年のSNSの普及が企業の広報、販促活動に大きな影響を与えていることはいうまでもない。たとえば以前は記者クラブへのプレスリリースが安価な手法であったが、記事の取り上げられ方は当日公表の他のプレスリリースに左右されることがあった。
しかし今や自社のSNS公式アカウントでの公開やWeb系のニュースサイトへの公開の方がはるかに速く広く伝わる。(それが炎上リスクと背中合わせではあるのだが)こうした背景を受け、メディアの方も「効率重視の簡潔な記事」と時間をかける「調査報道」に二極化しているという。
前者の役割を担うのは通信系メディアとのことで、そういわれてみれば過日の下請法に関連した企業名の公開報道は通信系メディアによる所管リリースの内容の配信だったことに合点がいく。
メディアが「調査報道」に重点を置くとなると、メディア側の担当は広報担当者(IR担当者も含む)がいつも相手にしている経済部や企業報道部の記者だけではなく、特に事案が事故不祥事であれば社会部の記者になるケースが多い。調査報道の経過や結果が当該企業や企業のステークホルダーに小さくない影響を与えることは直近の事例でも明らかである。
また、連載では「間メディア社会」現象にも触れている。かつて「炎上」といえばインターネット上だけの現象と捉えることができたが、今や既存メディアを巻き込む存在になり、これを「間メディア社会現象」と呼ぶのだが、こういった現象もいわれてみれば幾つか事例が思い当たる。
かなり端折ってしまったが、従来の広報担当者が過去の経験を「活かすことが難しい」時代を迎えてきたことは確実である。
こうした状況下で「コンプライアンス」「リスク管理」を担当業務とする法務部門といかに協業していくか、いけるのか。また「経営や企業価値創造に貢献することを目指す」法務部門が社外窓口である広報部門といかに協業していくのか、いけるのか。連載はまだ1/4を終えたほどである。ジュリスト読者のほとんどは法務部門や法学部、ロー学生と思うが、企業法務を続ける、または目指すのなら「広報は自分が目指す仕事ではない」と考えずに読むことをお勧めする。