このエントリーは裏法務系AC参加エントリーです。@one_onlegalさんからバトンを引き継ぎ、裏のトリをつとめさせていただきます。
今回のエントリーは自分の備忘録的なものだが、こんな人間が見て読み考えたという
意味で改めて簡単に自分の経歴を書いておく。
- この秋、そういう年齢に到達し3年間の延長時間に入った。
- 自分のキャリアは会社員人生の前半がこのあとで取り上げる『普通の部門』所属、営業や事業企画、販促などの仕事をしていた。後半が『法務』『内部監査』。従事年数はほぼ半々。
- 転職はしていないが勤務先が売買され資本が2回変わる。奇跡的に原形を保っている。
- 資本が変わるころ40代に入って自分の意図とは関係なくキャリアチェンジ。法務に異動し、50代半ばで内部監査部門へ。この春まで執行役員であった。成り行き以外のなにものでもない。
1.普通の部門
企業法務に関する情報に触れる機会は以前と比べるとかなり減ったが、とある会合に参加するため、企業法務担当者の多くが読んだであろう『NBL No.1269~1271』所載「法務等担当者の覆面座談会」や『ジュリストNo.1600』所載「いま、法務に求められるもの」を読んだ。主に前者に関連して話を進めていく。
現在の仕事の立場(内部監査)でいえば、社内の各部門は等しく業務監査の対象である。個々の業務詳細になれば別だが、部門運営上の基本事項などの項目は、全部門ほぼ共通で確認、評価していく。法務部門といえども例外ではない。法務部門が何をどう考えているかに関係なく、普通にいち部門としてみている。
また過去のAC企画のエントリー等で再三書いているが、個人的には法務部門はビジネス部門だと考えている。3ラインモデルでいうと2ndラインに位置づけられる法務部門だが、1.5ラインを目指している向きもあると感じている。
NBLの読者はほぼ企業法務に従事している人間で、企業の他の部門の人間が同誌を手に取ることはないと思うが、仮に手に取られたとして座談会記事の法務部門の「普通の部門化」というフレーズのみを意地悪く切り取られれば、「え、これまでなんだと思っていたのか」と突っ込まれるかもしれないし、独立した法務部門ではなく総務や経理部門で法務的な業務を担当されている人であれば「私そもそも普通の部門ですけど」とつぶやくかもしれない。よくある企業法務の身内話の延長といえばそれまでだし、悪気もないことはわかるが、他のフレーズはなかったのかとも思う。
とはいえ自分も数年前に法律月刊誌のアンケートに「法務も普通の部門と同じになってきたと思う」と回答したことがあった。自分の説明が拙かったためか当時この回答が誌面に載ることはなかったが、法務部門の社内での地位向上が話題として増えてきたことを念頭に置いたものだったと思う。
企業の各部門は常に変容を求められている。法務部門の担当者からみれば、契約書審査やらなにやらで無茶ぶりをしてくるビジネス部門かもしれないが、彼らは彼らなりに市場や取引先からの厳しい要求に晒され、法務をはじめとする管理部門よりも変容しなければならない環境に身を置いていると思う。そんななかで実態として「法務の普通部門化」があるにしても、言葉にすると他部門からの理解を得るのは難しいと感じる。
自分は件の覆面座談会の内容が、企業法務部門のなかの話題に留まるのはもったいないと思っている。あの座談会は経営陣だけでなく他の部門の管掌役員の目に触れさせたほうがよいと思う。そして法務部門長が「普通の部門化」というのではなく、「いや、ウチもいろいろ厳しくなって、皆さんのところと同じですよ」といえれば、少しは法務部門と他部門の距離を縮めるきっかけになるのではないかと思う(甘いか)
2.経営に貢献する
「普通の部門化」という一方で、「法務機能」云々ほか法務のあるべき論の盛り上がりも年中行事化しているといったら失礼か。しかし経営にどのようにかかわるか、貢献していくかという点は、法務と同様に会計部門側からのアプローチも同じ。例をあげれば「企業会計2024年8月号」では『人口減少問題を会計で解決する!』という特集が組まれ、同じ時期に「組織行動の会計学 マネジメントコントロールの理論と実践」(青木康晴著 日本経済新聞出版)といった書籍が出版されている。いずれも管理会計からのアプローチである。企業会計サイドも法務と同じく企業のなかでは間接部門、法務部門よりもはるかに早い時期に業務システムが導入されており、したがって経営陣からの効率化省人化の要求レベルが高いともいえる。彼らも企業内の存在価値を高めていく必要にかられているのではないかと思う。
経営というのはヒト、モノ、カネ、そしてシステム(組織、情報システム等)の有効活用で収益を上げ続けるもので、そこに法務、法務機能がどう関わっていくのか。理念はわからなくはないが、実際に「カネ」を通じて組織をみている会計サイドからのアプローチのほうが経営陣の関心を惹きやすいと思う。経営に貢献する取り組みであれば法務といえどもどこかで数字が伴わないと説得力が乏しくなる。
ところで企業法務担当者はどこまで自社の商売とその業績に関心を持っているだろうか。法務関係者の様々な会合の機会はあると思うが、たとえばそういう機会で10分の持ち時間で自社と自社のイチオシの商品やサービスの話ができるだろうか(これは会計部門担当者にもいえることだが)。大上段に構えた理念やあるべき論を語るよりも、経営に貢献するというのであればこういうところからではないだろうか。
3.ユーザーズクラブ
コロナ禍が収束したことになっても勤務地が北関東の地方都市なのでしばらく交流会や会員限定的な飲み会にも一切参加していなかったのだが、この秋に何件かリーガルテックやセキュリティーベンダー主催の懇親会付きカンファレンスに行ってみた。ちなみにリーガルテック主催のものに関しては、ユーザー企業でもないのに招待いただいたのだが、辞退することもなく図々しく参加してみた。かつて法務担当者の異業種交流の場といえばBLJの読者交流会のように法律系メディアが主催だったが、リーガルテックのユーザーズクラブがそれに代わっていくのかもしれない。BLJの読者交流会もまるまる商売抜きではないとはいえまだオブラートに包まれていたが、リーガルテックのそれは微笑ましいぐらい顧客囲い込みの色が出ていて、ある意味本当に純粋なのかもしれないと思った次第である。しかしなんとなく法務担当者の交流の場が閉じられたものになっていく感情を抱いたのも正直なところである。
4.締め
づらづらとした備忘録でトリを務めることと、さらに読む人によっては水をぶっかけられた気分になるような内容があったらお詫びしたい。
ただ自分としては企業法務担当者が「法務が、法務が」とひたすら法務のことを考えていくことで視野が狭まってしまうことを危惧している。今後の法務部門には自分のようなキャリアをたどる人間は圧倒的少数になることもわかっているが、異分子のいない組織となることでかえって脆弱になることを恐れる。
「普通の部門」は様々なバックボーンをもった人間が集まっているものだ。
※本エントリーを書くにあたって様々なヒントを与えてくれた@企業法務戦士さん、@ちくわさん、@経文緯武さんにこの場を借りて御礼申し上げます。