“子どもの学びを深めつつ、教師の負担も減らす”──その両立をどう実現するか。
令和7年7月4日の中央教育審議会・教育課程企画特別部会の配布資料をもとに、いま議論されている評価改革のポイントをまとめました。
そもそも「学習評価」は何を目指してきたのか?
今の学習評価の課題とは?
現在の学習評価は、2020年度から全面実施された学習指導要領に基づき、「知識・技能」「思考・判断・表現」「主体的に学習に取り組む態度」の3つの観点で評価されています
「指導と評価の一体化」は道半ば
学習の途中経過を見て改善に繋げる「形成的評価」と、学期末などに成績として記録に残す「総括的評価」が区別されず、すべての評価が成績のためだけに行われがちです。その結果、一度つまずいてしまった子が、その後の頑張りで学び直す意欲を持ちにくいという問題が指摘されています。
難しい「主体的に学習に取り組む態度」の評価
3つの観点の中でも特に評価が難しいとされているのが、「主体的に学習に取り組む態度」です。この評価が、ノート提出の回数や締切を守るといった、本来の意図とは異なる形式的な「勤勉さ」の評価に留まってしまう場合があると指摘されています。また、子どもが先生に評価されることを意識しすぎ、型にはまった発言や記述をしてしまうケースも見られるようです。
教師の負担
毎回の授業で複数の観点を評価し記録することは、大きな負担となっています。評価のための作業に追われ、本来注力すべき子どもたちの学習改善や指導の準備に十分な時間を割けないという実態があります。
どう変わる?学習評価【3つの改善案】
今回示された資料では、これらの課題を解決するための具体的な方向性が論点として挙げられています。
ポイント①:「主体的に学習に取り組む態度」は"個人の成長"を見る「個人内評価」へ
これまでA、B、Cなどの段階で示されてきた「主体的に学習に取り組む態度」の評価を、目標に照らして評価する「目標に準拠した評価」から、子ども一人ひとりの良い点や成長の様子に着目する「個人内評価」へと変更する案が示されました。
変更イメージ
旧: 各教科で「主体的に学習に取り組む態度」をA,B,Cで評価し、それが評定(5段階など)に影響。
新(案): 評価観点を「学びに向かう力・人間性」とし、教育課程全体を通して個人の成長を文章などで評価。評定には直接反映させない。
これにより、評価材料集めに追われることなく、子どもの学びに向かう姿勢や人間性の成長を自然な形で肯定的に評価できるようになると考えられています。
ポイント②:意欲的な学びは「思考・判断・表現」の評価でプラスに
それでは、主体的な学びの姿は評価されなくなるのでしょうか?
そうではありません。
新案では、「思考・判断・表現」を評価する過程で子どもたちの「好奇心」や「学びの主体的な調整」「他者との対話や協働」といった姿が特に顕著に見られた場合に「思考・判断・表現」の評価に「○」などを付記して積極的に評価する方法が検討されています。
これにより、ペーパーテストの結果だけでなく、レポート作成やグループでの話し合い、作品製作といった、子どもたちの主体的な学びのプロセスがより重視されて授業改善にも繋がることが期待されます。
ポイント③:評定は「学年末」に。学期中は"学習の改善"に集中
現在、多くの学校では学期ごとに通知表で評定が示されています 。これを評定として総括するのは課程の修了を認定する学年末にのみ行うことが可能であるとしています。
学期中は、成績をつけるための評価(総括的評価)よりも、子ども一人ひとりのつまずきや伸びを把握し、学習の改善に生かすための評価(形成的評価)に重点を置くことを促す狙いがあります。
これにより、ある単元や学期でうまく学べなかった子どもでも、その後の学習で挽回する機会が生まれ、多様な教育に繋がると考えられています。
今後の動向に注目
資料が一貫して示しているのは、「評価を減らす」というよりは「意味のある評価に絞る」という考えのように感じます。
負担を減らしつつ、深い学びと自己調整を後押しする仕掛けをどう作るか。
次期学習指導要領の行方も含めて、今後の議論に注目したいところです。