
日本アカデミー賞にもノミネートされている映画でした。
結構話題にもなっていたようですが、色々なドラマとのコラボらしいです。
ドラマを見ない私には全くわかりませんが、妻は色々と知っていたようですね。
「ラストマイル」というタイトルを見て、最初は「ラストワンマイル」という原作の映画化なのだとてっきり思っていましたが、全然違ったようです。
でも「ラストマイル」も「ラストワンマイル」も意味は同じ。
楡周平さんの「ラストワンマイル」もとても面白かったのですが、ぜんぜん違う作品ということを知りながらも、面白そうだと期待しながら見ました。
「ラストワンマイル」では現実の企業と被っています。
宅配業者である「暁星運輸」はヤマト運輸。
インターネットショッピングモールの「蚤の市」は楽天です。
日本におけるネット通販のトップが運送会社へさらなる値下げを求めたことをきっかけに、運送業界からの反撃にあうという痛快な内容でした。
この「ラストマイル」も運送という一番末端からの反撃はあるものの、アメリカに本社を置く世界の流通の覇者が相手だけに闇が深いです。
この映画の舞台となるのはDaily FastというショッピングモールでありとあらゆるものがWEBサイトから購入できます。
その影響力は半端なく、世界中の競争相手から嫌われまくっている企業です。
そうですね、ズバリAmazon のことですね。
そして宅配を請け負っているのは羊急便はやはりヤマト運輸のクロネコ宅急便でしょうね。
この映画の舞台になったのは架空の関東ロジスティクスセンターで西武蔵野にあるとされています。
とてつもなく巨大でシステマティックな物流配送のための拠点です。
Amazonで働いたこともないのでわかりませんが、巨大な物流拠点を持ち、その影響力は他の業種を圧迫するほどだというのは今更でしょう。
Amazonという会社はとにかく効率を上げるために投資を惜しまない会社で、利益が上がっても配当を出さない会社としても有名です。
その利益はさらなる拡張のために、こういったロジスティクスセンターやシステムに惜しみなく投資しているわけです。
そんな会社ですから、従業員に対しても織田信長よろしく、能力のあるやつには高給を支払ってでも使いますが、代替可能な人間は部品、機械と同じ。
それがわかるシーンが、あれだけ巨大なセンター内で社員はセンター長を含めて9人という発言。
そして派遣社員、アルバイトといった非正規雇用が600人~700人です。
派遣社員、アルバイトは代替可能でいわば部品。
優秀なスタッフ(社員)は、管理を任され、いかに効率よくこのセンターを回すのか?ということに専念。
数字はリアルタイムに管理され、コンベアが止まることは許されないことなんです。
この仕事にやりがいを感じて猛烈に働ける人はいいでしょう。
しかし、人間やはり疲れます。
この映画でもDaily Fastの12か条みたいなものがあり、マジックワードとしてCustomer centric(全てはお客様のために)という言葉がクローズアップされています。
ブルドーザーのように圧倒的なパワーで出世街道を駆け上ってきた主人公の舟渡エレナは、このマジックワードの持つ恐ろしさに気づいて辞めてしまうわけですね。
この言葉は同じ組織内だけでなく、上意下達で伝わって、最終的には最後のところで無理難題を押し付けられるわけですね。
羊急便の仕事を請け負っている運送屋の親子の会話にはなんとも言えない部分が詰まっている気がしました。
父親役の火野正平が息子役の宇野祥平にいつも自分のことのように、トップドライバーだった「やっちゃん」の自慢をするわけです。お昼休憩はわずか10分で食事を済ませ、一日200件もの配送をコンスタントにこなす「やっちゃん」。
しかし息子は父に反論します。「自分の身を粉にするようにして働いても、評価されない。月に50万円もらえていたときはそれでも価値があったが、単価を下げられ、生きていくのに必死に頑張っているだけ。その結果死んでしまった。」と。
巨大な企業は圧倒的な物量で相手の会社の生殺与奪権を持ってしまった。
会社の半分がその会社の配達に依存してしまったら、価格交渉もできず、常に脅されて飲むしかない。その例が羊急便とDaily Fastの関係で羊急便の全物流の6割(だったっけ?)がDaily Fastだけに「嫌なら辞めますか?他の運送会社にやってもらってもいいんですけど」という脅しでなんとでもなってきたんですね。
本筋から離れてしまいました。
この映画では配達物の中に混入した爆発物により被害が発生します。
無差別殺人、爆弾テロです。
犯人の目的はわかりませんが、どうやらDaily Fast二恨みを持つものの犯行らしいことがわかります。
この配送センターのセンター長としてやってきたばかりの舟渡エレナ(満島ひかり)はいきなりこの事件に巻き込まれます。
このセンターで最も長い間いる社員は梨本孔(岡田将生)チームマネージャー。
明るくハキハキとした若いセンター長と、頭は良さそうですが無愛想でニコリともしない梨本。
そして日本のDaily Fastを仕切る統括本部長が五十嵐(ディーン・フジオカ)です。
キーマンは植物人間状態の山崎佑(やまさきたすく:中村倫也)で、彼は以前このセンターのチームマネージャーとしてバリバリ働いていましたが、ある日高所から飛び降り、今は意識がありません。
彼の恋人が筧まりか(仁村紗和)で、彼女には動機があります。
ネタバレになってしまいますね。
でも一番怪しいのは突如センター長としてやってきた若い舟渡エレナです。
彼女は真っ先に自分たちの工場はシロだと表明し、悪い羊さんのせいにするのです。
悪い羊さん、つまり羊運送の何処かで爆弾をいれたというわけです。
しかし調べれば調べるほどそんなわけがありません。
そもそもこのジャストタイミングでやってきた舟渡エレナは怪しすぎます。
早い段階で山崎佑の個人情報を削除しています。
更には警察に聞かれた際も「やまさき」と濁らない名前をスラスラっと答えています。
そもそも彼女はどこから来た人間なのかもわかっていません。
彼女は福岡から転勤でやってきたと言っていますが、あくびを噛み殺し、その時に「時差ボケ」とこぼしています。
梨本孔に「福岡で時差ボケ?」と疑問を抱かれます。
まあ、ミステリーとしては微妙なところですが、様々な伏線があってそれらが複雑に絡み合っているようですが、はっきりしません。
羊急便の配送センターの局長が八木(阿部サダヲ)ですが、彼がいることでこの映画がとてもおもしろく感じました。
もうボロボロの状態です。普段のオペレーションでさえ四苦八苦している中、爆弾騒ぎですでにパンク状態。
荷物の検査をするための労力をDaily Fastから押し付けられますが、とてもじゃないけれど回らない状況。
ついにはブチ切れて、上のものに噛みつきます。
その歯切れの良さは気持ちいいです。もっと言ったれ~と心の中で叫んでいましたね。
雁首揃えてうろたえているイエスマンばかりの内勤上司たちに対してかなりきつい言葉を浴びせます。
そして「社長に言っとけ~」と。
ところが電話の相手は社長。慌てふためいてももう遅い。
捨て台詞がイカしていました。「手間が省けた」。
彼のサラリーマン人生はここで終りを迎えるのか?住宅ローンもたっぷり残っているというのに~。
舟渡エレナからあれこれ指図されますが、もう俺はおしまいだと思っているのか、彼は動きません。
「オタクの荷物なんだから、あんたたちがすればいいじゃん」と。
舟渡エレナは彼のもとにやってきても同じでした。そして背水の陣で後ろに逃げ場がない彼は本音をさらけ出します。
舟渡エレナは本社から特別な任務を受けていた人間のはずですが、彼女は最終的に本社というかDaily Fastを裏切ります。
なにかこのあたりが中途半端だな~と感じます。
彼女は悪でしょう。しかし終わりは善人として描いています。
なにか違和感しかないですね。
でも映画自体はとても面白かったですね。
流通に興味のある人、Amazonに対して苦々しく思っている人、岡田将生さんが好きな人などは楽しめると思います。
満島ひかりファンはどうなのでしょうね。役柄的に微妙です。
色々なドラマシリーズとコラボしているため大物俳優がゴロゴロ出ています。
脇役陣も実力派揃いで、しまった映画となっています。
オススメしますね。