
中山七里さんの人気小説、嗤う淑女シリーズの第3弾です。
1作目で史上最強の悪女「蒲生美智留」をセンセーショナルに登場。
そして彼女は警察からもマークされるのですが、そこは大どんでん返しによって、司直の手からするりと逃れます。
そして第2弾では、彼女はより巧妙になり、闇に隠れて人を動かしていきます。
政治家、政治家秘書、政治後援会の会長、宗教法人、NPO、過去に恨みを持つ復讐の鬼などさまざまな人たちの心のスキ、闇を巧みに利用し、己の手は汚さずに一人ずつ殺していきます。
1作目よりもさらに大物たちを奈落の底へと導く稀代の悪女が大活躍します。
今回の小説には稀代の悪女「蒲生美智留」が表に出て大活躍するわけではなく、やはり彼女は姿を見せない黒幕として暗躍するのです。
いきなりネタバレっぽい人物を描きますが、もう一人の嗤う淑女として中山千里さんの小説に登場する殺人鬼「有働さゆり」が登場します。
この小説の二人とはこの二人を指しますね。
残念ながら有働さゆりという重要人物が登場する小説は読んでいませんが、数ある中山さんの小説の中でもファンの多い「連続殺人鬼カエル男」に登場する人物のようです。
「エグい、グロい」という批判も結構あったりするけれど、息もつかせぬ展開と大どんでん返しという得意のパターンの小説のようです。
先にそちらを読んでいたほうが良かったのかとちょっと後悔しますが、まあ、読んでいなくてもこの小説は十分に楽しめます。
それにしても今回はこれまでのシリーズの殺人が「地味」に見えてしまうほど「派手」に殺人が行われていきます。
もう、それは無差別殺人ですし、大量殺人です。
テロと呼ぶにふさわしいほどの規模の殺人です。
国会議員日坂浩一により、豪華なホテルにて「同窓会」のパーティが開かれます。
日坂による乾杯のときに毒物混入による大量殺人から幕を開けます。
生き残ったのはお酒が飲めない3人。
事情聴取を進めると政治家の過去が明らかになりますが、最も疑わしいとされた女性はすでに亡くなっていることがわかります。
この次に起きた事件は、バスツアーでの爆発による大量殺人でした。
運転席の後に置かれていた乗客のポーチ。
そこには遠隔操作可能な小型の爆弾が入っていたのです。
爆発により運転手は大火傷を負い、運転不能に陥ったために事故を起こしてしまうのです。
爆弾に使われている材料もナフサと特定されます。
サービスエリアで失踪した乗客が犯人である可能性が高く、警察の捜査により犯人と思われる人物が絞り込まれていきます。
更には中学校への放火事件。
事件場所には殺害された死体がありましたが、放火犯はいじめを受けていたその中学校の生徒。
ただ、放火は認めたものの殺害した犯人は別にいます。
放火に使ったのはナフサを原料とした遠隔操作可能な爆弾でした。
次なる標的は元銭湯だったあまり繁盛しているとは言えないフィットネスクラブ。
突然の爆発事故でフィットネスクラブで運動していた女性が犠牲者になります。
今回はもう殺人に対して意味を見いだせないほどの無差別殺人なのですが、後半になり、蒲生美智留を追いかける刑事たちの捜査により、その実態が徐々に浮かび上がってきます。
そして彼女の回想から明らかになるラストシーンでちゃんと説明があります。
まるで貴志祐介さんの「悪の教典」のような殺人の数々。
かの小説では「木を隠すなら森の中、死体を隠すなら死体の山の中」という一説がありましたが、まさに蒲生美智留は、本命の人間を殺すために大量殺人をしているのです。
これは悪というよりももはや魔女ですね。
それにしても今回は「有働さゆり」という中山千里作品に登場するもう一人のシリアルキラーを登場させてより過激になっています。
この二人の利害関係が途中までは一致しているものの、どうやらこのサイコパスを道具として使いこなしているのは蒲生美智留という印象。
二人は最後は決裂するのだけれど、どちらもお互いを仕留め損なったという展開で終了します。
再度二人が遭遇することはあるのでしょうかね。
ちなみに巻末にある松田洋子さんが描く漫画がまた今回も付いていました。
これがまたなかなか面白いのです。