
芹沢と思っていたら、芦沢さんでした。
芦沢央さんという作家の作品は初めて読みました。
なんて読むのかわかりませんでしたが、「あしざわよう」と読むそうですね。
女性でした。
性別も知らずに読後に調べました。
1984年生まれということで20歳も年下の作家さんですね。
短編小説とはいえ、それなりの長さのある作品が5作品収められています。
目撃者はいなかった
ありがとう、ばあば
絵の中の男
姉のように
許されようとは思いません
それぞれ50ページほどですかね、電子書籍なので正確にページ数はわかりませんが、1作品1時間弱くらいで読めると思います。
プチスリラーという感じのちょっと気持ちがゾワゾワするような作品が多いです。
「目撃者はいなかった」はできの悪い営業マンが初めてそれなりの売上を立てることができて、上司から褒められるのですが、後にそれが自分のイージーなミスであったことを知ります。
しかし、その事実を言い出せずにもみ消そうとしてどんどんと自体は悪化。
そして交通事故の目撃者となるわけですが、嘘に嘘を重ねた主人公は交通事故を目撃しているにも関わらず、死亡した遺族を黙殺するんですね。
人の生死が関わる事故を目撃したなら、いかなる事があっても証言すべきでしょう。
遺族の気持ちよりも自分の嘘がバレることを何よりも恐れた主人公はしっかりと倍返しを食らうことになるのです。
「ありがとう、ばあば」は子役として芸能界への売り込みに精を出す祖母の話です。
ステージママとか、よく言われますが、子役を売り出すためには親御さんたちの活躍が絶対に必要なのでしょう。
しかし子供にとってそれがどれくらい大切なことなのか?今一度思い返さないといけないでしょうね。
これも最初の話と同じく、「世にも奇妙な物語」で紹介されそうな内容でしたね。
「絵の中の男」は画家のお話です。
幼い頃に酷い事件に巻き込まれた過去を持つ朝宮二月という女流画家は見るものを引き付ける作品を描き、評価も高いのですが、スランプに陥って描けなくなることもあります。
彼女をサポートしようとする主人公は彼女の作品に魅せられた一人です。
そして彼女の大切な一人息子が火災で死んでしまうという事故がおきます。
その後、彼女はスランプを脱してインパクトのある作品を出していきますが、更に数年後またしてもスランプとなるのです。
この作品が最もホラーテイストが強い気もします。
多分ホラー映画でもスプラッター映画でもこれを原作にした映画も可能じゃないかと思ったりしますね。
どことなく江戸川乱歩さんの作品に出そうな気もします。
勝手な感想ですが。
「姉のように」は育児に悩む女性が引き起こした児童虐待死の話です。
主人公の追い込まれていく心理状態が巧みに描かれていてドキドキします。
あらゆる点で憧れの存在である姉。
彼女は児童虐待で逮捕され、そこから家族も地域との付き合いもギクシャクしていきます。
さらには育児にも悩み、後は坂を下り落ちるがごとく~。
不気味で笑えない内容ですね。
この本のタイトルになっている最後の作品「許されようとは思いません」はちょっと重めの村八分の話。
村八分よりひどい仕打ちが村十分で、村からは完全否定される存在ですが、この物語にでてくるお年寄り、祖母の人生を思うと、何とも言えない後味の物語でした。
タイトルだけだとなんとなくいい言葉に思えてくるのですが、この内容は意外でしたね。
あえて村十分になり、この土地から離れたいという本音があったのでしょう。
こんな閉鎖的な村からは現在のようにさっさと出ていけたら、彼女も救われただろうに、人生の大半をこんなひどい村や家族たちと過ごして、死んでしまった後くらいこの村の墓ではなくどこかに散骨してほしいと願ってのこと。
何とも痛ましい話です。
1話の長さがちょうどよいというか、長過ぎず、それでいて十分な読み応えがありました。