いつもと同じく女房が買ってきた本。
手にとって読むのは私が先になった。
カラスの親指という小説は映画も含めて結構面白かった。
出来すぎた話に小説ならではという気もするが、一般の人が体験できないことを小説内で擬似体験するという小説の良さがあった。それが良かった。
今回の作品はもっと現実的な話。
しかし人の死、大切な人の死がまとわりついた話でひどく重くやりきれない話の連続。
初めから終わりまでずっと暗いイメージまま読み進めていくことになる。
恋愛、性、自殺というのが大きなテーマとしてあり、娯楽小説というよりも、純文学のような感じ。
後味はいいと感じるかは人による。
終盤にミステリー要素としてのどんでん返しがあるが、それすら真相ははっきりしない。
いや、はっきりさせないほうがいいだろう。どちらに転んでも救いようのない話で虚しい。
主人公や主人公が愛したサヨは幼く、弱く、脆い。
主人公の初めての女性である智子も薄幸な女性。考えれば彼女が一番の不幸と言えなくもない。
彼女が本当に自殺したのかどうかも最後の部分で読者の判断に委ねられるような形だが、真相なんて今更どうでもいいと思えてくる。不幸すぎる。
大学生になり、東京に下宿した時の隣人の田西との出会いで主人公は成長する(過去を吹っ切ることができる)はずなのだが、そうはならなかった。
暗く、ジメジメとした性格。
それでいて己の欲求は抑えておくことができない、辛抱できないタイプ。
やはり幼いのだろう。
幼い主人公としっかりもののナオが最終的に夫婦になり、世話になった小父さんこと乙太郎さんの望を叶えたことになるが、なんとも後味がよろしくない。
うーん、すっきりしない点も純文学的なところか?
- 作者: 道尾秀介
- 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
- 発売日: 2009/11/19
- メディア: 単行本
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追記
主人公を少しこき下ろしてしまったが、考えれば彼の家庭環境では可哀想な気もする。
子供の成長にとって、特に多感な時期、一番大切な時期を親の都合で隣の家の小父さんに引き取られることになったのだから。
主人公友彦の父についてはあまり多くを語られず、登場もしていない。どうしようもない父親だと思う。
智子の学生時代の担任だった綿貫も最低の人物。
しかし家の床下に潜入して情事の声を聞いて興奮していた主人公はかなりの変態である。歪んでいるなあ。